タイとカンボジアの国境紛争は、両国間の経済関係のみならず、ASEAN全体、特にベトナム経済にも深刻な影響を及ぼす可能性がある。両国はいずれもASEANの主要構成国であり、ベトナムにとっては重要な貿易・投資パートナーである。タイはベトナムとの貿易額約20億USD、投資額約150億USD、700件超のプロジェクトを有する経済大国である。一方、カンボジアは国境を接する近隣国であり、ベトナム企業にとって最大級の投資・貿易市場である。2024年のベトナムとの双方向貿易は10億USDに達し、200件超のベトナム投資プロジェクトが進行している。
こうした背景の中、国境紛争が長期化または激化すれば、原材料の供給網や貿易ルートが分断されるリスクがある。ASEAN域内のサプライチェーンに依存するベトナム企業にとっては、特に製造・加工業、農産物流通、観光業への影響が避けられない。実際、2024年におけるベトナムと両国との貿易総額は30億USDに上り、これはASEAN10か国との総貿易額の35%を占めている。
さらに、観光分野への波及も懸念される。2024年には、タイから47万人、カンボジアから40万人超の観光客がベトナムを訪れており、域内連携型の観光市場形成が進んでいる。紛争拡大により観光インフラの連結性が失われれば、地域の観光産業は大きな打撃を受ける。特にタイではGDPの半数近くをサービス業が占め、その中核が観光である。
ベトナム政府関係者や専門家は、今のところベトナム経済への直接的な影響は限定的としながらも、紛争が長期化・拡大すれば域内の安定が揺らぎ、ベトナムの経済成長にも暗い影を落とすと警鐘を鳴らす。ベトナムにとって、両国の安定は自国経済の持続的成長に不可欠であり、ASEAN共同体としての平和と繁栄を維持するためにも、外交的解決が強く求められる。
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