はじめに
ベトナム商工省によると、ベトナムの食品加工業の生産額は加工・製造業グループの売上高の19.1%を占める。ベトナムの1億人近い消費者と大きな輸出ポテンシャルを持つ加工食品業界は、国内外の企業にとって有望な市場であると考えられている。この記事では、今後の成長が期待される15の代表的な加工食品セクターを紹介する。
代表的な加工食品セクター15選
本章では、代表的な加工食品セクター15選を紹介する
冷凍食品
冷凍食品産業(冷凍肉、冷凍水産などの主要製品を含む)は、主に冷凍製品に対する消費者の意識の変化と現在のコールドチェーンシステム(冷蔵倉庫、冷蔵輸送)の発展により、近年ベトナムで著しい成長を遂げている。
ベトナムの大手コールド・チェーン企業の一つであるABA Cooltransによると、ベトナムの冷凍食品市場の売上高は年率20~40%で成長している。ベトナム産の冷凍食品、特に冷凍水産は世界中、とりわけアメリカ、EU、中国、日本に輸出されている。ベトナムの冷凍食品業界には、主に2つの成長要因がある。
一つは消費者の意識の変化によるもので、20~30年前、ベトナムの消費者は伝統的な生鮮食品(例:新鮮な肉、新鮮な魚)は新鮮な食料品という認識だった。しかし、ライフスタイルが多忙化している今日、消費者は冷凍食品のような長期保存が可能で、簡単に調理できる食品を好むようになった。
もう一つは、コールド・チェーン・システムや近代的小売販売チャネル、ECの発展が、冷凍食品の消費動向にも影響を与えている。以前は、冷凍食品は保存状態が悪く、商品の品質に影響を与えるため、消費者はしばしばその品質に懸念を抱いていた。しかし、現在では、冷凍技術への投資が増加し、コールド・チェーン・システムの規模が拡大したことで、冷凍食品の保存状態が向上し、消費者の手元に届くまで品質が保証されるようになった。
レトルト食品(缶詰・包装食品)
レトルト食品(缶詰・包装食品)は、5~10分の調理・加熱してすぐに食べられるという利便性の高さから、人々の食生活に浸透しつつある。人気商品としては 餃子、春巻き、ポテトフライなどがある。2019年から現在まで、ベトナムのレトルト食品市場は急速に成長しており、生産量は年間当たり約500トンである。
現代の生活では、レトルト食品を食することは、都市部だけでなく農村部でも習慣となっている。消費者の高い需要を背景に、レトルト食品市場はメーカーだけでなく流通企業にとっても魅力的な市場となっている。食料品店やスーパーでは、顧客のニーズに応えるため、生鮮品や冷凍品に加え、レトルト食品が陳列商品として占める割合がますます高くなっている。
プレミックス
2023年のベトナムのプレミックス市場規模は約24,900トン、売上高の平均年間成長率(2022~2027年)は約11.32%である。プレミックスを最も多く使用しているのは水産加工輸出である。
ベトナムの人口は約9,940万人(2024年5月現在)で、2040年には日本の人口を上回ると予想されている。家計所得は2019年から2024年にかけて40%増加すると予想されている。ベトナムの富裕層の人口増加率は1年あたり11.4%である。所得や世帯数の増加、生活の質の向上は、プレミックスを含む食品産業の発展の要因である。
加えて、加工食品の生産量の伸びもプレミックス製品の成長ドライバーの1つである。特に、食肉加工品(フライドチキン等)や水産加工品(天ぷら等)分野で、プレミックスを使用した加工食品の生産高が増加している。
ゼラチン
ゼラチンはコラーゲンの冷凍製品で、食品加工産業(プリン、アイスクリーム、ゼリー等)や医薬品化粧品(医薬品、機能性食品等)で広く使用されている。これらの製品はベトナム市場で非常に人気がある。Mordor Intelligenceのレポートによると、2023年のベトナムコラーゲンの市場規模は132 Mil USDに達し、2023年から2028年までの複合年間成長率は6.2%と推定されている。ゼラチン製品も急成長している。F&B産業、特にゼリー、ヨーグルト、プリンといったゼラチンを必要とする菓子製品の急成長に伴い、生産に必要なゼラチンの量も増加している。
ディップソース(つけダレ)
ベトナムでは、魚醤 (ヌクマム)、醤油、トマトソース、チリソースなどのディップソースは、各家庭の台所で欠かせない調味料である。
以前、ベトナム人は魚醤を味付けに使うだけだったが、今では料理が多様化したため、様々な種類のディップソースを使うようになり、ベトナムのディップソース製造業の発展に寄与している。
ユーロモニターのレポートによると、2023年にベトナムの調味料産業の市場規模は約33,500 Bil VNDとなり、その64%がディップソースによるものである。ディップソースの中では、魚醤が15,000 Bil VNDで最大の割合を占め、次いで醤油が2,800 Bil VND、チリソースが2,600BilVNDとなる。また、魚醤は国際市場で注目されている輸出品目である。具体的には、2023年の最初の11ヶ月間で、魚醤の輸出量は16,991トン、売上高は25.4 Mil USDに達し、2022年同期比で数量で44.15%、売上高で1.47%増加した。
スパイス
ベトナムは、胡椒、シナモン、スターアニスという3つの主要製品を持つ、世界有数のスパイス製品供給国である。輸出額においてベトナムはスパイス全般の輸出で世界3位、胡椒の生産量と輸出額で世界1位、シナモンの輸出額で世界1位、スターアニスの輸出で世界3位である。ベトナムのスパイスは現在125カ国以上に輸出されている。ベトナム胡椒・スパイス協会(VPA)によると、2023年に、ベトナムは様々な種類のスパイスを34,976トン輸出し、輸出総額は49.3 Mil USDに達し、2022年の同時期と比較すると、輸出量は222.4%増加した。
食用油
Statistaによると、ベトナムの食用油市場の売上高は2023年に0.36 Bil USD、2024年には0.4 Bil USDに達する。市場は2024-2029年平均成長率7.34%(CAGR)で成長すると予想されている。
ベトナムの食用油市場は、消費者のライフスタイルに直接影響を与える可処分所得の増加や都市化などの要因によって大きく成長すると予想される。ベトナムは心血管疾患の発生率が高く、健康への関心が高まっていることが、今後ベトナムの食用油市場の拡大を促進すると予想される。
チーズ
ベトナムのチーズ市場は、2023年に売上高2,717.4 Bil VND、生産量9.3千トンに達し、2018-2023年平均成長率(CAGR)は7.8%である。
西洋料理がベトナム市場に浸透し、特に若者の間でチーズ好きが広まっている。ハンバーガー、ピザ、ブリトー、パスタなど、チーズをふんだんに使った代表的な料理が大人気である。
また、経済成長、冷凍産業やコールドチェーン産業の発展により、チーズの加工、生産、保存が容易になり、チーズの生産と流通産業が多くの多様な製品ラインとともに力強く発展できる環境が整った。
スープ
濃縮スープ製品は、スープや鍋に広く使われている。これはベトナム市場に登場した新しい製品群で、消費者の間で人気が高まっている。
ベトナムでは、家庭で調理することが伝統的かつ一般的な習慣であるため、消費者は通常、スープや鍋を調理したい場合、骨や肉、野菜から自分でスープを作る。フォーのスープや鍋のスープなど、複雑な調理を必要とするスープの場合、人々は外食する傾向がある。
しかし最近では、消費者の生活が多忙化したため、パックスープのような加工食品の需要も増えている。特に新型コロナウイルス(Covid-19)感染症拡大時には、人々は自宅に隔離され、フォー、春雨、鍋などの料理をレストランで楽しむことができなかったため、複雑で特殊なスープの需要が高まった。この時は、多くの小規模食品企業が消費者向けにレトルト・スープを製造していたが、流通規模が小さく細分化されており、品質が安定していなかった。消費者のニーズを満たすために、SGフードJSC、CJ Cau Tre JSC、Haidilaoなどの大企業もこの市場に参入した。幾つかのの典型的なレトルト・スープ製品が発売され、ユーザーから多くの好意的なフィードバックを受けた。
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– ページ数(企業紹介ページを除く)18ページ
– 発行年月日:2023年6月12日
– 発行:ONE-VALUE株式会社
– ファイル形式:PDF形式
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