はじめに
ベトナム財務省が提案する、不動産から得られる利益に対する20%の課税は、不動産市場全体、特に短期投資家や外国人投資家に大きな影響を与えると予測されている。本報告書では、提案された税制度の概要、予想される影響、潜在的なリスク要因、そして日本人投資家が講じるべき対応策について、現地報道および公開情報をもとに分析する。
提案の背景とその内容
近年、ベトナムでは不動産価格の急上昇や、投機的な取引の増加が深刻な問題となっている。現在の制度では、不動産売却時には譲渡契約に記載された取引総額の2%を一律で納税する方式が採用されている。しかしこの方式は簡素である一方、実際より低い金額が契約書に記載されやすくなり、課税逃れや税収減、さらには市場の不透明化を招いている。
こうした問題に対処するため、財務省は「資本所得税」として、実際の譲渡益に対し20%を課税する方式を導入することを提案している。この新方式は、不動産の取得価格および関連コストが正確に把握できる場合に適用される予定である。

このように、売却者が売却中の不動産に関する費用を証明できれば、新しい課税方式を選択することで60 Mil VNDの節税効果を得ることができる。さらに、不動産が5 Bil VNDではなく4.8 Bil VNDでしか売れなかった場合でも、新しい方式を適用すれば所得がゼロとなり、税金を納める必要がなくなる。
市場への積極的な影響
本章は市場への積極的な影響について解説する。
短期投資家の撤退による投機抑制
課税の導入により、「波乗り投資」と呼ばれる短期売買目的の投機行動を抑制されることが期待されている。特に二次市場で頻繁に発生する個人投資家による売買は、課税負担の増加により慎重になり、過熱的な価格上昇にブレーキがかかると見られる。
また、売主が課税を避けるために取引価格を低く申告した場合、再販売時には実勢よりも低い取得価格で計算され、より高額の税金を支払うことになりかねない。このリスクを避けるため、買主も「二重価格(申告価格と実際価格)」に同意しにくくなり、結果として価格の透明性が向上し、バブル的価格上昇の抑制につながる。
税務の透明性と遵法意識の向上
譲渡益(売却価格-取得価格)に対する20%の課税が制度化されれば、虚偽の申告に対する厳しい罰則と合わせて、不動産取引における「二重価格」を排除する効果が期待される。これにより市場の透明性が高まり、仲介業者などによる不正な価格操作の余地が狭まり、国家の公平な税収確保にもつながる。
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