ベトナムにおけるキャッシュレス決済の拡大
ベトナムでは、デジタル経済の規模が急速に拡大している。ベトナムにおける2021年のデジタル経済規模は210億USD(約2兆3700億円)に達し、東南アジア主要6か国の中でインドネシアとタイに続く3位となった。
特に、ベトナムにおける電子商取引(eコマース、EC)の市場規模は130億USD(約1兆4700億円)で、2025年には390億USD(約4兆4000億円)まで拡大すると予測されており、成長性に注目が集まっている。この統計はGoogle、Temasek、Bain & Companyが共同で実施した調査レポート「e-Conomy SEA 2021」にて発表された。
ベトナム政府も、デジタル経済の拡大に積極的である。「2025年までの国家DXプログラム」(決定No.749/QD-Ttg)によると、ベトナム政府は電子政府、デジタル経済、デジタル社会など3つの分野でDXの開発目標を設定しており、デジタル社会の分野において、電子決済口座の保有率を人口の50%以上(2030年までには80%以上)とするとしている。
ベトナム財務省によると、2021年時点でベトナム人口の85%は電子財布及び電子決済を利用している。特に、その中の71%は最低でも週に1回電子決済を行うという。
ベトナムで人気の電子決済アプリであるViettel Pay, MoMo, AirPayなどは保険の購入・支払い、公共料金、電話代、インターネット・電気・水道料金、学費、飛行機チケットなど包括的な支払いサービスを提供している。また、それらのアプリはShopee, Lazada, Tiki などの大手ECサイトとも連携している。
ベトナムでは過半数が現金利用機会が減少
ベトナムでは、キャッシュレス決済が著しく成長しており、消費財・小売業界に多くの可能性をもたらしている。
Visaベトナムが2023年に実施した調査によると、前年よりも現金を持ち歩かなくなったベトナム人は約56%におよび、消費者が新しい金融技術を積極的に取り入れていること示している。
特に、X世代(1965年~1980年に生まれた世代)とY世代(1981年~1996年に生まれた世代)が、キャッシュレス決済の成長をリードしており、調査に参加した人の89%が、日常生活でキャッシュレス決済手段を活用していた。
QRコードと電子ウォレットは、ベトナムで最も多く利用されている決済方法の2つであり、ほとんどの小売店、コンビニエンスストア、食料品店やレストランが、これらの決済方法を推奨している。さらに、多くの小売業者が、Apple Pay、Samsung Pay、Garmin Payなどの技術を積極的に活用しており、顧客に新しいショッピング体験を提供している。
今後の展望
Visaベトナムによると、ベトナムは、東南アジアで最も多くの電子決済の新規ユーザーを獲得しているトップ市場の1つであり、5人に1人以上が定期的に電子決済を使用しており、そのうちの大部分はX世代や高所得層である。
電子決済やQR支払いなどのキャッシュレス決済は、消費者に便利で迅速な支払いを提供する。現金を持ち歩く必要がなくなることで、時間の節約のほか、現金の紛失・盗難リスクを回避できる。このような便利な支払い方法は、ベトナムのB2C販売の拡大に貢献している。