2025年3月12日、ベトナム最大手民間企業Vingroup(証券コード:VIC)は子会社「VinEnergo」を設立し、資本金2,000億円(約2,0000億ドン)規模で電力分野に参入した。VinEnergoは主に再生可能エネルギー(太陽光・風力)とエネルギー貯蔵システム(BESS)の開発を担い、VinFastやVinESなど同社の製造拠点への電力供給を軸に事業を展開する。初期案件として、ハティン省・ブンアン経済区において43MWpの屋根置き太陽光発電と45MWhの蓄電池を導入し、年間約5,000万kWhを供給、二酸化炭素排出を年間3万3,000トン削減する計画である。
同社は再生可能エネルギーを「不動産事業の基盤」と位置づけ、工業団地やスマートシティ開発と一体的に推進する。これは、電力不足が深刻化するベトナムの産業インフラにおいて、安定供給を自ら確保する戦略であり、特にハイテク製造やデータセンターなど電力集約型産業の誘致に不可欠とされる。ベトナム政府の電力計画PDP8や脱炭素目標とも整合し、エネルギー安全保障、グリーン成長、FDI誘致に直結する動きである。
背景として、2023年のベトナム北部では電力不足により大規模停電が発生し、工業団地における生産が停止するなど、供給不安が投資環境の制約となってきた。一方で南部は再エネ電源の出力抑制が続き、送電網整備が遅れている。こうした状況下、Vingroupが独自に電源・送電網・蓄電を組み込むことで、「電気のある土地」という付加価値を提供し、不動産開発の成長を加速させる意義は大きい。
さらにVinEnergoはベトナム国内にとどまらず、インドネシア、フィリピン、インドへの展開を計画しており、再エネ需要の高い新興国市場で事業拡大を狙う。グローバル水準のESG基準を満たす電力供給能力は、半導体工場やデータセンターといった外資の新規投資呼び込みに直結し、国際的な資金調達にも有利に働くとみられる。今後の課題は、ベトナム国内での系統接続許認可や電力取引制度(DPPA)の整備であり、制度設計と市場メカニズムの確立が事業拡大の成否を握る。
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