はじめに
2026年第1四半期、ベトナムのGDP成長率は7.83%となり、対ベトナム外国直接投資の総登録額は152億USD、前年同期比42.9%増となった。また、実行ベースの外国直接投資額は54.1億USDに達し、2022〜2026年の同期間で最高水準を記録した。これは、ベトナム市場が引き続き拡大しており、外資流入も力強く続いていることを示している。
しかし、ベトナム進出を検討する投資家にとって、成長指標だけでは投資判断には不十分である。多くの進出計画は、準備段階から方向性を誤ることがある。その理由は、市場仮説が集計データだけをもとに作られている一方で、実際の展開段階では、ターゲットセグメントの誤認、実行計画の不備、現地パートナーの能力不足など、現場特有の課題に直面するためである。
そのため、ベトナム市場調査は、投資家が市場参入方法を選択する前に実施すべき必須の確認プロセスと位置づける必要がある。本記事では、ベトナム進出前に確認すべき主要な調査項目を整理する。
ベトナム市場調査とは何か、なぜ日本企業は進出前に実施すべきか
ベトナム市場調査とは、投資家がベトナム市場に参入する前に必要な条件を確認するプロセスである。調査の目的は、市場需要の実態を確認し、競争環境を評価し、販売チャネルや現地パートナーを通じた実行可能性を検証することにある。
ONE-VALUEの大手クライアントの一社は、過去にペット用品店分野への事業拡大を検討していた。しかし、同社はペット市場規模やペット飼育世帯数といった公開データだけでは意思決定できなかった。必要だったのは、進出予定地域における実際の需要、住民の関心度、ペット関連商品・サービスに対する消費行動であった。そのため、同社はONE-VALUEの市場調査サービスを活用し、予定地域の住民を対象に調査を実施した。調査結果は、事業拡大を決定する前に、当初の仮説を再検証する材料となった。

したがって、ベトナム進出前には、投資家は市場機会、実行可能性、発生しうるリスクを検証できるだけ
ベトナム進出調査の方法:市場参入前に確認すべき主要調査項目
ベトナム進出前には、調査テーマを具体的な項目ごとに分けて実施する必要がある。調査項目を分けることで、確認すべき内容を明確化し、準備段階で重要な論点を見落とすリスクを抑えることができる。
- 第1グループ:市場調査
市場規模、成長率、業界構造、関連規制、流通チャネルの特徴を確認する。目的は、市場に十分な潜在性があるか、どのセグメントを優先すべきかを判断することである。 - 第2グループ:競合調査
ベトナムで事業を展開している主要競合、販売商品、価格設定、流通チャネル、顧客へのアプローチ方法を確認する。この調査により、競争圧力と市場の空白領域を把握できる。 - 第3グループ:消費者調査
ターゲット顧客が誰か、どの基準で商品を選ぶのか、価格感度はどの程度か、どの情報チャネルを通じて購買判断を行うのかを明らかにする。これは、商品設計、価格設定、広告・広報方針を構築する基礎となる。 - 第4グループ:企業・パートナー・現地調査
企業データの検証、パートナー能力の評価、店舗・販売拠点・展開予定地域での実地確認を行う。目的は、投資家が市場参入を判断する前に、実行条件を確認することである。

ベトナム市場構造分析
投資家は、対象業界の生態系と運営メカニズムを明確に把握する必要がある。市場構造分析は、定量データを提供するだけでなく、ベトナム市場における業界の運営ルールや実際の参入障壁を見極めるうえでも重要である。
主な分析項目は以下の通りである。
- 市場規模と成長率
市場全体規模、参入可能市場、自社が現実的に獲得可能な市場規模を確認し、年平均成長率を分析する。また、所得上昇や人口構造の変化など、マクロ指標に基づいて市場変動を把握する。 - 業界バリューチェーン
原材料供給、製造、流通に至るまで、業界バリューチェーンの各構成要素を分析する。あわせて、重要な関係者を特定し、最も競争優位を発揮しやすい参入ポイントを見極める。 - 法規制・政策環境
政令、技術基準、欧州連合・ベトナム自由貿易協定、環太平洋パートナーシップ協定などの通商協定に基づく制度を確認する。特に、外資出資比率や業種特有の事業許可条件には注意が必要である。 - 流通チャネル構造
伝統的小売チャネルと近代的小売チャネル、電子商取引の比率と特徴を分析する。ベトナムでは、多くの業界で伝統的小売チャネルが依然として強く、先進国市場とは異なるアプローチが求められる。
この分析の核心は、投資の実行可能性を評価し、優先すべきターゲットセグメントを選定することである。投資家は、海外市場で成功した運営モデルをそのままベトナムに持ち込むという誤りを避ける必要がある。例えば、電子商取引が急成長している一方で、多くの地域では、店頭での体験や販売員による説明が購買行動を左右する重要な要素であり続けている。
市場構造を精緻に分析することで、企業は法規制リスクやセグメントの飽和を早期に把握できる。これは、その後の競合調査や消費者調査を正確に進めるための基礎データとなる。
ベトナム競合調査・分析
投資家は、ベトナム市場で実際に存在感を持つ競合企業を正しく理解する必要がある。競合調査では、主に競合企業、注力セグメント、主力商品、価格帯、販促施策、販売チャネル、広告・広報メッセージを確認する。目的は、各競合の競争ロジックと市場における実際の競争圧力を把握することである。
例えば、ある業界では「品質で競争している」と一般的に認識されていても、詳しく調べると、実際には業界首位企業が代理店への割引率や販売拠点の展開スピードによって市場シェアを維持している場合がある。投資家が商品比較だけを行い、販売構造を調査しなければ、最初から戦略がずれる可能性が高い。
そのため、投資家は競合企業の元従業員・現従業員、販売代理店、ディストリビューター、サプライヤーなどから一次情報を得る必要がある。こうした情報源は、競合が実際にどのように運営しているかを明らかにする。具体的には、割引水準、代理店維持の方法、拡大スピード、運営上の強み、外部から見えにくい弱点などである。
ベトナム競合調査・分析の結果により、投資家は市場の空白領域を見つけ、競争が激しい地域を把握し、より適切なポジショニングを選択できる。競合を理解しなければ、ベトナム市場に適した価格戦略、商品戦略、販売チャネル戦略を設計することは難しい。

ベトナム消費者調査とベトナム現地調査
ベトナム進出前には、投資家は二つの点を明確にする必要がある。第一に、顧客がどの基準で購入を決めるのか。第二に、販売現場で市場がどのように動いているのかである。
ベトナム消費者調査から得られる知見は、受け入れられる価格帯、ブランド選択の理由、購買意思決定に影響する情報チャネルを確認するうえで重要である。
例えば、同じ食品・飲料カテゴリーでも、都市部の若年層はデザイン、利便性、新しい体験を重視する場合がある。一方で、家族向けに購入する層は、価格、容量、慣れ親しんだブランドをより重視することがある。
一方で、報告書だけを読み、現場を確認しないことで誤った意思決定が生じることも多い。例えば、調査上は顧客が品質に関心を持っていると示されていても、実際の売り場では、価格、包装、販売員の説明が購買判断に強く影響している場合がある。そのため、投資家は商品、価格、参入チャネルを決定する前に、現地で販売可能性を確認する必要がある。
消費者調査と現地調査を組み合わせることで、投資家はベトナム進出前に、市場需要と販売現場の実態をより深く理解できる。
外国投資家にとって、地理的・言語的な障壁により、現地市場への直接的なアクセスは容易ではない。そのため、現地の調査会社を活用することも有効である。ONE-VALUEは、ベトナム人材と日本人材が並行して調査・分析を行う体制を持ち、ベトナム市場を深く理解しながら、日本企業との円滑な連携も実現できる点に強みがある。
ONE-VALUEの市場調査サービスはこちらから確認いただきたい。
ベトナム企業調査
ベトナム進出前には、投資家は提携予定の企業やパートナーのデータを確認する必要がある。この調査では、財務状況、商取引、輸出入活動などを中心に確認する。目的は、その企業がどの程度の水準で事業を運営しているのか、予定する提携計画に適しているのかを判断することである。
これは、意思決定前に主要リスクを把握するためにも必要なステップである。例えば、ある企業が広い販売ネットワークを持っていると説明していても、取引データや実地確認によって、実際にはベトナム各省・市への展開範囲が限られていることが分かる場合がある。投資家が事前に確認しなければ、この認識のずれは市場参入計画に直接影響する。
法務リスクについては、投資家は事前に市場アクセス条件と投資予定業界に適用される許認可を確認する必要がある。政令31/2021/ND-CPによれば、外国投資家は、ベトナム国内投資家と同様に市場へアクセスできる。ただし、市場アクセスが制限される業種・分野を除く。また、条件付きで市場アクセスが認められる業種・分野については、投資家は対応する条件を満たさなければならない。
さらに、2026年1月1日から個人データ保護法が施行されているため、顧客データ、従業員データを収集するモデル、またはデジタル基盤上で運営される事業モデルでは、追加の法令遵守義務を確認する必要がある。法務リスクは、投資家が必要な許認可を取得していない場合、遵守条件が十分に整っていない段階で商品を展開する場合、またはパートナーとの契約において法的責任の分担が明確でない場合に発生しやすい。
ベトナムにおける法令遵守リスクについては、こちらからVietbizの記事も参照されたい。
ベトナム市場参入戦略調査:調査結果を事業判断へつなげる方法とONE-VALUEの役割
ベトナム市場参入戦略調査の目的は、調査結果を具体的な事業判断へ転換することである。調査後、投資家は、どのセグメントに参入すべきか、どの商品を先に投入すべきか、どの価格帯を採用すべきか、どの販売チャネルを選ぶべきか、どの地域を優先すべきかを明確にする必要がある。
そのため、各調査項目は以下のように、一つの分析枠組みの中で整理する必要がある。
- 市場調査:市場規模と成長トレンドを把握する。
- 競合調査:市場における競争圧力を評価する。
- 消費者調査・現地調査:販売可能性を確認する。
- 企業調査:パートナーの適合性を検証する。
これらの情報を組み合わせることで、投資家はより実行可能性の高い市場参入計画を構築できる。
ONE-VALUEは、投資家がベトナム進出前に必要とする各種調査を支援している。ONE-VALUEの市場調査範囲は、投資家の戦略目的に応じて設計され、文献調査、アンケート調査、インタビュー、現地確認、専門家ネットワークの活用まで幅広く対応している。
多層的な市場調査を組み合わせることで、投資家は複数の情報レイヤーから判断材料を得ることができる。これは、机上の情報と実際の実行条件との間にあるギャップによって、投資判断が誤った方向へ進みやすいベトナム市場において、特に重要である。
まとめ
ベトナム進出前には、投資家はベトナム市場調査を、意思決定前の必須プロセスと捉える必要がある。公開データだけに依存すれば、市場需要、競争圧力、パートナー能力、実際の展開条件を誤って評価するリスクがある。
ONE-VALUEの価値は、多層的な調査を実施し、その結果を一つの統合的な分析枠組みに接続できる点にある。このアプローチにより、投資家は市場をより現実に近い形で把握し、実行可能性の高い市場参入計画を構築できる。
ベトナム進出を準備している投資家、または事業拡大前に市場仮説を再検証したい企業は、こちらから情報を入力いただければ、ONE-VALUEより相談対応が可能である。
ONE-VALUE株式会社(ONE-VALUE Inc.)について
ONE-VALUEは、1,000社以上の日本企業のベトナム進出を支援してきた総合コンサルティングファームです。
- 市場調査・戦略立案: 深い市場理解に基づくロードマップ策定。
- M&Aアドバイザリー: ターゲット選定からPMIまでの一貫支援。
- 販売・マーケティング代行: 代理店開拓から実務運用まで。
- 撤退支援(事業整理・清算支援): 事業整理、法人解散、清算手続などのサポート。
- エキスパート・プラットフォーム: 32分野5,000名以上の専門家への直接アクセス。詳細については、こちらよりご確認いただけます。
ベトナム市場への参入や事業拡大・撤退に関するご相談は、こちら(お問い合わせフォーム)から受け付けております。
また、最新の経済レポートについてはVietbiz(ベトナム経済情報メディア)をご参照くださいませ。
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