始まり
ベトナム市場は、急速かつ安定した経済成長率、豊富な労働力、そして市場拡大の可能性により、日本企業にとってますます魅力的な投資先となっている。このような状況下で、従来のビジネス提携よりも、ジョイントベンチャーやM&Aがより効果的な戦略として浮上している。その主な理由は、現地ネットワークの活用、市場参入までの時間短縮、そして現地パートナーの支援によるリスクの軽減が可能である点にある。これらの利点は、外国企業がベトナムの有望なビジネス環境で競争優位性を獲得するための大きなチャンスを生み出している。
ベトナム市場の実情
本章では、ベトナム市場の実情について解説する。
ベトナム主要経済セクターの概要
ベトナムの経済構造は、農林水産業、鉱工業・建設業、サービス業の3つの主要セクターから成り立っている。銀行誌によると、2024年の各セクターの割合はそれぞれ11.86%、37.64%、42.36%である。

ベトナムの農林水産業
Vietnam Bond Market Association (VBMA)によると、ベトナムの農林水産業は、2015年から2024年の間に年間平均成長率約3.8%を維持している。その中でも農業は主要な経済セクターであり、2024年にはセクター全体のGDP寄与率の75.2%を占める。
ベトナム農業アカデミーによると、2010年から2023年にかけて農業セクターは年平均3.27%の成長率を記録している。一方で、気候変動の影響を受けながらも、持続可能な発展への取り組みを強化している。ベトナムは持続不可能な農業から持続可能な農業の転換に特に力を入れている。その第一歩として、メコンデルタ地域において、高品質で低排出型の米の集中的な栽培を推進する成長戦略が実施されている。この取り組みは、成長戦略と環境保全を両立させるものであり、これまでに多くの成果を上げている。
ベトナムの鉱工業・建設業
VBMAによると、建設工業セクターは、2014年から2024年にかけて年間平均12.1%の成長を記録している。その中でも、加工・製造業が主要な経済セクターとなっており、2024年にはセクター全体のGDPに対する寄与率が64.9%に達する。
ベトナム工業貿易省によると、加工・製造業はベトナム経済を牽引する最重要セクターである。このセクターは7.5百万人の労働者を抱え、年間8,000 Tril VND以上の収益を上げており、その規模は農業、卸売・小売業、鉱業を大きく上回る。しかしながら、工業省によれば、多くの分野において現地調達率が低い状況が続いている。特に繊維・アパレル、履物、電子機器といった主要な輸出産業では、原材料の60%から70%を輸入に依存している。このため、基幹技術を有する企業との連携が、加工・製造業のさらなる発展を促進するための解決策の一つとして注目されている。
ベトナムのサービス業
サービス業は2014年から2024年の間に11.2%の成長率を記録し、ベトナムGDPへの最大の貢献を果たしている。しかし、財務情報統計局によれば、ベトナムのサービス経済は均一に発展しておらず、小売業、情報技術(IT)、運輸業など比較的強い成長を見せる分野がある一方で、金融・信用、科学技術、コンサルティングなどの重要分野は依然として十分な発展を遂げていない。法的枠組みやコストの問題に加え、技術投資の不足やイノベーションの欠如が、ベトナムのサービス業の競争力低下の原因となっている。世界銀行は、ベトナムがデジタル技術の導入を強化するために外国企業との協力に重点を置くべきであると提言している。
ベトナム市場に参入する際に外国企業が直面する共通の課題。
ベトナムは、政治の安定性、良好な外交関係、そして力強い経済発展の可能性により、外国企業にとって魅力的な投資先となっている。しかし、この市場に参入する際、外国企業は以下のような側面で明確な課題に直面する。
- 法制度の不備:リスク回避や企業の権益保護を目的とした法令が継続的に制定・改正されているものの、投資局によれば、実施過程で多くの課題が生じており、これが時間やコストの増大を引き起こし、外国企業に直接的な影響を与えている。
- 技術流出リスク:外国企業は現地パートナーに技術を移転する際、技術の流出により競争優位を失うリスクに直面する可能性がある。また、ベトナム企業フォーラム(VBF)で多くの外国企業が共有したように、ベトナムの知的財産権に関する規制が十分でなく、知的財産の喪失を懸念している。
- 現地理解の不足: 現地パートナーが不足している場合、ローカル市場の特性を把握することが難しくなる。この課題は、現地市場での成長や競争力に悪影響を及ぼす可能性がある。
- 現地企業との競争: 外国企業は、強固な基盤を持ち、安定した顧客ネットワークを有する地元企業との激しい競争に直面している。
従来の方法でベトナム市場に参入する場合、日本企業は前述のような課題や困難に直面する可能性が高い。そのため、ベトナムで事業を拡大する際には、合弁事業やM&Aが、不要なリスクを最小限に抑える有効な手段となる。
ベトナムのあらゆる業界における合弁事業とM&Aの利点
本章では、ベトナムのあらゆる業界における合弁事業とM&Aの利点について解説する。
ベトナム市場参入のスピードアップ
ここまで公開によると、日本企業はベトナム市場での内需をターゲットとした投資に明確な傾向を見せている。以前は代理店を通じて製品を販売していた企業も、直接投資を拡大することを検討し始めている。特に、食品・飲料(健康志向製品)、子ども向け製品、化粧品の分野でのパートナーシップを求める動きが活発化しており、日本製品の安全性と品質に対する高い信頼が背景にある。