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ベトナムの包装容器市場:最新動向と今後の展望

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はじめに
この記事で伝えたいこと
  • ベトナムの包装容器の市場規模は人口増大、所得増加、小売形態の変化等に伴い拡大している。
  • ベトナムは安価な労働力が武器ではあるが、高い技術力が要求される商品の国内生産はまだ難しく、日系企業にとって参入の余地が大きい。
  • 製造原料のベトナム国内調達が進んでいくことも今後のポイントである。

はじめに:ベトナムの包装容器市場

(画像)ベトナムの包装市場規模の推移

本レポートでは、ベトナムの包装容器市場について解説・考察する。

一般的に国の経済が発展していくに連れて、包装容器の消費量は増加していく傾向にある。これは経済発展とともに人口が増加していくこと、トラディショナルトレード(伝統的市場)からモダントレード(スーパー・コンビニ等の近代的市場)への遷移が起こること、所得増加に伴い一人あたりの消費量が増加すること等が背景として挙げられる。ベトナムにおいても、これらの要因を背景として包装容器市場の市場規模が拡大している。今回は、ベトナムの包装容器について市場動向や今後の展望について解説していく。

ベトナムの包装容器市場が有望な3つの理由

本章では、ベトナムの包装容器市場が有望である3つの理由を考察する。

ベトナム人の消費支出額の増加

(画像)ベトナム人の消費支出額の総計の推移

ベトナム人が消費に支出する金額は年々増加傾向にある。この背景には①人口の増加、および②一人当たりの収入の増加 がある。人口については2023年中に1億人を突破する見込みであり、また収入についても付加価値の高い産業の発展により、特に中間層(1日の可処分所得が1250円以上)の伸長が目覚ましい。

トラディショナルトレードからモダントレードへの移行

(画像)トラディショナルトレードとモダントレード

小売業態の近代化も、包装容器市場に大きな影響を与えている。これまでベトナムでは左図のようなトラディショナルトレードと呼ばれる伝統的市場での食品等の販売が一般的であった。このような市場では食肉等の生鮮食品も野ざらしで置かれており、消費者はその場で自分の好きな量を量り売りしてもらい、ポリ袋に入れて持ち帰る。

一方で近年急速に拡大しているのは、右図のようなモダントレードと呼ばれる近代的スーパー、コンビニでの販売である。ここでは、すでに食肉が切り分けられ、パックに包装された状態で並んでいる。このモダントレードの普及が、特に食品分野における包装容器の消費量を増加させる大きな要因となっている。

ベトナムの小売形態については以下の記事で紹介しています。

EC市場の拡大

(画像)ベトナムのデリバリー風景 (出所)VnExpress https://vnexpress.net/

最後の重要な成長要因はEC市場の拡大である。今ではGrab等のフードデリバリーが日本以上に一般的に利用されており、日用品の販売もTikiやShoppee等で購入することが一般的になっている。ベトナム商工省によると、ベトナムのEC市場の成長率は年間30%となっており、2025年にはECの市場規模は50億USDに達すると見込まれている。こうしたEC市場の成長は、商品を梱包するための大きな包装容器の需要を生み出している。

ベトナムのECについては以下の記事で紹介しています。

ベトナムの包装容器市場の発展における注目ポイント

ここまでベトナムの包装容器市場を成長させる主要な成長要因を概観してきた。以下では、市場が今後どのような方向で成長していくかについて解説していく。

ポイント①:包装容器製造の技術力の向上

包装資材の中でも、一層のフィルムから作られるプラスチックパッケージや、シンプルな段ボールなどは高い技術力は必要とされず、ベトナムでも多く製造されている。一方で真空パックや医薬品・化学品の包装に用いられる容器の製造には、液体・気体が漏れないように多層フィルムによって構成される等の高い技術力が必要とされるため、ベトナムで製造が可能な企業は非常に少ない。そのため、こうした高いレベルの包装資材では韓国・欧米等の企業がベトナム市場を握っている。

こうした状況下で、ベトナム企業も外国企業と協力して商品開発を行ったり、M&Aにより高い技術力を持つ外国企業と強い協力関係を築いたり等の施策を行っている。今後、ベトナムにおける包装資材の製造技術がどこまで発展するのかが、注目すべきポイントである。

ポイント②:原料の国内調達

ベトナムでは林業は主要産業の一つであるため、段ボールや紙包装の原料となる紙原料は国内調達が容易である。一方で石油化学産業や金属精錬産業はベトナムでは十分に発展していないため、プラスチック等の樹脂原料やアルミ原料は主に海外からの輸入に頼っている。

しかし、近年ではこうした分野でも外資企業とベトナム企業が協力して新たな製造拠点を立ち上げる等の動きが見られる。今後、資材の原料調達が、グローバル経済におけるベトナムの包装容器市場の競争力向上において、鍵となるだろう。

ベトナムのプラスチック市場については以下の記事で紹介しています。

まとめ

本記事では、前半では需要の面からベトナムの包装容器市場を概観してきた。消費支出の増大、モダントレードの拡大、およびEC市場の拡大の3つが市場を成長させる要因となっていることを確認した。

まだ後半では主に製造の面から、ベトナムの包装容器市場が今後成長していくにあたって、製造技術と原料調達の2つのポイントを解説した。

特に製造技術の面では、日本企業も高い技術力を有しており、ベトナム市場においても十分な競争力がある。特に医薬品に使用される高品質の包装は日本製の商品が輸入されているケースも多い。今後、日本企業にとってベトナムの包装容器市場は有望なマーケットであると考えられえるだろう。

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