本レポートの内容と目的
本レポートでは、ドナルド・トランプ氏の大統領再就任がベトナム経済およびビジネス環境に与える影響について分析を行う。トランプ政権の経済、外交、移民政策の特徴を振り返り、米中貿易戦争の経緯と内容を整理した上で、ベトナムへの経済的影響、産業別の影響、そしてベトナムとアメリカ・中国との外交関係について考察する
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前トランプ政権の特徴
トランプ前政権は「アメリカ第一主義」を掲げ、経済、外交、移民政策において保守的かつ強硬な姿勢を貫いた。
経済政策
対中強硬姿勢と貿易戦争: 中国に対して強硬な姿勢を取り、貿易戦争を激化させた。中国製品に高関税を課し、中国も報復関税を実施するという応酬を繰り返した。
保護主義的な貿易政策: 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱するなど、自由貿易よりも保護主義的な政策を強化した。
税制改革と経済政策: 大規模な減税法案を成立させ、法人税率を引き下げることで企業活動を促進し、経済成長を加速させようとした。
外交政策
アメリカの利益を最優先する「アメリカ第一主義」を掲げ、パリ協定からの離脱や世界保健機関(WHO)からの脱退表明など、国際協調よりも自国優先の姿勢を示した。
移民政策
メキシコ国境に「壁」を建設する計画を実行するなど、国境管理を強化し、不法移民の流入を抑える政策を推進した。
トランプ大統領の再就任がベトナムへの経済に及ぼす影響
米中貿易戦争はベトナムに経済的なプラスとマイナスの影響をもたらすが、全体としてはプラスの影響が大きいと考えられる。
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プラスの影響
対米輸出の拡大: 前政権時、米中貿易摩擦が激しくなるにつれ、ベトナムの対米輸出は急速に成長した。米国が中国製品に高関税を課したことが背景にある。今後も同様のことが起こると予想される。
製造業の移転: トランプ政権の対中制裁により、多くの製造業が中国からベトナムに移転する動きが加速した。ベトナムの地理的優位性(中国に隣接)が、製造拠点としての魅力をさらに高めている。
外国直接投資(FDI)の増加: 中国から東南アジア諸国へシフトする傾向が見られ、ASEAN諸国のFDIの成長率は、中国のFDIの成長率を上回る傾向がある。
マイナスの影響
原材料・部品供給への影響: ベトナムの製造業は、中国からの原材料や中間部品に大きく依存している。米中貿易戦争で中国の輸出が制限されると、原材料の供給が遅れたり、コストが上昇するリスクがある。
水産業への影響: アメリカが新たな関税を導入するリスクがあり、ベトナムの水産品輸出に打撃を与える可能性がある。
産業別影響分析
産業別に見た場合、プラスの影響を受ける産業とマイナスの影響を受ける産業に分類される。
プラスの影響を受ける産業
半導体テック・電子部品製造業: 米中関係の悪化により、中国リスクの分散を目指す多国籍企業がベトナムへ移転する傾向が強まる。
不動産・工業団地開発: 製造業の移転を受け、ベトナムの工業団地の需要が増加し、不動産市場が活性化する。
マイナスの影響を受ける産業
原材料・部品供給への影響: 米中貿易戦争で中国の輸出が制限されると、原材料の供給が遅れたり、コストが上昇するリスクがある。
水産業: アメリカが新たな関税を導入するリスクがあり、ベトナムの水産品輸出に打撃を与える可能性がある。
ベトナムとアメリカ・中国・日本、韓国との外交関係
ベトナムは、「4つのノー」政策を掲げ、大国間の戦略的バランスを維持しながら、国益を追求する外交戦略を展開している。
アメリカとの外交関係
トランプ氏は前任期中に2度ベトナムを訪問しており、貿易摩擦を除けば、ベトナムとの友好的な関係を維持すると考えられる。ベトナムは米国の包括的な戦略的パートナー3国のうちの1つであり、経済、政治、安全保障、地域安定において重要な戦略的パートナーである。
中国との関係
中国はベトナムと国交を樹立した最初の国であり、最大の貿易相手国である。トランプ政権下でベトナムは対中国において利害が一致する国として重要視される一方、中国と隣接する地理的特性の長年にわたる外交関係を活かしつつ、中立を保ちながら戦略的利益を得る可能性がある。
日本、韓国との関係
日本と韓国はベトナムの包括的戦略パートナーであり、ベトナムは関係を重視している。韓国および日本企業は投資を拡大し、生産活動や貿易を広げ、ベトナムの経済と技術の発展に貢献している。
まとめ
トランプ政権下での米中貿易摩擦は、ベトナムの製造拠点の移転先としての地位を高め、対米輸出拡大の機会をもたらすと予測される。中国からの生産移転が加速し、ベトナムは「China+1」戦略の中心として注目され、多国籍企業が工場を移転すると考えられる。アメリカとの良好な関係により、特にハイテク分野や製造業におけるFDI(外国直接投資)の誘致が進むことが期待される。同時に、ベトナムは中国との強力な貿易関係を維持し、サプライチェーンを確保しつつ、国内市場の発展を図ることが重要となるであろう。
ベトナム市場調査レポート販売|トランプ政権下のベトナム経済・ビジネス環境
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レポート基本情報
– ページ数(企業紹介ページを除く)18ページ
– 発行年月日:2024年12月20日
– 発行:ONE-VALUE株式会社
– ファイル形式:PDF形式
– 価格:ページのフォームからお問い合わせください
– 購入方法:
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本レポートポイント
以下、レポートのポイントです。
▶ 米中貿易戦争がベトナム経済に与える影響について分析
アメリカとその同盟国は中国に対抗するためベトナムとの関係強化を図っています。 一方で、ベトナムは自国の利益を最大化すべく、米国寄りにはならず、バランスを取り、米国と中国の両方と友好関係を維持・発展する方針であることを本レポートでは解説しています。
特に、米中貿易戦争が激化することで、中国に拠点を置く外資系企業がベトナムへの移転の動きを加速させることが予想されるなど、ベトナムは「漁夫の利」を得る可能性が高まっています。 前トランプ政権時、米中貿易戦争が勃発している中、ベトナムはFDIの額や米国への輸出額を増やしていることをデータで示し、今後同じことが起こる可能性を本レポートでは言及しています。
▶ トランプ政権が直接ベトナム経済に及ぼす影響について俯瞰
米中貿易戦争がベトナム経済に及ぼす影響以外に、トランプ政権下の経済政策が、ベトナム経済に直接もたらす全体的な影響についても俯瞰しています。
トランプ政権の方針として、米国第一主義、貿易政策の変化、税制改革などがあげられ、それらに起因した経済政策がベトナム経済に及ぼす影響について分析しています。 ベトナムの産業業界が直接受ける影響は業界ごとに様々で、ポジティブ或いはネガティブな影響を受けることが予想される主要業界を取り上げ解説します。
最後の頁では、本レポートの議論を踏まえ、トランプ政権下のベトナム経済・ビジネス環境についての考察をまとめています。
▶ベトナム政府機関、現地報道機関の統計資料・データを活用
ベトナム政府機関、現地及び外国の報道機関、国際シンクタンクの記事・統計資料など、信頼できる現地の情報源の資料やデータを活用しています。
ベトナムの情報機関から発信される情報と外国の情報機関から発信される情報を基に、客観的にトランプ政権がベトナム経済にもたらす影響について分析しています。 日本語、英語、ベトナム語の定量的・定性的資料・データを活用・分析したうえで、ONE-VALUE独自の見解をまとめています。