ベトナム市場調査レポート販売
ベトナムの原子力発電プロジェクト再開の動向についてのレポートを販売しています。

レポート基本情報
– ページ数(企業紹介ページを除く)14 ページ
– 発行年月日:2025年5月
– 発行:ONE-VALUE株式会社
– ファイル形式:PDF形式
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はじめに
ベトナムは、急速に増加する電力需要と伝統的なエネルギー源の不安定性に直面しており、原子力発電がエネルギー安全保障を確保するための重要な解決策と見なされている。しかし、原子力発電の導入には数多くの課題が存在する。これらの課題には、技術的な難しさ、資金調達の問題、社会的な懸念、そして福島第一原子力発電所事故の影響による反対意見などが含まれる。本記事では、ベトナムにおける原子力発電プロジェクトの再開に関する動向や、現在抱える課題、さらには今後の展望について詳しく分析する。
ベトナムの原子力発電の歴史
本章はベトナムの原子力発電の歴史について解説する。
1987年から2000年までの原子力発電の発展
ベトナムは1980年代から原子力発電の発展を目指し、IAEA(国際原子力機関)と協力して国家原子力発電プログラムを計画してきた。1987年にコンピュータセンターを設立し、長期的な原子力発電計画ソフト「WASP」とエネルギー需要評価モデル「MAED」を導入した。
ベトナムは1996年に原子力発電の需要に関する研究を開始し、その後、原子力研究所や商工省主導で関連プロジェクトを進め、最終的に2018年から2020年に原子力発電所を電力網に組み込む必要があるとの結論に至った。
* WASP(Wien Automatic System Planning): IAEAによって開発された、国や組織が発電システムの開発を計画するためのソフトウェアツール。
**MAED(Model for Analysis of Energy Demand):IAEAによって開発された、社会経済的、技術的、人口統計的要因に基づいてエネルギー需要を分析し予測するためのソフトウェアツール。
2001年から2016年までの原子力発電の発展
2002年から2005年にかけて、ベトナム政府は原子力平和利用戦略の策定作業を行い、2006年に「2020年までの原子力エネルギー利用戦略」を承認、2010年に「2030年までの原子力発電開発計画の方針」を承認した。2009年、ベトナム国会はNinh Thuan原子力発電プロジェクトを承認し、2つの発電所で4,000 MWの発電容量を目指すことになった。この後、日本とロシアから技術や財政支援を受けていた。

出所:https://baodongnai.com.vn
原子力発電プロジェクトの中止
2016年11月、ベトナム国会はNinh Thuan原子力発電所プロジェクト実施中止の方針を承認した。この決定には以下のような要因が影響を与えた。
- 経済面:EVNによると、Ninh Thuan原子力発電所の建設費用は、2009年には約10 Bil USDだったが、2016年には18〜20 Bil USDに増加した。一方、政府の報告によると、ベトナムの2016年の国債比率は63.7%であり、融資が続くと借金返済の負担が大きくなる。
- 社会面:2011年の福島第一原子力発電所事故は、周辺住民に不安を与え、プロジェクト継続による社会的緊張の高まりが懸念された。
ベトナム国会によると、日本とロシアの技術と能力は、ベトナムが原子力発電の開発を一時停止する理由ではない。
プロジェクト再開の決定
2024年11月25日、ベトナム共産党第13期中央委員会の会議で、Ninh Thuan原子力発電プロジェクトの再開が決定され、原子力発電プログラムの研究が継続されることが確認された。
12月5日、トー・ラム書記長はNinh Thuan原子力発電所1号機の建設予定地を視察し、再開に向けた準備を指示した。前日には、政府が原子力エネルギー法の改正案についての専門会議を開催した。
原子力発電プロジェクト再開の理由
本章は原子力発電プロジェクト再開の理由について解説する。
エネルギー安全保障の確保
第8次国家電力開発計画(PDP8)に対して、ガス発電と再生可能エネルギーの電力生産は、設定された目標に達しておらず、電力販売のメカニズムにおいて課題がある。石炭発電は電力生産の50%を占め、設定された目標を達成したが、2050年までには全ての石炭発電所は使用を中止することになっている。
一方で、原子力発電は、長時間安定して運転でき、発電能力の約92%を常に活用できるため、LNG(液化天然ガス)や再生可能エネルギーよりも効率が高いとされている。こうした理由から、商工省は、原子力発電を再び導入することが、ベトナムのエネルギーを安定して確保するうえで重要な対策になると考えている。
クリーンエネルギーへの転換
IAEAによると、原子力発電は温室効果ガスの排出を減少させ、環境問題の解決にも貢献する。ベトナムは2050年までにネットゼロ達成を宣言しており、PDP8では再生可能エネルギーの割合を増加させる方針が示されている。しかし、再生可能エネルギーは天候や昼夜のサイクルに依存しており不安定なため、そのバックアップ電源として原子力発電が不可欠である。安定した電力供給を確保するためには、原子力発電の導入が重要な要素となる。
ベトナムにおける原子力発電の開発の利点
本章はベトナムにおける原子力発電の開発の利点について解説する。
方針の一致
上記のように、ベトナム政府は原子力発電所の開発プログラムを再開する方針を決定した。具体的には、Ninh Thuanに2つの原子力発電所を建設するための手順を実行する。
建設地は選定され、一部が実施されている
Ninh Thuan原子力発電所1号機及び2号機の建設場所は、旧来の場所であるNinh Thuan省Thuan Nam県Phuoc Dinh社Vinh Truong村、およびNinh Hai県Vinh Hai社Thai An村である。この場所は、国内外のコンサルタントによって詳細に調査・評価された。

出所: https://tienphong.vn
人材の訓練と開発
2010年から、ベトナム教育訓練省は、原子力発電に関連する専攻で381人の学生をロシアの大学に派遣した。また32人の技術者が日本で原子力発電所の運転要員育成のための研修を受けた。これにより、原子力発電所の運転を行うための核となる人材が確保されていることは、初めての原子力発電所の運営にとって重要な要素となる。

出所: https://www.evn.com.vn
外国投資家にとっての機会
ベトナムが原子力発電プロジェクトの再開を決定したことで、特に日本の投資家にとって、ベトナムの原子力エネルギー産業に参加する大きなチャンスが生まれた。以下は、日本の投資家が活用可能な主な機会である
技術と設備の提供
日本は、東芝、日立、三菱などの大手企業を擁する強力な原子力産業を有し、原子力発電分野における先進的な技術と高い安全性で広く知られている。
最新技術と設備:ベトナムの原子力発電所建設に必要な高度なシステムと設備を提供し、効率的で安全な運営が期待される。
安全の確保:福島第一原子力発電所事故後、強化された日本の安全基準は、ベトナムの原子力発電所にも適用され、安全確保の基盤を提供できる。
人材育成の協力
原子力発電は、技術、運営、保守の分野で高度な専門知識を持つ人材を必要とする。日本投資家は、ベトナムの原子力産業向けの人材育成プログラムに参加することができる。
終わりに
原子力発電は、ベトナムにおける安定した持続可能な電力供給を確保するための重要な解決策である。安全性やコストに関する多くの課題が残っているが、電力需要の増加に伴い、原子力発電プロジェクトの再開は必要不可欠であるとベトナム政府は考えている。ベトナム政府は、原子力発電プロジェクトの達成を目指し、法的枠組みの整備、人材育成、国際的な協力に重点を置いている。