はじめに
ドライバーの職種では年々人手不足が深刻になっている。特に2020年から2021年 にかけては新型コロナによる巣ごもり需要を背景にドライバーの需要が増え、人材確保が各物流・ロジスティクス企業にとっては喫緊の課題となっている。そんな中、業界で注目を集めているのが「外国人材」である。すでに建設、介護、外食、製造といった人手不足が深刻な業界では、外国人材の受け入れが早くから進んでいた。特に2019年から開始された「特定技能」制度では14の業界が対象分野となり、技能実習制度に代わる新たな外国人材採用の形として注目されている。そんな中で物流・ロジスティクス業界ではどのような外国人材の受け入れが可能だろうか。
ドライバーの外国人材はどのような在留資格が必要なのか
外国人が日本に在留し、働くためには、必ず何かしらの「在留資格」が必要となる。必要な在留資格は職種によって異なっているが、ドライバーの場合はどうだろうか。
「特定技能」でのドライバーの受け入れは可能か?
2019年から始まった「特定技能」制度では、働き手不足の解消を目的として外国人材を14の分野で受け入れることが可能である。特定技能制度で受け入れ可能な分野は以下の分野である。
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材産業
- 産業機械製造業
- 電気・電子情報関連産業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
しかし、この中には「物流・ロジスティクス」は含まれていない。そのため、現状では特定技能制度ではトラックドライバーの受け入れはできない。
「技能実習」でのドライバーの受け入れは可能か?
技能実習制度の目的は、日本の進んだ技能、技術又は知識を開発途上地域等への移転することであるが、実際には働き手不足の解消を目的とした労働者受入れが目的となっている。ドライバーを技能実習として受け入れるには「技能実習2号」の移行対象職種としてドライバーが含まれる必要がある。
技能実習の仕組み
技能実習制度は大きく1号・2号・3号があり、それぞれ在留期間が決まっている。技能実習1号は1年の期間しか与えられないが、もし技能実習2号への移行対象職種に含まれていれば、さらに2年(合計3年)、もし技能実習3号の移行対象職種に含まれていれば、さらに追加で2年(合計5年)の受け入れが可能だ。
もしドライバーを技能実習として受け入れる場合であれば、まずは技能実習1号から受け入れることになる。しかし現状、技能実習2号への移行対象職種にドライバーは含まれていないため、1年で帰国することになってしまう。免許取得や育成期間を考えると、1年間しか日本にいれない人材をドライバーとして受け入れるのは現実的ではないだろう。
「高度人材」でのドライバーの受け入れは可能か?
「高度人材」とは一定レベルの専門知識・技能を有した外国人材を受入れることができる制度である。例としては建築分野における設計や積算の仕事、翻訳・通訳の仕事、ITエンジニア、介護福祉士を有する介護職員などが挙げられる。一方で専門的な技能・知識が必要とならない仕事、単純作業の仕事では、受け入れが認められない。
ドライバーについては、専門的な技能・知識が必要な仕事とはみなされず、「高度人材」としての受け入れはできない。ただし、例えばトラックの整備エンジニア等であれば、「高度人材」としての受け入れが可能になる場合がある。
どのような人材をトラックドライバーとして受け入れできるのか
ここまで、特定技能、技能実習、高度人材の制度でドライバーの受け入れの可能性を見てきたが、どの制度でもドライバーの受け入れはできないことがわかった。それでは、どのような形で外国人材をドライバーとして受け入れることができるのか
ドライバーとして受け入れ可能な人材は「身分に基づく在留資格」を有する外国人材
結論として、ドライバーとして受け入れ可能な人材は「身分に基づく在留資格」を有する外国人材である。「身分に基づく在留資格」とは、例えば「日本人の配偶者」や、「永住者」さらに「定住者」と呼ばれる、仕事によってではなくその方の婚姻状態や出生等による「身分」によって在留が認められている資格である。
ドライバーとして受け入れ可能な外国人材が意外と多い
日本に在留している外国人材の中で、「身分に基づく在留資格」を有する人数は意外と多い。
出入国在留管理庁が公表している資料によれば、2020年6月時点で日本に在留している2,885,904人の外国人の中で、57%の1,658,059人が「身分に基づく在留資格」を有している。外国人材というと「高度人材」、「特定技能」や「技能実習」などのいわゆる就労ビザに注目が集まりがちであるが、割合としては「就労ビザ」よりも「身分に基づく在留資格」を有する人の割合の方が多い。
外国人材をトラックドライバーとして受け入れる際のハードル
ここまで、外国人材を受入れ可能な在留資格の制度について解説してきた。ここからは在留資格以外の点で、どのようなハードルがあるのかを見ていきたい。
免許取得のハードル
まずドライバーとして必要な免許を、外国人材にも取ってもらう必要がある。しかし、この点は大きなハードルではない。
先ほど、ドライバーとして受け入れ可能なのは、日本人の配偶者や「永住者」等の「身分に基づく在留資格」を有する外国人であると説明した。このような外国人材はすでに長く日本に住んでいるケースが多く、普通自動車免許を有しているケースが多い。さらに2017年3月の免許制度改正以前に普通自動車免許を有していれば、「準中型」の車種も運転できることとなるため、5トンまでの小型トラックであればすぐに運転できるようになる。
さらに、中型免許を取る場合でも、基本的な日常会話の日本語レベルさえあれば、教習所で免許を取得することも簡単である。実際に多くの外国人材が教習所で中型や大型の免許を取得している例がある。
サービスの質を維持するハードル
日本の物流・ロジスティクスのサービスの質は世界的に見てもとても高いと言われている。高いサービス品質を維持するためにも、外国人材への丁寧な教育は不可欠である。特に「時間の厳守」、「交通ルールの順守」はドライバーとして最も基本的なルールであることから、しっかり外国人材に教育することが必要だ。
人材の募集におけるハードル
トラックドライバーとしては「身分に基づく在留資格」を有する人材が採用可能であり、日本における「身分に基づく在留資格」を持つ外国人は半数以上である。しかし、実際に外国人ドライバーの求人を掲載しても人が集まらないというケースが多い。それには以下のような要因が考えられる。
外国人へ求人情報が届いていない
日本人を採用する場合は、求人広告や、業界専門の求人サイトで人を募集するのが通常である。しかしそうした方法では外国人に対して求人情報を届けるのは難しい。そもそも日本語で求人情報を探す外国人は非常に少ないためである。
多くの外国人は日本人とは別のチャネルで求人情報を探している。その一例はSNSである。外国人はSNS上で求人情報を検索し、応募する割合が高い。またそれらの情報が外国人の目につくように、彼らの母国語で情報を記載することも必要だ。
トラックドライバーという仕事に対してて抵抗感がある
特に外国では、トラックドライバーは事故率が非常に高く、危険な仕事というイメージがある。事実、多くの特に発展途上国では、交通も日本ほど整理されていないため、トラックドライバーが事故に遭遇する割合が高い。
そこで日本企業は、自社のトラックの運用体制が安全であり、事故率も低いというアピールを外国人に対して積極的に行っていく必要がある。
最後に
今回はトラックドライバーとして外国人材を受け入れる際のポイントについて解説してきた。実はすでに全日本トラック協会が日本政府に対して、ドライバーを技能実習2号の移行対象職種に加えるように要望を出す等の取組も行われている。現状では「身分に基づく在留資格」のみの受け入れになるが、今後は技能実習や特定技能でのドライバーの受け入れも可能になるかもしれない。
上記で在留資格、免許のハードルについて解説してきたが、最も重要なのは「求職者を集める」ことである。そのためには従来の求人広告や求人サイトへの掲載では効果が薄い。外国人を専門とした求人サイトへの掲載や、外国人求職者に向けたSNS上でのマーケティング等の施策を実施する必要がある。
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