CIとは何か企業の「見えない実態」を暴く技術

CIの核心は財務に出ない本質情報の可視化
コーポレートインテリジェンス(Corporate Intelligence, CI)とは、企業調査や企業信用調査では把握しきれない非財務情報を含め、企業実態・外部環境・市場情報を体系的に収集・分析する仕組みである。財務諸表だけでは見えないコーポレートガバナンスの強弱、潜在的なリスクマネジメント状況、レピュテーションリスクなどを明らかにし、「信頼できるパートナーか」「どの程度リスクを許容すべきか」といった経営判断を支える基盤となる。
CIとDDの違いは非公開領域を掘れるかどうか
従来のデューデリジェンスは財務・法務・税務などの公式資料を通じて形式的なリスクを確認するプロセスである。一方、CIは企業文化、組織風土、経営者・幹部の評判、市場での評価、競争優位性(競合分析)といった非財務リスクに踏み込み、より実態に近い企業像を描き出す点に特徴がある。すなわち、デューデリジェンスが「見えている領域のチェック」であるのに対し、CIはOSINTやヒアリングを通じて「見えていない領域に潜むリスク・機会を特定する行為」である。
CIは長期的パートナー判断の精度を上げる武器
CIを導入することで、短期的な収益指標だけでなく、統治体制(コーポレートガバナンス)の実効性、従業員の定着性、経営者の姿勢、ステークホルダー評価といった経営の持続性を左右する情報を企業評価に反映できる。また、レピュテーションリスクや内部統制などの非財務リスクを可視化することで、「投資するかどうか」ではなく、「どの条件なら適切にリスクコントロールしながら関係構築できるか」という高度な意思決定を可能にする。
なぜCIが必要か

情報格差が経営リスクとなる中、公開情報の限界を超えて実態を見極める
企業を取り巻く環境は複雑化し、ガバナンス、コンプライアンス、内部統制に対する要求水準は年々高まっている。特に海外ビジネスでは情報の非対称性が大きく、公開情報だけでは実態を把握できないケースが多い。また、AIによる情報分析が進化した現在でも、現場の実態、組織文化、意思決定者の信頼性といった非定量領域はアルゴリズムだけでは適切に評価できない。こうした背景から、経営判断の前提となる情報の確度を高めるためには、人的ネットワークと分析を組み合わせたCIの導入が不可欠となっている。
非財務リスクは顕在化すると致命傷になる
財務データでは読み取れない経営者の評判、組織文化、内部統制の運用状況、従業員の定着性、ブランド評価などは、事業の持続可能性に大きな影響を与える要素である。これらは表面化しにくく、問題が顕在化した時には経営ダメージが大きい領域であるため、事前に非財務リスクを把握するCIの価値が高まっている。
CIは戦略判断の透明性と再現性を高める
CIはリスク回避のためだけではなく、投資判断、パートナー選定、事業拡大など、経営戦略全般の精度を高める役割を果たす。企業の実態を多角的に把握することで、機会とリスクのバランスを適切に評価でき、意思決定の透明性と再現性を向上させることができる。
CIの調査とは公開情報と非公開情報を統合する技法

OSINTは企業外部の事実を拾う基盤
コーポレートインテリジェンスでは、新聞、業界誌、企業データベース、Web情報、行政公開情報などを用いたOSINT(オープンソースインテリジェンス)が基盤となる。これにより、基本的な企業情報、レピュテーションリスク、メディアモニタリング結果、競合分析、業界分析など、経営判断に必要な一次情報を効率的に収集できる。
ヒアリングは内部実態を暴く唯一の手段
公開情報だけでは捉えられない組織文化、内部統制、経営者の人物像、取引慣行、ステークホルダー評価といった非公開領域の情報は、関係者へのヒアリングによって補完する。現場の声を反映した情報は、企業の透明性や企業倫理、内部不正リスク、反社会的勢力との関係性など、潜在的なコーポレートリスクを把握するうえで重要である。
リスク分析は意思決定に使える形に変換する工程
収集した情報は、信頼性の検証とリスクスクリーニングを経て、意思決定に活用できるインテリジェンスレポートとして整理される。レポートには、企業の信用リスク、コンプライアンス状況、レピュテーション分析、経営リスク予測、戦略的情報評価などが含まれ、経営戦略や投資判断支援に資する形で提示される。
ベトナムでCIが不可欠なのはリスクが「見えにくい」から
ベトナム市場は成長性が高い一方で、コーポレートガバナンスや情報開示の水準にばらつきがあり、見えにくいコーポレートリスクが残存している。以下では、コーポレートインテリジェンス(CI)が特に有効となる代表的なリスク領域を整理する。
ガバナンス不透明性が企業取引の最大リスクになる
腐敗認識指数(CPI)において、ベトナムは2023年時点でスコア41ポイント、世界88位と評価されており、先進国と比べると依然として汚職リスクが高い水準にあるとされる。これは公的部門の腐敗だけでなく、企業の税務対応、ライセンス取得、行政との関係性などにも影響しうる環境であることを示している。そのため、デューデリジェンスだけでは把握しにくいコンプライアンスリスクや政治・行政リスクを、CIを通じて補完的に確認する必要がある。

組織の不安定さが事業継続性を左右する核心要因になる
欧州ビジネス協会の幹部によれば、ドンナイ省やビンズオン省など南部の工業集積地では、工場労働者の初年度離職率が約20%に達することも珍しくないとされている。このような高い人材流動性は、生産性や品質の安定性だけでなく、組織文化や内部統制の定着にも影響を与える要因である。CIでは、単なる賃金水準だけでなく、離職傾向やマネジメントスタイル、現場のモチベーションなどを含めた組織リスクの把握が重要となる。
評判リスクが瞬時に拡散する環境では事前検証が必須
2023年初時点でベトナムのソーシャルメディア利用者数は人口の約71%に相当するとされており、情報拡散のスピードは非常に速いとDataReportalが報告している 。品質トラブル、不祥事、コンプライアンス違反などが発生した場合、レピュテーションリスクやブランドリスクが短期間で拡大する可能性が高い環境であると言える。CIにおいては、企業調査や企業信用調査に加えて、報道監視やメディアモニタリングを通じた評判動向の把握が、経営戦略・経営判断に不可欠な要素となる。
ONE-VALUEのCIは企業の実像を丸ごと見抜く調査

ONE-VALUEは、公開情報と非公開情報の両面から企業実態を把握するコーポレートインテリジェンスサービスを提供している。新聞、インターネット、業界内専門家ネットワークなどを活用した公開情報調査に加えて、会計監査報告書の有無や内容、過去の税務監査履歴、未払い税金の有無など、財務・税務面に関連する確認を行う。これにより、帳簿上では見えにくいコンプライアンスリスクや潜在的な経営課題を浮き彫りにし、取引実態やガバナンスの整合性を検証する。
さらに、必要に応じて銀行・警察・公安などの専門機関へのヒアリングを実施し、借入状況、訴訟・犯罪歴、重大な規制違反の有無といった非公開情報を補完する。あわせて、企業オーナーや主要幹部の信用調査を行い、経営能力、評判、組織との適合性など、意思決定者に起因するリスクを把握することが可能である。これらの情報を総合することで、通常の文書確認だけでは判断できない「非財務リスク」「人物リスク」「企業文化・内部統制の実態」を明確化し、ベトナム企業との提携・投資における判断材料を提供する
結論:CIはベトナム進出の成功率を左右する経営インフラ
コーポレートインテリジェンス(CI)は、財務情報だけでは把握できない非財務リスクを可視化し、経営判断の精度を高めるための重要な手段である。とりわけ情報非対称性が大きいベトナム市場では、組織運営の実態、経営者の信頼性、コンプライアンス状況、レピュテーションといった要素が事業の成否に直結する。CIを導入することで、潜在リスクを事前に把握し、投資・提携・サプライチェーン構築における意思決定をより安定的かつ戦略的に進めることが可能となる。
ONE-VALUEは、現地ネットワークと専門機関へのアクセスを活用し、公開情報と非公開情報の双方から企業実態を精度高く捉えるコーポレートインテリジェンスサービスを提供している。企業の信用力、内部統制、人物リスク、税務・法務上の懸念などを包括的に分析し、経営者が判断しやすい形で提示することで、ベトナム事業の成功確率を高める支援を行っている。ベトナムに進出したい企業様は、ぜひONE-VALUEにご相談ください。


