はじめに米越包括的貿易協定と日本ビジネスへの影響
2025年7月2日、アメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領とベトナム社会主義共和国のトー・ラム書記長が電話会談を行い、両国間で包括的な貿易協定を締結したことを発表した。
この協定は、米国市場の保護およびベトナム市場の全面開放を柱とし、ベトナム経済にとって重大な転換点となる可能性がある。同時に、日本企業にとっても新たな商機および競争上の課題を生む内容となっている。
トランプ大統領によるTruth Social投稿(翻訳)
アメリカ合衆国大統領 ドナルド・トランプ(2025年7月2日 Truth Social より):
「私は、ベトナム社会主義共和国との新たな貿易協定を発表できることを非常に光栄に思う。この合意は、ベトナム共産党の尊敬すべき書記長、トー・ラム氏と協議した結果、達成したものである。
この協定は、我が国とベトナムの間に素晴らしい協力関係を築くものである。本協定により、ベトナムからアメリカに輸出されるすべての製品に対して20%の関税を課す。また、第三国を経由する商品については40%の関税を課す。
その代わりに、ベトナムはアメリカに対して自国市場への完全なアクセスを認め、米国製品を関税ゼロで輸入することに同意した。
私の見解では、アメリカで人気の高いSUV(スポーツ多目的車)は、ベトナムの製品ラインナップにとって優れた追加要素となると考える。
トー・ラム書記長と直接やり取りすることは、非常に快適で建設的な経験であった。この件に関心を持ってくださった皆様に感謝する。」

出所:ドナルド・トランプ大統領によるTruth Social
ベトナム側の発表
同日20時(ベトナム時間)、トー・ラム書記長とドナルド・トランプ大統領が電話で会談し、両国関係および報復関税の交渉について意見を交わした。
両首脳は、ベトナム・アメリカ間で「公平かつバランスの取れた相互貿易協定の枠組み」に合意したことを歓迎した。トランプ大統領は、ベトナムがアメリカ製品に対して市場アクセスを提供することを高く評価した。また、米国政府がベトナムの一部輸出品に対して報復関税を大幅に削減し、両国の優先分野における問題解決に引き続き取り組むことを表明した。
トー・ラム書記長は、米国に対して「ベトナムを市場経済国として早期に認定すること」および「一部のハイテク製品に対する輸出規制の撤廃」を要請した。両者は、今後の包括的戦略的パートナーシップを深化させるための大枠や施策についても協議した。
書記長は、トランプ大統領とその夫人に対し、ベトナム訪問の招待を改めて伝え、再会を心待ちにしている旨を表明した。トランプ大統領はこの招待に感謝し、早期の訪問を希望すると応じた。
日本企業にとっての戦略的含意
本章は日本企業にとっての戦略的含意 について解説する
サプライチェーン再設計の必要性
ベトナムから米国への製品に新たな関税が課されることにより、ベトナムを生産拠点とする日本企業はコスト構造を見直す必要がある。特に、アメリカ向け製品を手掛けるメーカーにとっては、輸出拠点の再配置や付加価値の高い分野への転換が求められる。
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