ホーチミン市はインフラ過負荷により深刻な経済的損失を被っている。同市の交通・公共事業局およびホーチミン市開発研究院の試算によれば、交通渋滞による損失は年間約60億ドル(約9000億円)、洪水被害による損失は13億ドル(約1950億円)に達する。さらに、生産性低下、社会的ストレス、環境汚染といった間接的コストは統計に反映されていないことも踏まえると、構造的停滞に直面していることがうかがえる。
主因は三つの「ボトルネック」にある。第一に、法制度の不備である。PPP法および2024年土地法では、リスク共有のメカニズムや土地アクセス権が十分に明確化されておらず、投資家が消極的になっている。第二に、財政制度の制約である。同市は国家歳入の27%を占める財政規模を擁しているにもかかわらず、留保できる財源は21%にとどまり、インフラ投資資金が不足している。第三に、地域ガバナンスの不統一である。現行の地域評議会が助言的立場にとどまり、広域プロジェクトの停滞を招いている。
専門家は、三本柱からなる「大改革」が必要だと提言する。具体的には、①社会住宅開発と交通インフラを一体化した都市計画の推進、②都市型二層物流システムの整備とPPP法改正による民間投資促進、③ホーチミン市への財政自立権拡大と実効性のある地域管理機関の設立である。
これらの改革が一体的に実行されれば、ホーチミン市は成長軌道を取り戻し、ベトナム経済の中心都市としての地位をさらに強化できると期待されている。
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