はじめに
平成30年12月に、新たな在留資格「特定技能」の創設を含む、「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立し、平成31年4月1日より特定技能外国人の受け入れが始まった。今年の4月にて、特定技能制度が開始されてから丸2年経過したこととなり、出入国在留管理庁の令和2年12月末時点での統計によると、国内で受け入れられた特定技能外国人の総数は15,663人となっている。
もともと同制度は国内の深刻な人手不足に対応するための制度として開始されたものであるが、すでに従業員の半数以上が特定技能外国人を含めた外国人従業員だという事業者もあり、まさに日本にとって外国人の労働力は必要不可欠なものとなっている。
特定技能外国人の受け入れに当たっては、日本は複数の送り出し国と「二国間協定」を締結し、受け入れスキームの整備に取り組んでいる。それに伴い、今年の2月15日より、ベトナムから特定技能外国人を受け入れる制度が一部改正された。今回はその改正のポイントについて見ると同時に、改めて受け入れ手続きの流れを確認してきたい。
特定技能外国人を受け入れる手続きは「日本側での手続き」、「外国人の出身国での手続き」の2つ
特定技能外国人の受け入れに係る手続きは、日本側で出入国在留管理庁等の関係機関への手続きの他に、外国人の出身国側での手続きも必要となる。出身国側での手続きの内容、流れは前述の通り、当該国との「二国間協定」によって定められている。
※ちなみに多くの特定技能外国人を送り出している中国については、まだ二国間協定が締結されておらず、現在中国国内で送り出し制度を検討している状態となっている。とはいえ、日本側での手続きを適正に行うことで、中国国籍の特定技能外国人を受け入れることは現状可能となっている。
特定技能外国人が日本にいるか、海外にいるかで手続きの流れは大きく変わる
特定技能外国人を受け入れるルートとしては、技能実習生や留学生等のすでに日本にいる外国人を特定技能外国人として受け入れる場合、そして現在海外で暮らしている外国人を特定技能外国人として来日させて受け入れる場合の2つがある。どちらのルートになるかによって、手続きの流れは大きく変わるが、概して海外から受け入れる場合の手続きは、日本にいる外国人を受け入れる場合よりもやや複雑になっている。
上記の手続きの種類、ルートをまとめたものが以下の図になる。
日本側で必要な手続きについては、日本にすでに在留している外国人の場合は「在留資格変更申請」を行うこととなる。海外にいる外国人の場合は「在留資格認定証明書交付申請」を行うことになる。
日本に在留している外国人は原則、全員が何かしらの「在留資格」を有している。「在留資格」は「なぜ(何のために)日本にいるのか」を示すものである。例えば留学生であれば「留学」の在留資格、日本人と結婚している外国人であれば「日本人の配偶者等」などである。つまり日本に在留している目的または理由によって在留資格は異なっている。
日本にすでに在留している外国人を特定技能として受け入れる場合には、すでに持っている在留資格を「特定技能」へと変更する手続きとなる(そのため「在留資格変更申請」である)。一方、まだ日本におらず海外にいる外国人を受け入れる場合は「特定技能」という在留資格を新規で取得する必要がある。
日本側での手続きの流れ
下記では、日本側での手続きの流れについて見ていく。まずは、すでに日本にいる外国人を受け入れる場合の流れについてである。
①日本にいる外国人の受け入れ手続き
特定技能外国人となるには当該外国人が「技能評価試験および日本語試験の合格していること」または「技能実習2号を良好に修了していること」のどちらかの条件を満たしている必要がある。また手続きに先立って、特定技能外国人を受け入れる企業と当該外国人が雇用契約を締結、また契約内容や雇用条件についての説明を行う「事前ガイダンス」および当該外国人の健康診断を済ませておくことが必要だ。
以上のことが完了した時点で、受け入れ企業がある地域を管轄する地方出入国在留管理局に対して「在留資格変更申請」を行う。申請の審査が終了し、無事に在留資格が下りたら(在留資格が下りると「在留カード」が当該外国人に渡される)、住民登録、口座開設、住宅の確保そして生活オリエンテーション等の様々なサポートを実施し、実際の就労開始となる。
②海外にいる外国人の受け入れ手続き
続いて、海外にいる外国人を受け入れる手続きについて見ていく。
①との相違点としては、下記の点である。
・地方出入国管理局へ行う手続きは「在留資格変更申請」ではなく「在留資格認定証明書交付申請」となる
・在留資格の審査終了後に、「在留資格認定証明書」が申請人である受け入れ企業に交付される。交付された証明書は海外にいる外国人へと送付される。外国人が受け取った証明書を当該国にある日本大使館・総領事館へと持っていき、査証(ビザ)の申請を行う。
・査証(ビザ)の申請修了後に、証明書の発行から3カ月以内に日本へ入国し、その際に在留カードを受け取る。
①の場合は申請の主体は日本にいる当該外国人本人が行うことが可能であるが、②の場合は受け入れ企業が原則として申請を行う。
外国人の出身国での手続きの流れ
続いては、外国人の出身国での手続きの流れについて見ていく。ここでは2021年2月15日に制度が改正されたベトナムについて取り上げたい。
改正されたポイントとしては、受け入れ予定のベトナム人は、あらかじめベトナム政府から交付される「推薦者表」を申請し、日本側で行う在留資格手続きの際に地方出入国管理局に対して提出することが必要となった。この推薦者表は当該ベトナム人が海外での就労についてベトナム側の手続を完了したことをベトナム政府が証明する文書である。
この改正ポイントを踏まえて、日本側の手続き同様に日本にいるベトナム人の場合、海外にいるベトナム人にいる場合に分けて見ていく。
①日本にいるベトナム人の受け入れ手続き
ベトナム人本人は「駐日ベトナム大使館」にて「推薦者表」の発行申請を行う必要がある。この申請はベトナム人本人の他に、受け入れ企業や登録支援機関が代わりに行うことも可能である。発行された「推薦者表」は「在留資格変更許可申請」の際に地方出入国在留管理局に対して提出することが必要である。
②海外にいるベトナム人の受け入れ手続き
ベトナム人が海外にいる場合は「推薦者表」の発行申請を行う先は「ベトナム労働・傷病兵・社会問題省 海外労働管理局(DOLAB)」となる。発行を受けた「推薦者表」は受け入れ企業が日本で行う「在留資格認定書交付申請」の際に地方出入国在留管理局に対して提出が必要になる。そのため、ベトナム人は「推薦者表」を日本の受け入れ企業へと送付する必要がある。ちなみにこの「推薦者表」の発行申請は、DOLABよりに定を受けた送出機関を仲介して行われることになる。
まとめ
以上、特定技能外国人を受け入れる場合の手続き全体について現状をまとめた。本制度は始まって2年となるが、今後日本と送り出し国との協議により制度がさらに改正される可能性もある。また先にも述べたが、中国からの受け入れ制度はまだ固まっておらず、今後決定される見通しである。今後も本レポートでは情報を随時まとめて発信していく予定だ。
尚、最後に特定技能外国人を受け入れる際の重要な事項について述べたい。先にも述べたが、特定技能の受け入れ対象となっている分野では、外国人の労働力があってこそ事業が成り立っている場合も多い。外国人労働者は数ある海外の国の中から、日本を選んで入国してくる。そのために私たちは「外国人から選ばれる国・会社」となるための取り組みを怠ってはならない。制度で定められた支援以外にも、外国人がより働きやすい、住みやすい環境を整えるための取り組みを今後も続けていく必要があるだろう。
【関連記事】ベトナム人の受け入れ・特定技能についてはこちらの記事もご覧ください。
ベトナム市場の情報収集を支援します
ベトナム市場での情報収集にお困りの方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
VietBizは日本企業の海外事業・ベトナム事業担当者向けに市場調査、現地パートナー探索、ビジネスマッチング、販路開拓、M&A・合弁支援サービスを提供しています。
ベトナム特化の経営コンサルティング会社、ONE-VALUE株式会社はベトナム事業に関するご相談を随時無料でこちらから受け付けております。