はじめに
ベトナム政府は2025年に向けて、複数の新たな自由貿易協定(FTA)の交渉・締結を計画し、経済成長の新たなエンジンとして位置づける。この動きは、グローバル経済の不確実性が高まる中で、持続可能かつ多角的な成長戦略を推進するものである。
2025年5月、ベトナム政府は「第124/NQ-CP号決議」に基づき、ベトナム商工省に対して具体的なFTA交渉計画の策定を指示し、首相に報告することを命じた。これにより、既存の16件の発効済みFTAに加え、アメリカなどの戦略的市場との新たな通商枠組み構築が加速する見通しである。
現在の経済環境とベトナム政府の対応
本章は現在の経済環境とベトナム政府の対応について解説する。
世界経済の変動
世界は依然として地政学的リスク、通商摩擦、保護主義の拡大という複雑な状況に直面する。米中対立、地域紛争、エネルギー不安などにより、ベトナムのような輸出依存型経済は柔軟な戦略を求められている。
ベトナム国内経済の課題
ベトナム国内では、インフレ・為替変動・マクロ経済の均衡など多くの課題に直面しており、FTAは経済の外需依存度を強化しながらも、安定的な成長を確保する重要なツールとして機能する。
ベトナム政府の重点政策
ベトナム政府は以下の分野において具体的な対策を実行する:
- 輸出市場・サプライチェーンの多角化
- 国内投資・消費の促進
- 米国とのハイテク製品分野のFTA交渉(ITA2参加を目指す)
- 中東・アフリカ・南米・インドなど新興市場への進出
※ITA2は、1996年に締結されたITA(情報技術協定)の拡張版として、2015年に成立した。ITAの目的は、コンピュータ、通信機器、半導体、ソフトウェアなどの情報技術製品の関税をゼロにすることで、グローバルなIT産業の発展を促進することである。
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