はじめに
2025年に入り、ベトナムでは行政区画の再編や省の統合に関する報道が相次ぎ、不動産市場においても注目が集まっている。特にこれらの報道を受けた地域では、短期間で地価が急騰する現象が見られ、多くの投資家が投機的な取引に動いた。しかし、こうした価格上昇は実需に裏打ちされたものではないケースも多く、短期的な熱狂の後に市場が冷え込むリスクも顕在化している。本レポートでは、最近のベトナム各地での地価上昇事例を分析するとともに、その背景や政府の対応、日本人投資家にとっての留意点について考察する。
地価高騰の背景:行政再編の報道が引き金となる
2025年第一四半期に入り、ベトナム不動産市場は複数の地方で急激な地価上昇を記録した。特に、行政機関の新設や省の合併といった行政再編の報道が出た直後に、該当地域の地価が20~40%上昇する事例が相次ぐ。
たとえば、北部のバクザン省では、同省バクザン市の一部エリアで2024年末と比較して20%以上の上昇率を示す。また、フート省のヴァンフー、チュンヴオン、トーソン、タインミウ、ザーカムなどの地区では、長年放置されていた住宅地や都市区画ですら、前年比で20〜30%の価格上昇を見せる。ハイフォン市のキエントゥイ、アンドン、トゥイグエン地区においても同様に、15〜20%の価格上昇が確認される。
南部では、ドンナイ省のニョントラック地域において、2024年同時期比で20〜30%、一部では40%以上の価格上昇が報告される。
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