1.はじめに
2025年、ベトナムのグリーン建築市場は、件数・規模の両面で過去最高水準に達し、大きな転換点を迎えた。認証取得物件数の増加にとどまらず、産業施設や大衆住宅、グリーンファイナンスと結び付いた質的な発展が顕在化している。カーボンニュートラル目標の推進と制度改革が進む中、グリーン建築は単なる環境配慮型プロジェクトではなく、中長期的な投資エコシステムを構成する戦略的要素として位置付けられつつある。こうした動きは、ESGを重視する日本企業にとっても重要な検討対象となっている。
2.グリーン建築市場、加速段階へ移行
2025年のベトナムにおけるグリーン建築市場は、建設・不動産分野における構造的変化を背景に、これまでにない成長を記録した。国際金融公社(IFC)が公表した「ベトナム・グリーン建築市場総覧2025」によると、2025年12月31日時点で、グリーン認証を取得した建物は累計780棟、延床面積は1,860万㎡に達した。

2025年単年では、新たに196棟が認証を取得し、前年比20%増となった。延床面積は440万㎡で、前年比15%増加している。これは過去最高の増加幅であり、グリーン建築が一過性のトレンドではなく、業界標準として定着し始めていることを示している。
特筆すべきは、成長が大都市の高級物件に限定されていない点である。住宅、産業施設、社会住宅など多様な分野へ広がりを見せ、運営コスト削減や建物のライフサイクル価値向上、資金調達力の強化といった実利的な要因が、市場拡大を後押ししている。ASEAN地域においても、ベトナムの市場規模は上位国に近づいており、日本を含む高いESG基準を求める外資誘致の基盤が整いつつある。
3.住宅と産業不動産が「グリーン化」を牽引
2025年の成長を主導したのは、住宅分野と産業不動産分野である。分譲マンションは引き続き最大の比率を占め、同年に認証を取得した建物の30%超を占有した。特にグリーン認証を取得したマンションの延床面積は前年比151%増と急拡大しており、住宅市場の回復とともに、認証取得が競争力強化の手段として活用されていることを示している。
産業不動産も重要な成長軸となっている。グリーン認証を取得した工場・倉庫は全体の28%超を占め、延床面積は前年比54%増加した。これは、電子・製造業を中心とする多国籍企業が、LEEDやEDGEといった国際認証を求めていることが背景にある。グリーン産業施設は、ベトナム企業がグローバルサプライチェーンに組み込まれる上でも不可欠な要素となりつつある。
さらに、データセンターや歴史的建造物といった新たな用途への認証適用も始まっている。社会住宅分野では、グリーン認証を取得した延床面積が前年比165%増となり、住宅全体の約11.7%を占めた。これは、持続可能性基準が高級分野にとどまらず、社会全体へ浸透し始めていることを示唆している。
4.グリーンファイナンスと制度整備が投資余地を拡大
市場拡大を支えるもう一つの柱が、グリーンファイナンスと制度改革である。2025年に公布された首相決定第21/2025/QĐ-TTgにより、グリーン分類基準が正式に整備され、EDGEやBRI(建物耐災害指数)などの認証を取得したプロジェクトが、グリーンローンやグリーンボンドへのアクセスを得やすくなった。
実例として、ベトナムの大手商業銀行であるVP銀行(VPBank、民間大手銀行)は、2025年9月に3億ドル(約450億円)の国際サステナブルボンドを発行し、そのうち2億ドル(約300億円)をIFCが引き受けた。資金は環境配慮型プロジェクトや中小企業支援に充てられ、グリーン建築への直接的な資金供給を後押ししている。
また、環境負荷低減に加え、気候リスクへの耐性も新たな評価軸として浮上している。バリア=ヴンタウ省のフーミーⅡ工業団地に立地するキングスパン工場は、ベトナムで初めてBRIでB評価を取得した。中部地域の大型リゾート開発においてもBRIの試行が進められており、市場は「規制対応としてのグリーン」から「リスク管理としてのグリーン」へと移行しつつある。この考え方は、長期視点を重視する日本企業の投資スタンスとも親和性が高い。
5.結論
2026年以降、ベトナムのグリーン建築市場は、需要拡大、政策支援、国際金融機関の関与を背景に、さらなる成長が見込まれている。日本企業にとって、本市場は単なる不動産投資の対象にとどまらず、ベトナム経済の持続可能な再構築プロセスに参画する機会を意味する。早期に制度、プロジェクト、現地パートナーへの理解を深めることが、中長期的な競争優位の確立につながる。
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