ベトナム市場調査レポート販売
ベトナムのコールドチェーン(冷凍・冷蔵)倉庫の最新動向と将来展望のレポートを販売しています。

レポート基本情報
– ページ数(企業紹介ページを除く)30 ページ
– 発行年月日:2025年4月
– 発行:ONE-VALUE株式会社
– ファイル形式:PDF形式
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はじめに
ベトナムは農業・水産業が主要産業の一つであり、特に水産物の生産と輸出において世界的な地位を築いている国である。しかしながら、生鮮食品の品質保持や食品ロスの削減を目的としたコールドチェーン物流の整備はまだ十分とは言えず、市場の成長余地が大きい。近年、経済発展や消費者ニーズの変化に伴い、冷蔵・冷凍倉庫の需要が急速に高まっている。本レポートでは、ベトナムのコールドチェーン市場の現状、成長要因、課題、法規制、主要事業者の動向を分析し、今後の展望を考察する。
2. ベトナムにおける冷蔵・冷凍倉庫の現状
市場規模と分布
ベトナムの冷蔵・冷凍倉庫の普及はまだ発展途上であり、都市住民一人あたりの冷蔵・冷凍施設の面積は世界主要国と比較しても低い水準にある(0.07m³/人)。倉庫は主に北部と南部の工業団地に集中しており、特に南部地域が全国の約80%のパレット数を占めている。倉庫所有企業の割合は国内メーカーが48%、外資系企業が24%、物流企業が14%、その他が14%となっている。市場規模は2015年から2024年にかけて年平均10%以上の成長率で拡大しており、2024年にはパレット数は30万パレット近くに達している。
2.2 コールドチェーン未発達の理由
ベトナムのコールドチェーンが未発達である主な理由として、以下が挙げられる。
- 商業用冷蔵倉庫の歴史が浅く、1990年代半ばからの整備であること。
- 国内向け販売業者の冷蔵輸送利用率が低く、輸出業者に比べて利用が進んでいないこと。
- 国内の品質基準が国際基準に比べて低く、一定の食品損失が許容される文化的背景。
- 冷蔵・冷凍設備の初期投資コストが高いこと(冷凍倉庫は通常倉庫の2~3倍、冷凍トラックも同様に高価)。
- 冷蔵倉庫の建設に時間を要し、供給不足が続いていること。
3.ベトナムコールドチェーン市場の成長要因
ベトナムのコールドチェーン市場の成長を促す主な要因は以下の4つである。
- 農業生産における高い損失率
ベトナムは東南アジアの中でも農産物の損失率が高く、青果物で約32%、肉で14%、魚で12%の損失が発生している。これにより、損失低減のための冷蔵・冷凍保存のニーズが高まっている。
- 農産物生産・貿易の伸び
農産物と水産物の生産および輸出が拡大しており、年平均成長率も高い。これが冷蔵市場の発展を後押ししている。
- モダントレードモデルとEコマースの発展
伝統的市場からスーパーやECへのシフトが進み、食品の品質基準が厳格化。モダントレードの小売シェアは増加し続けており、2030年には60%に達すると予測されている。
- 消費者の食品安全意識と利便性の向上
都市部を中心に中間層・富裕層が増加し、食品の安全性や利便性を重視する消費行動が増加。レストランや食料品店の冷蔵・冷凍保管ニーズも高まっている。
4.食品ロスの現状と課題
ベトナムでは生鮮食品の食品ロスが深刻であり、国連食糧農業機関(FAO)によると、生産された食品の約4分の1が加工工場や配送センターに到着する前に廃棄されていることもある。
特に食肉の保管・輸送時のロスが高く、東南アジア平均よりも多い。複雑な流通構造や小規模卸売業者の多さにより温度管理が不十分なことが主因である。農業協同組合の設置や冷蔵輸送の集約化が望まれている。
5.各事業者セクターの動向
5.1 地場事業者と物流企業
ベトナムの冷蔵輸送事業者は小規模が多いが、ABA CooltransやTan Bao An、ITL、Binh Minh Taiなどが主要企業として市場をリードしている。2021年には700台以上の冷蔵トラックが稼働し、冷蔵倉庫所有企業の約45%が1~2か所の倉庫を持つ状況である。物流企業の多くは近年コールドチェーン事業に参入し始めており、M&Aも活発化している。
5.2 食品メーカーの動向
食品生産・加工企業(特に肉、魚、野菜)は冷蔵倉庫の需要が大きく、自社でコールドチェーンを構築する傾向が強い。水産加工大手のMinh PhuやHung Vuong、Satraなどが自社倉庫を所有し、リースサービスも展開している。新型コロナウイルスの流行は流通停止により冷蔵需要を急増させ、消費者の品質意識向上にも影響を与えた。
5.3 小売・飲食事業者
都市部の所得増加に伴い、伝統的市場からスーパーやECへの移行が進み、冷蔵・冷凍食品の需要が拡大。スーパーやレストランでは冷蔵倉庫の需要が高く、一部は独自の冷蔵システムを構築している。
6. ベトナムにおけるコールドチェーン関連の法規制
ベトナムにはコールドチェーン物流の統一的な国家規格は存在しないものの、食品安全や農産物、水産物保管に関する政府決定でコールドチェーン整備が推進されている。
主な法規制・政策としては、
- 投資法(61/2020/QH14)により、外国資本は冷蔵・冷凍倉庫事業に100%出資可能。
- 土地法(45/2013/QH13)で外国企業の土地賃貸が認められ、地方政府が借地支援を行う。
- 法人所得税法で、社会経済的に条件の厳しい地域や工業地帯での冷蔵倉庫投資に対し、10年間20%の優遇税率適用(通常22%)。
- 国家基準TCVN 9771:2013により、急速冷凍食品の取り扱いや冷蔵・冷凍倉庫の温度管理が規定されている。
また、2030年までの食料安全保障計画や青果物産業発展計画、水産加工業発展計画などでコールドチェーンの整備促進が掲げられているが、具体的施策の詳細はまだ限定的である。
7. ベトナムのコールドチェーン市場における課題と展望
7.1 課題
- 国内市場向けのコールドチェーン利用率の低さと品質基準の低さ。
- 初期投資コストの高さと技術・運用ノウハウの不足。
- 冷蔵倉庫の供給不足による高価格と予約困難な状況。
- 流通構造の複雑さと小規模事業者の多さによる温度管理の不徹底。
7.2展望
- 輸出向け品質基準の遵守が国内市場にも波及し、コールドチェーン需要が拡大する見込み。
- モダントレード・Eコマースの拡大により、食品の品質・安全性要求が高まり、冷蔵・冷凍倉庫の需要が増加。
- 政府の法規制整備や税制優遇措置により、外国資本の参入や投資が促進される。
- 物流企業の参入増加とM&Aの活発化により、サービス品質の向上と市場の拡大が期待される。
8.おわりに
ベトナムのコールドチェーン市場は、農業・水産業の成長、消費者の食品安全志向の高まり、モダントレード・Eコマースの発展など多くの成長要因を背景に急速に拡大している。しかしながら、国内市場の品質基準の低さや高コスト、供給不足などの課題も依然として存在する。政府の法規制や優遇措置、主要企業の積極的な投資・事業展開により、今後5年から10年で市場は大きく発展すると予想される。ベトナムのコールドチェーン市場は、食品ロス削減や食品安全確保の観点からも重要性が増しており、国内外の投資家や事業者にとって魅力的な成長市場である。