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税制

ベトナムの税金一覧│税率から申告方法までベトナムの税制を徹底解説

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はじめに
この記事で伝えたいこと
  • ベトナムには日本に見られない税金もあり、事業展開の際には注意が必要である。
  • ベトナム進出に関する主要な税金としては、法人税、外国契約者税、付加価値税、個人所得税等が挙げられる。
  • ベトナムでの税務のスキーム確立には外部のコンサルタント等からサポートを受けることが望ましい。

はじめに:ベトナムの税金の種類

ベトナムでは法人税、個人所得税といった日本でもお馴染みの税制の他に、外国契約者税等の独自の税金も存在する。本レポートでは、ベトナムの各種税金について、概要や税率、計算方法をまとめて紹介している。ベトナムでのビジネスでは必須の情報なので、海外・ベトナムへの進出を検討しているビジネスパーソンはぜひ参考としていただきたい。

法人税  

法人税とは法人の事業活動から生じた所得に対して課税される税金である。

税率

ベトナムの法人税の標準税率は20%である。2014年に25%から22%に、2016年に20%にまで引き下げられた。石油やガス事業等の希少で重要な資源の探鉱、探査および開発活動の所得に対しては32~50%の税率が適用される。また、優遇税制も設けられている。

計算方法

課税所得に税率をかけて税額を算出する。課税所得は、税引前利益に損金不算入項目・益金不算入項目を調整し、繰越欠損金を控除することで算出される。ベトナムの損金算入に対する条件は日本よりも厳格であり、①会社の事業活動に関する費用であること、②VATインボイスや契約書などの適切な証憑を有すること、③2,000万ドン以上の取引は銀行送金やクレジットカード払いなどの現金以外で決済していること、という条件を全て満たさなければならない。欠損金は発生年度の翌年から5年間の繰越が認められている。

損金不算入項目の代表例としては以下のものがある。

給与等 任意の年金掛金は毎月従業員一人当たり300万ドンまでは損金算入される。これを超える額は損金不算入となる。
寄付金教育資金、医療保険基金などの一部の寄付金を除き、損金不算入となる。
引当金引当金繰入額は原則として損金不算入となる。入金期限を超えた一定の債権は限度額まで損金算入される。

益金不算入項目の代表例としては以下のものがある。

受取配当   ベトナム法人から受け取る配当金は、支払法人がベトナムで課税されている場合非課税となる。外国法人から受け取る配当金は課税の対象となる(この場合、外国税額控除の対象となる)。

課税対象

法人の事業活動から生じた所得について課税される。ベトナムに設立された法人は原則として居住者とされ、居住者の全世界所得に対して課税される。

申告方法

ベトナムの法人税は課税事業年度終了の日から90日以内に申告納付を行う必要がある。また、四半期ごとの中間納付(申告は不要)が必要である。第三四半期までの中間納付の合計が最終税額の75%未満の場合、延滞税が課される。

ベトナム財務省 出所:現地メディア VN EXPRESS

外国契約者税

ベトナムの外国契約者税とは、外国の法人または個人がベトナム国内で得た所得や付加価値に対して課される税金である。法人所得税(CIT)部分と付加価値税(VAT)部分で構成されている。

税率

ベトナムでは取引の内容により、VAT部分とCIT部分で税率が異なる。詳細は以下の一覧の通りである。

内容VAT(%)CIT(%)
サービスの提供を伴う物品販売1
建設(資材または機械設備の給付を伴わない)/据付52
建設(資材または機械設備の給付を伴う)/据付、輸送サービス32
サービス一般、機械設備リース、保険サービス55
利子5
ロイヤルティ10
レストラン・ホテル・カジノの管理サービス510
有価証券譲渡、再保険手数料0.1
デリバティブ取引2
その他事業22

計算方法

ベトナムでは、税額は契約金額にみなし税率(上表参照)をかけて算出する直接法が一般的に採用されている。CIT部分は契約金額が課税標準であり、VAT部分は契約金額にCIT税額を加えたものが課税標準である。他にも控除法やハイブリッド法といった計算方法もあるが一般的には採用されていない。

課税対象

ベトナム国外の法人や個人がベトナムにサービスを提供した対価に対して課税される。これはつまり、ベトナム法人の費用にかかる税金である。ベトナム法人の収益にかかるものではない。ベトナムにサービス等を実施する上で、ベトナム居住者かどうか、あるいはベトナムにPE(恒久的施設)があるかどうかにかかわらず課税される。

申告方法

直接法の場合、ベトナム法人が外国法人からVAT及びCIT部分の源泉徴収を行い、支払日から10日以内に申告納付を行う必要がある。外国契約者税を申告するためには、外国契約者の税コード登録が必要である。

付加価値税(VAT)

ベトナムの付加価値税(VAT)とは、事業者が事業活動により創出する付加価値に対して課される税金であり、日本の消費税と同様の概念を有する。事業者は、財およびサービスの販売時に顧客からVATを徴収し(売上VAT)、購入時にVATを支払う(仕入VAT)。

ベトナムのスーパーマーケット。ベトナムの付加価値税は、日本の消費税に近い。 出所:現地メディア VIR

税率

付加価値税の標準税率は10%であるが、社会政策的な観点から一部の取引には0%または5%が適用される。また、2022年2月1日から12月31日までは、標準税率が10%から8%に引き下げられる。新型コロナウイルスの影響を受けた事業者を支援し、経済回復に向けた時限措置となっている。減税対象の商品やサービスは標準税率10%が適用されているものであるが、金融や銀行、証券など一部取引は対象外となる。

5%税率が適用されるのは、水や肥料、教材、食品、医薬品・医療機器、農業、科学技術サービス等の必需品や必需サービスである。0%税率が適用されるのは、輸出品や輸出サービス、国外及び非関税地域での建設据付サービス等の輸出に関する場合である。0%税率を適用するためには、契約書や規定の書類を有するなどの条件を全て満たさなければならない。

税率対象取引
10%5%または0%以外の財およびサービスの販売
5%必需品や必需サービス 水、肥料、教材、食品、医薬品・医療機器、農業、科学技術サービス等
0%輸出に関する取引 輸出品や輸出サービス、国外及び非関税地域での建設据付サービス、国際輸送等

計算方法

計算方法は控除法と直接法の2種類ある。控除法では売上VATと仕入VATとの差額で税額を計算する。一方、直接法では課税対象価額に法令によって定められた税率(上表参照)を乗じて計算する。

課税対象

ベトナムにおける製造、事業及び消費のための物品やサービスの販売・提供・輸入に対して課税される。社会政策的な観点から、加工されていない農林水産物や上下水道、国内の畜産業および畜苗業の製品、土地使用権譲渡、医療サービスなどの一部の財およびサービスは課税対象から除外されている。

申告方法

毎月の申告・納付が原則であり、翌月20日までに申告納付する必要がある。しかし、前年の年間売上が500億ドン以下の場合、四半期ごとの申告が可能となる。

個人所得税

ベトナムでは納税義務者は居住者と非居住者に区分されており、それぞれの異なる対象範囲及び税率が規定されている。

税率

所得の種類居住者非居住者
給与所得 累計税率5%〜35%20%
事業所得 0.5%~5%1%~5%
投資所得利益に対し5%利益に対し5%
投資譲渡所得(うち:資本譲渡損益)利益に対し20%取引額に対し0.1%
投資譲渡所得(うち:証券譲渡損益)取引額に対し0.1%取引額に対し0.1%
不動産譲渡所得取引額に対し2%取引額に対し2%
ロイヤリティー所得 1,000万ドン超に対し 5%1,000万ドン超に対し 5%
相続からの所得 1,000万ドン超に対し 10%1,000万ドン超に対し 10%
贈与からの所得 1,000万ドン超に対し 10%1,000万ドン超に対し 10%

計算方法

ベトナムの個人所得税の計算方法は日本と同様である。

        所得税額=(課税総所得―所得税額控除)*該当所得税率

課税対象

以下に該当した者が個人所得税の対象とされている。

 条件
    居住者1年間の半数以上滞在する者・暦年のうち、ベトナム国内に183日以上滞在している者 ・ベトナム入国日から起算した連続する12カ月間のうち、ベトナム国内に183日以上滞在している者
ベトナム国内に恒久的な居所を有する者・恒久的居所(外国人の場合、在留カードに登録された住居)を有する者 ・契約期間が183日以上の賃貸住宅等を有する者
非居住者上記の居住者に該当しない者
その他・ベトナム国外で就労・就学・研究をして課税所得を有するベトナム人 ・ベトナムで所得を得ている外国人労働者 ・ベトナムに滞在していないがベトナム国内源泉所得を有する外国人 等

申告方法

ベトナムでも日本と同様に、法人が源泉徴収し、年末調整する形で毎月納税する義務と、自ら年末に確定申告を行う義務を負う。納税期限に関して、月次申告の場合は毎月の20日に、年次確定申告の場合は暦年終了の日から90日以内に申告しなければならない。また、四半期ごとに納税申告を行うこともある。この場合、四半期終了の日から30日以内に申告を提出しなければならない。

ベトナムの個人所得税は、日本のように企業が源泉徴収する。 出所:現地メディア VN EXPRESS

その他の税金

以下には特定の産業等において適用されるベトナムのその他の税金について解説する。

天然資源税

ベトナムの天然資源税とは、法律に定めている一部の天然資源を開発し、利用する個人または法人に対して課される税金である。主に以下のような資源の開発に対して課税される。

 ・金属鉄鋼

 ・非鉄金属

 ・天然ガス

 ・自然の林(人工的に育て、保護するものを除く)

 ・水産資源

 ・天然水(農業、工業等の産業に使用する天然水を除く)

 ・天然燕の巣

 ・その他の資源

計算方法

税金は以下のように計算される:

                    税金=数量*単価*税率

資源により、適用する税率が異なる。資源税率は1%から40%の間に推移している。例えば、金の場合は17%、銅は15%、天然水は10%等である。各項目の詳細な税率については、VietBiz編集部までお問い合わせをいただきたい。 

申告方法

毎月、その月に開拓した数量に基づいて、申告書を作成し、当局へ提出する必要がある。

申告先

申告書の提出先は、資源開発を行っている場所と本社の所在地が同一である場合、本社が置かれている地域の税務署に提出する。資源開発が行われている場所と本社の所在地が異なる場合、資源開発が行われている地域の税務署に対して、申告書を提出する必要がある。

環境保護税

ベトナムの環境保護税とは環境に悪影響を与えるような商品に対して別途で税金を課すものである。例えば、ビニール袋、ガソリン等である。

計算方法

環境保護税は他の税金と異なり、税率で算定されず、数量の単位当たりに固定の税額が課されている。例えば、ガソリンの場合、1ℓ当たり4,000ドン(約20円)、ビニール袋の場合、1キロ当たり50,000ドン(約250円)となっている。

申告方法

環境保護税の納税タイミングは商品ごとに異なる。

売買用の生産品・交換品所有権が移転した時点で税金が課される
社内使用のための生産品使用が開始された時点で税金が課される
輸入品(売買用のガソリンを除く)関税と同様のタイミングで税金が課される
売買用のガソリン売買時点で税金が課される

申告先

納税者は税務署に対して、税金を直接に納める義務を有する。本社の所在地と生産地が異なる場合、生産地の税務署に申告書を提出する必要がある。

非農地使用税

ベトナムの非農地使用税とは以下に該当する土地の使用権を有する個人または法人に対して、一定の税率を乗じた金額により、税金が課される。

・農村・都市部における宅地

・工業・商業用の非農地:工業団地開発用の土地、生産拠点建設用の土地、鉱物発掘用の土地、建設資材生産用の土地、陶磁器生産用の土地

・事業目的で利用される他の非農地

例えば、アパートのオーナーの場合、土地使用料の他に、非農地使用税を支払う必要がある。

計算方法

              税金=平米単価*税率

税率は累積税率であり、以下のような税率が課される。

レベル面積(平米)税率(%)
1法律が規定した範囲内の面積      3%
2法律が規定した範囲を3倍以内で超過した面積      7%
3法律が規定した範囲を3倍以上超過した面積        15%

申告方法

非農地使用税は、毎年2回、5月31日と10月31日に納税する必要がある。また、申告内容に変更があった場合、変更となった日から30日以内に申告書を提出する必要がある。

宅地の使用権所有者には非農地使用税が課される 出所:現地メディア VietnamPlus

移転価格税制

ベトナムの移転価格税制とは、関連者(関連企業や個人)の取引価格を、第三者の企業との取引価格(独立企業間価格)と異なる価格に設定することで、自社の利益を関連企業に移転することによる税逃れを防止するための制度である。

ベトナムの移転価格税制については以下の記事で詳しく紹介しています。

関連者の定義

以下の基準のいずれかに当てはまる場合、「関連者」であると見なされ、移転価格税制の対象となる。

基準定義
所有持分・25%以上を直接にまたは間接に保有 ・最大株主であり、10%以上を直接または間接に保有。
役員数・役員等総数の半数以上を選任する、または当該選任された役員等が他方の経営活動または財務活動に対する意思決定権を有する等
資金依存度・関連者からの借入金または関連者が保証し、借入れたものが資本の25%以上に相当し、かつ中長期借入金総額の50%以上
同族関係・企業の経営活動または財務、人材の決定に関与する家族
その他の特別関係・本社住所が同一

 また、日本の場合、移転価格税制の対象者は国外の関連者取引のみだが、ベトナムの場合、国内の関連者取引も対象となっている。日本より税制の対象幅が広いため、留意する必要がある。

移転価格の分析方法

 改正では独立企業間価格を決定するための方法として、以下のように5つの分析方法を認めている。

 ・独立価格比準法(CUP: Comparable net profit method)

 ・再販売価格基準法(RPM: Resale price method)

 ・原価基準法(CPLM: Cost plus method)

 ・利益比較法(CPM: Comparable net profit method)

 ・利益分割法(PSM: Profit split method)

 以上の5つの方法の中から、企業は関連者間取引の性質及び状況、入手可能なデータ等を複数の要素から考慮した上で、最も適切な移転価格分析方法を選択する必要がある。

独立企業間価格

ベトナム政府は最も適切な独立企業間価格として、少なくとも5つの比較対象企業から得られた価格の中で35パーセンタイルから75パーセンタイルまでの範囲内に位置する数値とするべきであると定めている。もし税務当局によって独立企業間価格が適切でないと判断された場合、過去にまで遡って追徴課税されてしまう。そのため、各企業は自社の設定価格が適切であるかを見直す必要があるだろう。

移転価格文書化・原則

 納税者は以下の三種類の移転価格文書を作成し、具備する必要がある。

 ・ローカルファイル:事業、価格の分析方法等の情報

 ・マスターファイル:海外事業の経営活動や、グループ全体の移転価格分析方法等の情報

 ・国別報告書( CbCR: Country by Country Report):納税者が活動している地域ごとの経営成績等を提供する。

ただし以下の条件に当てはまった場合は、上記の文書化義務が免除される。

国内の関連者間取引のみであり、全ての関連者間取引に対して同率な法人税率が適用されており、かつ、法人税の優遇装置を受けていない。
年間売上高が500億ドン(約2億5千万円)未満であり、かつ、関連者間取引の総額が300億ドン(約1億5千万円)未満である。
移転価格事前確認(APA: Advance Pricing Arrangement)が締結されており、APAの年次報告書も提出している。
年間売上高が2,000億ドン(約10億円)未満であり、かつ以下の条件に満たす。 ・ベトナム子会社が単純な機能のみを有し、無形資産の開発や使用がなされていない。 ・売上高に対する利払前・税引前の営業利益に対する割合が一部の業界に定められた比率(販売業5%、製造業10%、加工業15%)を上回っている。

日本企業の留意ポイント

 ベトナムの移転価格税制と日本の移転価格税制が異なるところが多いため、制度をしっかり理解した上で、基準に基づいて適切な独立企業間価格を算定する必要がある。

また、税務調査への対応として、事前準備が最も重要である。企業は「なぜ関連会社とこの価格で取引を行なったのか」を説明できる資料を事前に準備する必要がある。企業はこの理由を説明できない、または資料が不足している場合、移転価格取引を行なったとみなされ、追徴課税がなされる可能性がある。

最後に

今回はベトナムの主な税金について、基本概念と課税額の計算方法を中心に解説を行ってきた。日系企業であっても、ベトナムに現地法人が設置されている限り、ベトナムの税法に則って税金を納める必要がある。日系を含めた外資企業では頻繁にベトナムの税務署が税務調査に入ることがあり、もし税務調査の結果、違反が明らかになってしまった場合、高額のペナルティが課せられるため注意が必要だ。

より具体的な課税申告の手続き、税務の相談については、ベトナムの税法に精通したプロに相談し、コンサルティングなどのサポートを受けることをおすすめする。

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