ベトナムに生産拠点を移転する企業の背景と現状
米中対立など地政学的な要因から、企業の生産拠点を中国からベトナムへとシフトする動きが増えており、現行のサプライチェーンの再構築が急速に進んでいる。多くの企業がベトナムにおけるネットワークの拡大と生産拠点の開発を模索している。ベトナムへの外国直接投資は、米中対立以前から継続的に投資をしていた韓国やシンガポール、最近では中国や香港からの投資が顕著に増加している。これらの企業は、ベトナムを生産や輸出の中心地として位置づけている。
具体的には、AppleがAV機器の生産拠点を11カ所ベトナムに移転している。Intelはホーチミン市にある半導体チップ検査工場を総額40億ドルで拡張し、Legoはビンズオン省に10億ドルを投資して工場を新設した。Samsungは、ベトナムとインドに全てのスマートフォン製造工場を移転し、全世界で販売されるSamsungのスマートフォンの60%をベトナムで生産している。
このような動きを受けて、Boeing、Google、Walmartなどの大手企業も、ベトナムでのビジネス投資環境を調査・研究している。
9月13日から15日にかけて、ベトナム商工省(MOIT)が主催する『Vietnam International Sourcing 2023』が開催された。このイベントには、日本企業の他、Walmart 、Amazon、Boeing、AES(アメリカ)、Carrefour、Decathlon(フランス)、Central Group(タイ)、Coppel(メキシコ)、IKEA(スウェーデン)、LuLu(アラブ首長国連邦)など、各国の大手企業がベトナムにおける事業展開を促進するために出席した。このように、外資企業の参入がますます加速すると考えられる。
しかしながら、この状況は多くのベトナム企業にとっては強力な競合が出現することとなる。高品質な製品の生産を増やし、成長を促進する必要がある。多くのベトナム企業がサプライチェーンの中間に位置しているため、付加価値が低いのが現状である。また、多くの生産原材料は輸入に頼ってしまっている。外国企業との連携を深めることで、ベトナムの生産基盤は更に強化され、持続的に発展する可能性が高まると考えられる。