ベトナム経済の成長予測と主要産業の展望
Oxford Economicsの最新報告によれば、ベトナム経済は今後数年間でASEAN-6(インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム)中でも高い成長率を遂げると予測されている。具体的には、2024年のGDP成長率は6.7%、2025年は6.5%に達する見込みであり、これは製造業の堅実な基盤と内需の回復によるものである。
主な成長要因は加工品の輸出である。現在、ベトナムは半導体製造のバリューチェーンにおいて重要な中心地としての地位を確立しており、特に組み立て、パッケージング、テスト(APT)の分野での存在感が強い。インテルはベトナムに世界最大のAPT施設を設置しており、またアムコール・テクノロジーが北部ビンフック省に建設中の16億ドル規模のチップ工場も2025年から稼働予定であり、経済成長と輸出促進の機会のdriving forceとなる。
一方で、グローバルなチップ需要は供給網の混乱による在庫過剰のため減速する見込みだが、それでも半導体産業はベトナム経済に貢献し続ける。アジアではチップ輸出指数が2024年初頭から低下しており、自動車やスマートフォン、コンピュータ分野での需要減少が影響を及ぼしている。しかし、AI関連分野への投資増加により、2025年には製造業が新たな発展を遂げると期待されている。
さらに、半導体以外にも機械類や電気設備、繊維製品、農産物などの主要輸出品も安定した成長を維持すると予測されている。企業は関税リスクへの対応として輸出を強化し、一時的な電子製品需要の減少を補う動きが見られる。アメリカの緩和的財政政策もベトナムにとって有利に働くとされている。外国直接投資(FDI)については、引き続き安定した成長が期待されているが、そのペースはやや鈍化する可能性がある。
FDI企業は現在、国全体の輸出額の75%を占めており、トランプ政権により中国製品に高関税が課される可能性もあり、その結果ベトナムの輸出が後押しされる見込みだ。一方で、2025年初頭にはアメリカによる関税政策の不確実性からFDI流入が減速する可能性も指摘されている。
短期的には国内消費と企業活動が安定して回復しており、2025年には個人消費がコロナ前の水準に近づく見込みだ。特にFDI分野での賃金上昇が消費を支える要因となる。また、観光業も2025年には重要な経済推進力となると予測されている。2023年には観光業がGDPの6.6%を占め、日本に次ぐアジア第2位となった。総じて、ベトナム経済は多くのポジティブな要素によって支えられながら、今後も成長を続けることが期待されている。