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環境・再生可能エネルギー

ベトナムのカーボンクレジット市場:制度整備の進展とビングループの戦略的な動き 

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1.はじめに

ベトナムでは、温室効果ガス削減に関する国際的なコミットメントを具体的な市場メカニズムへと転換する動きが進んでいる。国内カーボン取引所の設立を定めた政令第29号/2026/ND-CPの公布と並行し、国際基準に基づくカーボンクレジット事業に民間大手企業が参入し始めたことで、カーボン市場は政策構想段階を越え、実装フェーズに入りつつある。本稿では、制度面と企業動向を併せて整理し、日本企業にとっての市場構造と戦略的示唆を考察する。 

2.ベトナムのカーボンクレジット市場:制度設計から運用段階へ 

ベトナムのカーボンクレジット市場は、政令第29号/2026/ND-CPの公布により、制度的枠組みが明確化された。同政令は、温室効果ガス排出枠およびカーボンクレジットの登録、国内コードの付与、保管、所有権移転、取引、決済までを包括的に規定する初の法的文書である。運営主体としてベトナム証券取引所およびハノイ証券取引所(ハノイ)が指定された点は、カーボン市場を既存の金融インフラと接続し、透明性と標準性を確保する方針を示している。 

運用面では、同市場は2028年末までを試行期間とし、2029年以降に本格運用へ移行する段階的アプローチが採られている。試行期間中は取引関連手数料が免除され、企業の参入障壁を下げる設計となっている。この慎重な制度設計は、市場が未成熟な段階にあることを踏まえ、安定性と制度学習を優先する姿勢を反映している。 

中長期的には、ベトナムは国際的な自主的カーボンクレジット市場向けの供給と、将来的な国内排出枠制度に基づく内需市場の二本柱を並行して育成する方針である。これにより、カーボンクレジットは単なる環境施策ではなく、企業のコンプライアンス、コスト管理、ESG戦略に組み込まれる環境資産としての性格を強めていくと見られる。 

3.ビングループとカーボンクレジット市場:排出削減を経営戦略に組み込む動き 

制度整備が進む中、ビングループ(Vingroup、ベトナム最大の民間コングロマリット)は、カーボンクレジット市場への先行参入企業の一つとして注目されている。同グループは、電動バイクを手がけるビンファスト(VinFast)および充電インフラを展開するブイグリーン(V-Green)を通じて、二つのカーボンクレジット事業を公表した。これらは、ゴールド・スタンダード(Gold Standard)およびヴェラ(Verra)のVCSといった国際的に広く採用される基準に基づき登録されている。 

特に注目されるのは充電インフラ事業である。ビングループは2029年までに約6,000カ所の自動車用充電ステーションと62万口の充電ポートを整備する計画を掲げている。化石燃料から電力への転換により、年間約350万トンのCO₂削減が見込まれている。自主的カーボンクレジット市場における2025年の価格水準が1クレジット当たり4~6ドルであることを踏まえると、この削減規模は企業にとって新たな収益源となる可能性を示唆している。 

電動バイク事業においても、ビングループは販売台数、走行距離、排出削減量を継続的にモニタリングする手法を採用している。これは、カーボンクレジットを付随的な金融商品としてではなく、製品開発および市場拡大戦略と一体で位置付けていることを意味する。同グループの動きは、ベトナム企業が環境価値を事業モデルの中核に組み込み始めていることを象徴している。 

4.形成途上のカーボンエコシステムにおける日本企業の位置付け 

政策主導による制度構築と、民間大手によるプロジェクト創出が並行する現状から、ベトナムのカーボンクレジット市場は「制度が基盤を整え、企業が流動性を創出する」構造を形成しつつあるといえる。この過程において、日本企業は技術パートナー、戦略投資家、共同事業者として多様な関与の余地を持つ。特に、再生可能エネルギー、充電インフラ、排出量計測・管理技術、蓄電池、カーボンファイナンス分野は、日本企業の強みが生かされやすい領域である。 

中期的には、国内排出枠制度の本格導入により、カーボンクレジットは国際取引向けのみならず、国内コンプライアンス手段としての役割を強める見通しである。これにより、安定的な国内需要が形成され、生産・事業コスト構造の中でカーボンクレジットの重要性が高まる可能性がある。 

すでにベトナムで事業を展開する日本企業にとって、早期にカーボンエコシステムへ参画することは、グローバルなESG目標への対応と同時に、将来的な投資、M&A、合弁事業の基盤構築につながる戦略的選択となり得る。 

5.結論

ベトナムのカーボンクレジット市場は、制度整備と企業主導のプロジェクトが同時進行する形で、形成段階から成長段階へと移行しつつある。政策は市場の透明性と運用基盤を整え、ビングループのような大手企業は具体的な事業を通じて排出削減価値の商業化を進めている。日本企業にとって、形成途上のカーボンエコシステムにおける自社の位置付けを早期に見極めることが、ベトナムにおける長期的な投資戦略を構築する上で重要となる。 

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  • 市場調査(Market Research):ベトナムのカーボンクレジット政策、市場構造、国内取引所設立のロードマップ、および主要排出産業への影響を分析。 
  • ベトナム進出コンサルティング(Vietnam Expansion Consulting):エネルギー転換、EVインフラ、カーボンファイナンス分野におけるベトナム進出・事業拡大戦略をESG方針と整合させて支援。 
  • M&Aアドバイザリー(M&A Advisory):カーボンクレジット事業、再生可能エネルギー、充電インフラ、排出量計測技術分野における提携、合弁、M&A機会の発掘と実行支援。  

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