PDP8改正版の承認
2025年4月15日、ブイ・タイン・ソン副首相は、決定768/QD-TTgに署名し、ベトナム第8次国家電源開発計画(PDP8)の改定案を承認した。
PDP8は2023年5月15日に承認された。今回の改定では、以下の4つの原則が重視されている:
(i)実現可能性が高いこと、(ii)エネルギー安全保障を確保すること、(iii)地域間のバランスとエネルギー源のバランスを取ること、(iv)2025年の経済成長率を8%以上、2026~2030年に10%以上を目指し、国民の生活需要に対応できること。

発展の方針
改正版では、再生可能エネルギー源(風力発電、太陽光発電、バイオマス発電など)からの電力源の最大化を進め、再生可能エネルギーの電力源および生産される電力の割合を増加させることが方針とされている。具体的には、陸上・沿岸・洋上の風力発電、太陽光発電、特に水上太陽光発電の開発を推進する。これらの推進は、電力網の容量、適正な送電コストに基づき、電力システム全体の安全な運用および経済性を確保しつつ、既存の送電インフラを最大限に活用することと結びつけて行う。また、既存の電力網インフラの最大活用を目指す。
2030年までに、陸上および沿岸の風力発電の総設備容量は26,066~38,029MWに達する計画である(ベトナムの技術的ポテンシャルは約221,000MW)。風力発電は、良好な風況と経済的に厳しい条件がある地域に優先的に設置される。
ベトナムの洋上風力発電の技術的なポテンシャル(約60万 MW)を最大限に活用し、電力および新しいエネルギー源を生産する。2030~2035年における洋上風力発電の総容量は6,000~17,032 MWを計画しており、2050年には113,000~139,097 MWを目指す。新しいエネルギー源としての洋上風力発電の容量は、2035年には約15,000 MW、2050年には約240,000 MWを計画している。
ベトナムの太陽光発電のポテンシャルは約963,000 MWであり、2030年までに太陽光発電(集光型および屋根置き太陽光発電)の総容量は46,459~73,416 MWに達する見込みである。2050年には293,088~295,646 MWに達することが計画されている。
また、バイオマス発電、廃棄物発電の開発を推進し、木材の加工品などを活用することが奨励されている。2030年までにバイオマス発電の総容量は1,523~2,699 MW、廃棄物発電は1,441~2,137 MW、地熱発電およびその他の新しいエネルギー源は約45 MWを計画している。2050年までには、バイオマス発電は4,829~6,960 MW、廃棄物発電は1,784~2,137 MW、地熱発電および新しいエネルギー源は約464 MWを計画している。
ベトナムの水力発電は、全体で約40,000メガワット(MW)のポテンシャルがあるとされる。この能力を経済的かつ技術的に最大限に活用しながら、環境保護や森林の保全、水源の安全も確保して進めていく計画である。具体的には、2030年までに小型水力発電も含めた水力発電の総設備容量を33,294~34,667MWに増やし、さらに2050年には40,624MWまで拡大することを目標としている。
留意すべきポイント
本章では、留意すべきポイントを解説する。
電力貯蔵源
2030年までに、揚水発電所(総容量は約2,400~6,000 MW)を開発することが予定されており、2050年には容量が20,691~21,327 MWに達する計画である。これにより、負荷調整、予備容量、および大規模な再生可能エネルギーの統合が支援される。
蓄電池の開発は、再生可能エネルギーと組み合わせて、風力発電および太陽光発電の電力源近くまたは需要が集中している電力網周辺でなされる。2030年には10,000~16,300 MW、2050年には95,983~96,120 MWを計画している。
原子力発電
2030~2035年には、ニントゥアン1号機と2号機を運転開始し、4,000~6,400 MWの規模に達する計画。2050年までに、8,000 MWの原子力発電所が追加される必要があり、需要に応じてさらに増加する可能性がある。
石炭発電
2030年までに、運転中の発電所および建設中のプロジェクトの総容量は約31,055 MWに達し、建設中の5つのプロジェクト(4,360MW:ナズオン II、アン カーン – バクザン、ブンアン 2、クアン チャック 1、ロン フー I)は早急に完成させる予定である。3つのプロジェクト(5,300MW:ナムディンI、ソンハウII、ヴィンタン3)については、活動資金を集めることが困難であるため、商工省は規定に沿った解決策を提案するために投資家と協議・交渉を続ける。2050年までに発電に石炭は使わず、バイオマス/アンモニアのみを使用するように完全に切り替え、総発電容量を25,798MWにすることを目標としている。
天然ガス発電
2030年には、国内の天然ガスを使用する発電所の総容量は10,861~14,930 MWを計画している。2050年には7,900 MWが国内で使用され、7,030 MWは水素への完全転換が見込まれている。
液化天然ガス(LNG)
2030年までにLNG発電の総容量は22,524 MWに達し、2050年には、LNGと水素を併用する発電所は8,576~11,325 MWに達する計画である。
再生可能エネルギーの輸出
2030年までに、カンボジアへの電力輸出は約400 MWに増加させる計画。2035年には、シンガポール、マレーシアなどの地域へ約5,000~10,000 MWの電力を輸出し、2050年には10,000 MWに達する計画である。
電力源構成
2030年までに、国内向けの電力需要を満たす発電所の総容量は183,291~236,363 MWとなり、その中で、風力発電、太陽光発電、バイオマス発電、廃棄物発電、水力発電、原子力発電、貯蔵電池などが重要な割合を占める。2050年には、国内需要に応じた電力供給が774,503~838,681 MWとなる計画。
DPPAと新エネルギーの開発
DPPA(直接電力購入契約)や新エネルギーの開発は、再生可能エネルギーの総発電量の30~60%を占める予定。
おわりに
PDP8改訂版は、ベトナムの電力市場における再生可能エネルギーの導入を加速させ、持続可能なエネルギー供給を確保するための重要な道筋を提供している。特に風力発電や太陽光発電など、再生可能エネルギー分野への投資は今後ますます拡大し、外国投資家にとっては魅力的な投資先となる。ベトナムのエネルギー市場は、今後数十年にわたる成長が期待されるため、外国投資家は早期に市場に参入することで、長期的なリターンを得ることができる可能性が高いといえる。
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