ベトナムにおける水素エネルギー現況
水素エネルギーは、2050年までのカーボンニュートラル達成に向けた重要な手段であり、ポテンシャルが大きい領域とされている。ベトナム第8次国家電源開発計画(PDP8)では、2031年から2050年の期間において、水素エネルギーへの転換を進めることが強調されている。
ベトナム石油ガス研究所によると、ベトナムでの水素エネルギー活用に向けて、2つの水素製造法が検討されている。
・バイオマスによるガス化・熱分解
この方法は、バイオマスを高温ガス化プロセスでガス状にして蒸気を発生させ、その蒸気を凝縮して熱化学的に水素を生産するものである。この方法の原料は、農林業残渣(わら、トウモロコシの穂軸、乾燥葉、木材チップなど)、廃棄物、埋立地や廃水処理場からのメタンなどのバイオマス資源で、非常に種類が多い。この水素製造方法は、持続可能で、環境に優しいエネルギー製造方法と考えられている。
・水の電気分解
電流を使って水を水素と酸素に分解する方法はCO2を全く排出しないため環境に優しい方法とされている。水を電気分解する製造方法は、太陽光発電、風力発電、水力発電などの再生可能エネルギーを電気分解の工程に組み込んで使用する。他の方法よりも高いコストを必要とするが、環境にやさしく、持続可能であり、将来の水素エネルギー製造の主流になると考えられている。再生可能エネルギーから製造される水素は「グリーン水素」と呼ばれている。
ベトナム・リラマ社、サウジアラビアのグリーン水素プロジェクトへ進出
12月5日、ベトナム国営建設会社リラマ社(LILAMA Corporation/本社:ハノイ市)は、サウジアラビアのグリーン水素プロジェクト(大規模都市計画NEOMプロジェクトの一環)に、モジュールの初出荷ならびに引渡し式を行った。これにより、同社は世界の再生可能エネルギーサプライチェーンにおいて、確固たる位置を確立している。
リラマ社は、計110個の電気分解モジュールを契約し、うち4個分について、既に製造、組立て、試運転、梱包を完了、サウジアラビアへの輸出準備を整えていた。各モジュールは、全長55m、幅5m、高さ8m、重量約200トン(数千個の内部装置分を含む)となる。稼働時には、再生可能エネルギーから2万キロワットの電力を消費し、1日約6トンのグリーン水素を生産する。
本プロジェクトは、23の銀行・金融機関で構成されるコンソーシアムで実施され、総投資額84億ドル規模の新設備建設において、ファイナンス・クローズを達成している。また、61億ドルのノンリコース・ファイナンスを受けており、グリーンローンの枠組みによるプロジェクトファイナンスにおいて、過去最大級である。風力・太陽光発電による100%再生可能エネルギーを使用し、1日約600トンのグリーン水素を生産するとしている。化石燃料からの転換を進めることで、CO2排出削減につなげていく。
ベトナム・リラマ社、世界各地への展開を進める
リラマ社は、世界有数のグリーン水素技術開発企業であるティッセンクルップ・ニューセラ社(ドイツ)と協力し、2025年第3四半期までに、本プロジェクトへの電気分解モジュールの供給を完了させる。また、ヨーロッパ、北米、中東市場に向けて、引き続きグリーン水素プロジェクトを展開予定である。
リラマ社は、グローバルなグリーン水素製造のサプライチェーンに世界で初めて参画した企業のひとつとなっており、ベトナムが目指している2050年までのカーボンニュートラル達成に大きく貢献している。