ベトナム・ハノイは世界で最も大気汚染が深刻な都市となった
スイスの空気室事業会社の調査によると、2024年2月、ハノイは世界で最も大気汚染が深刻な都市となった(2位サラエボ、3位ダッカ)。ハノイ市の大気中の主な汚染物質はPM2.5(微小粒子状物質)で、2月2日の濃度は191.7µg/m3と、世界保健機関(WHO)が推奨する年間平均の許容濃度の38倍にも上っている。
ハノイで大気汚染が深刻な理由の一つに、交通渋滞が挙げられる。ハノイでは、急速な経済成長に伴い、自動車やバイク利用が急増し、慢性的に交通渋滞が発生している。交通渋滞解消に向けて、2003年に「2020年ハノイ交通計画」が策定され、中国政府の融資を受け、2021年にハノイで都市鉄道が開通した。ハノイ中心部のドンダー区カットリン駅からハドン区イエンギア駅まで、南西に約13キロメートルの路線を走っている。
今回は、深刻さを増すハノイでの交通渋滞・大気汚染への警鐘と、公共交通への投資推奨について紹介する。
ハノイ市は交通渋滞で毎年20~30億ドルの損失が発生している
ハノイ市は、交通渋滞により毎年約20~30億ドルの損失が発生しているとの試算が発表された。ブー・ミン・クオン教授(リー・クアンユー行政アカデミー)の試算によるもので、ハノイにおける交通渋滞は深刻な状況であり、移動時間の増大や過剰な燃料消費、CO2排出量増加、市民の健康への悪影響をもたらしている。
ハノイ市の統計によると、人口は833.1万人であるが、非居住労働人口を含めると約905.7万人となる。さらに2030年までには、約1,141万〜1,195万人に増加すると予測されている。自家用車両は約796万台(自動車110万台、自転車とバイク686万台)で、年間約4~5%増加している。しかし、計画されている交通用地の面積は約20-26%である一方で、現在は約12.13%にとどまっている。
交通用地の面積の増加率は年間0.35%であり、首都の交通車両の増加に追い付いていない。そのため、交通渋滞が頻発して市民の移動や事業への障害となっている。
公共交通の専門家は、ハノイの当面の優先事項として、都市鉄道開発の重要性と緊急性についての認識を高めるべきと述べている。さらに、都市鉄道を重要な経済部門と位置づけ、発展に向けて注力すべきとしている。
今後の展望
個人用の交通手段を制限するためには、市民に対して公共交通機関を提供することが不可欠である。便利かつ経済的、安全な公共交通機関の選択肢があれば、当然公共交通機関を選択する市民も多くなる。
交通セクターへの投資余地も大きい。CO2排出量削減に向けて、電動車両や環境に優しい交通手段への投資が進むことが見込まれる。さらに、外資企業による公共交通機関開発のノウハウや助言の提供も有益である。これらを通じて、個人用の交通手段から、公共交通機関への転換を促すことは、交通のみならず、市民生活の質を向上することにもつながる。