ベトナムにおいて、農業と再生可能エネルギーを組み合わせた「農業型太陽光発電(Agri-PV)」の初の試みが始動した。2025年9月9日、農業・環境省とドイツ国際協力機構(GIZ)は共同でプロジェクトを立ち上げ、連邦経済協力開発省(BMZ)が資金を拠出した。事業は2025〜2027年の3年間にわたり、太陽光発電と農業生産を両立させるモデルを構築するものである。
Agri-PVは、農地上に太陽光パネルを設置しながら農業を継続することで、同一面積から「クリーンエネルギー」と「農産物」の二重収益を得ることを目的とする。計画では、現状評価と潜在力の分析、導入モデルと戦略提案、関係者向け能力強化、資金動員の4つを柱とし、最低10の実証モデルを構築することが目標とされている。農家、農協、農業関連企業、エネルギー企業、行政機関が直接の恩恵を受ける。
この取り組みは、農家に追加収入をもたらすだけでなく、技能習得や市場アクセス改善を促し、サプライチェーンの付加価値を高めると期待されている。また、農村部における再生可能エネルギー利用を拡大し、エネルギー安全保障と食料安全保障の両立を図る観点からも意義が大きい。さらに、ベトナムが掲げる「公正なエネルギー転換」やNDC 3.0、Net Zero目標達成にも資する。
一方で課題も残る。農業型太陽光発電の概念は国内で統一されておらず、研究や実証データが分散している。加えて、技術的知識や関係者の能力不足、政策の欠如が普及を妨げている。こうした課題を克服するためには、国家レベルでの制度設計と民間投資の誘導、さらに農家が参加しやすいスキームの確立が不可欠である。
ベトナムは日射量が豊富であり、中部高原、南中部沿岸、メコンデルタなどが特に適地とされる。農業型太陽光発電は、気候変動による天候リスクを緩和し、農業生産を安定させつつ、農村地域に新たな収入源を提供する持続可能なモデルである。今後の政策支援と技術普及の進展次第で、Agri-PVはベトナム農村経済とエネルギー転換の両面に大きな影響を及ぼす可能性がある。
ベトナム経済・ビジネス関連の有料レポートはこちらからもご覧いただけます。


