ベトナムにおけるコールドチェーン市場の動向
近年のベトナムでは、人口増加、所得水準の向上に伴う食生活の多様化及び EC 市場の拡大等により、温度管理を伴うコールドチェーン(冷蔵・冷凍輸送)物流サービスへの需要が高まっている。
ベトナムのコールドチェーンは、技術開発の恩恵を受けて近年になって顕著に発展している。ベトナムでは1990年代半ば頃に最初の商業用冷蔵倉庫が建設されたが、業界の歴史は僅か20年程度しかない。東南アジア地域の他の国々と比べて、ベトナムのコールドチェーン市場は未成熟であり、発展可能性を秘めている分野である。
ベトナムのコールドチェーンの市場価値は、2019年に約1億6900万ドルに達した。水産加工と消費者需要の伸びにより、2025年には2億9500万ドルに達すると予測されている。(出典:Cushman &Wakefiel Report(2022年))
しかし、現在は投資コストの参入障壁から需要が供給を大幅に上回っている状況である。ベトナムの生鮮食品市場では、前提としてある程度の損失が許容されており、短期間で農場から販売店に輸送されている。そのため、ベトナムにおいて将来的により高品質での輸送・保管が普及するためには、コールドチェーンへの投資は単なるコストではなく投資であるという認識が必要である。
ベトナムで東南アジア最大級の冷蔵倉庫システムが稼働開始
12月23日、New Era Cold Storage Joint Stock Company(NECS冷蔵庫システム)は、ベトナム・ロンアン省フーアンタン工業団地にて、冷凍倉庫プロジェクトの第1期竣工式ならびに第2期着工式を開催した。大規模かつ最先端の冷蔵庫システムが稼働を開始したことで、ベトナムの農業、水産業、物流産業への大きな貢献が期待されている。
NECS社ゼネラルディレクターのドゥオン・ミン・チャン氏は、NECS冷蔵庫システムは、ベトナムの冷蔵倉庫市場における最大規模の投資プロジェクトの1つであるとした。NECS社は、国際標準の物流システムならびに技術力への投資を通じて、顧客に最高のサービスを提供するとともに、国内外でトップのサードパーティーロジスティクス(3PL)パートナーになることを目指している。
NECS冷蔵庫システムは、東南アジアで最大規模かつ最先端の技術を有し、総面積は約4.3ヘクタールで、2つのフェーズに分けて計14万5000パレットの収容能力をもつ予定としている。第1期の現在は、3万パレット以上の収容能力と-18°Cから-20°Cの冷凍温度帯域を持ち、水産物、肉、果物、冷凍食品などの冷蔵商品を提供している。
第1期の冷蔵庫システムは、自動化倉庫搬送システム(ASRS)と冷蔵倉庫専用の管理ソフトウェア(WMS)を装備しており、荷物の保管と管理プロセスを自動的にスマートかつ正確に行うことができる。第2期では、NECS社は定温倉庫を含めたシステム拡充を行うことで、25℃から-18°Cまでの温度帯域での商品に対応できる予定である。
コールドチェーンはベトナム農水分野の発展に貢献
さらに、NECS社は保税倉庫の建設拡大を予定しており、主要な港の混雑を軽減させ、ベトナムの冷凍製品の輸出能力を向上させるとしている。コールドチェーン市場が発展することで、ベトナムの農産物や水産物分野における競争力がさらに高まることが期待されている。