ベトナムにおける水力発電と揚水発電の現状
ベトナムは、水力発電のポテンシャルが大きい国である。ベトナムの年間平均降水量は約1,800〜2,000mmと比較的多く、水力発電に適した地形も見られる。例えば、西北部の3/4は山岳地帯となっていて、3,450以上の水系と密集した河川系がある。このような背景から、ベトナムの水力発電は有望視されており、ベトナムでは昔から水力発電が開発されている。
2021年時点では、ベトナムでの水力発電がベトナムの電源構成に占める割合は、28.5%を占めており、石炭火力に次ぐ第2位である。
一方で、新規開発ポテンシャルの観点からは、大規模水力発電の開発余地は多くなく、ベトナム政府は小水力発電の開発に加え、新しいタイプの水力発電として、揚水発電所の開発を強化する方針である。
揚水発電とは、発電のために使用する水をくみ上げる(揚水する)方法で、電力の使用量が少ない時間に上部調整池に水をくみ上げ、必要な時に水を流下させて発電する。水をくみ上げる際は、例えば日中に太陽光で発電した電力を使用し、夜間に水をくみ上げる方法とすると、「再生可能エネルギー」を活用した発電ができる。そのため、揚水発電は、ベトナム政府が推進する再生可能エネルギー政策とも親和性の高い発電形式であるといえる。
ベトナムEVN GENCO2が中国と連携して揚水発電を開発
国営ベトナム電力公社EVNの子会社、EVN GENCO2は、中国南部電力網有限公司(CSGI)と連携し、クアントリ省人民委員会と協議において、500MWの容量を持つ揚水発電プロジェクトを提案した。
クアントリ揚水発電所は、フォンホア地区フォンリンコミューンのクアントリ水力灌漑湖地域に建設予定である。プロジェクトへの投資および建設期間は約7年間としている(2年の準備期間、5年間の建設)。商業運転開始予定日は2030年以降となる。
投資家によると、このプロジェクトは経済成長にともなう電力需要増大に応えるものであり、経済的および財務的にも、実行可能であるとの計算結果が示されている。
今後の展望
クアントリ省は、クアントリでの揚水発電所への投資を支持し、中国側と協力して関連する全ての手続きを迅速に進めるよう要請している。また、クアントリ省は、プロジェクト実施プロセスにおいて、投資家に対して優遇措置をとることを約束している。
ベトナム政府は、PDP8において、2030年までに2,400MW分の揚水発電を新規開発する計画である。揚水発電はベトナム国内での知見が少ない分野であり、外資企業と連携する形で、今後も開発が進められるものと考えられる。