はじめに
今回のヒアリングは、環境触媒を開発・製造する日本のメーカーと、排ガス処理設備の設計・施工を手掛けるベトナムのシステムインテグレーター2社との間で実施された。各社は脱臭・排ガス処理という共通の事業領域を持つ。ヒアリングの目的は、環境規制の強化を背景に拡大するベトナムの排ガス処理需要と、現地パートナーが日本の触媒技術に寄せる期待を把握することにあった。あわせて、低価格製品との競争への対応、日本製触媒の価値の伝え方、協業の可能性について意見を交わした。
本件は、日本企業がベトナム市場に参入する際に直面する典型的な課題を示している。技術力は高く、多業種での導入実績もあるが、価格は中国製をはじめとする低価格製品を上回り、現地の市場データや販路もまだ十分ではない。この課題に対して、市場調査、パートナー選定、ライフサイクルコストに基づく価値訴求をどう進めるか。本件は環境触媒に限らず、環境設備・産業資材など幅広い分野でベトナム展開を検討する日本企業にとって、実務的な示唆に富む事例である。
拡大するベトナムの脱臭・排ガス処理装置需要
ヒアリングに参加したベトナムの環境ソリューション企業2社は、いずれも近年の環境規制強化を背景に、排ガス処理分野の需要は大きいと認識しており、同分野を今後の重点領域に位置付けている。
この認識は法制度の動向とも一致する。天然資源環境省(現・農業環境省)が2024年12月30日に公布した産業排ガスの国家技術基準QCVN 19:2024/BTNMTは、2025年7月1日に施行された。新基準は、VOCに関わる有機物質の基準を含む従来の7基準を統合したものである。新規・拡張案件には施行時点から適用され、既存施設は2032年1月1日までに適合が求められる(省人民委員会がより早い期限を定める場合を除く)。排ガス処理設備への投資は、任意の支出から操業継続の必須要件へと移行しつつある。
処理対象となるのは、VOC(揮発性有機化合物)、窒素酸化物、アンモニア、臭気成分などである。日本の触媒メーカーは自動車塗装、化学、印刷、食品の各業種で導入実績を持ち、ヒアリング参加企業2社もこれらの業種、特に塗装ラインに関わる設備に強みを持つ。顧客層としては、1社が日系・台湾系をはじめとする外資系企業、もう1社が国内企業への導入実績を有しており、市場には性質の異なる2つの顧客層が存在すると考えられる。
需要の土台となる製造業への投資も拡大を続けている。ベトナム統計局によると、2026年1~9月の外国直接投資(FDI)実行額は前年同期比12.1%増の210億7,000万ドルとなり、同期間として過去5年間で最高水準を記録した。このうち、製造・加工業は174億ドルで、FDI実行額全体の82.6%を占めた。一方、日本からの対ベトナム投資については、2026年7月末時点の累計登録投資額が約803億ドルに達し、投資国・地域別で第3位となった。また、2026年1月末時点では、製造・加工業への累計登録投資額が486億ドルとなり、日本の累計登録投資額全体の61.6%を占めていた。新設される工場、そして新基準への適合を迫られる既存工場は、いずれも脱臭・排ガス処理装置の潜在顧客となる。
排ガス処理市場のバリューチェーン
ヒアリングで明らかになった重要な点の一つは、排ガス処理ソリューションの供給網における各社の役割である。日本の触媒メーカーは、自社は触媒の開発・製造のみを手掛けており、排ガス処理設備の製造やシステム全体の設計・施工は行っていないと明言した。排ガス処理市場のバリューチェーンは、下図の通り4つの段階で構成される。
①触媒、吸着材、集じん装置などの技術・材料・機器を供給するサプライヤー
②それらを組み込んでソリューションを設計し、機器調達から据え付け、試運転、検収までを担うシステムインテグレーターやEPC事業者
③セメント、鉄鋼、化学、火力発電、廃棄物焼却、塗装・印刷など排ガス処理のニーズを持つ製造工場
④稼働後の保守、触媒・消耗品の交換、システム更新を担うアフターサービス・運用である
さらに、環境コンサルタント、環境モニタリング・検査機関、環境管理当局が、設計から投資判断、検収、運用に至る各段階に横断的に関与する。ヒアリングに参加した触媒メーカーは①に位置し、②のインテグレーターを通じて③の工場に製品を届ける立場にある。触媒の寿命は④における交換頻度や保守コストを左右するため、その価値はバリューチェーン全体に及ぶ。
図:排ガス処理市場のバリューチェーン
| ① 技術・材料・機器サプライヤー | ▶ | ② 設計・システムインテグレーター・EPC | ▶ | ③ エンドユーザー(製造工場) | ▶ | ④ アフターサービス・運用 |
| SCR/脱硝触媒 吸着材 集じん装置 RTO センサー | ▶ | ソリューション設計 機器調達 据え付け 試運転 検収 | ▶ | セメント 鉄鋼 化学 火力発電 廃棄物焼却 塗装・印刷 | ▶ | O&M 保守 触媒・消耗品の交換 システム更新 |
| 支援・規制に関わる主体 | ||||||
| 環境コンサルタント ・ 環境モニタリング/検査機関 ・ 環境管理当局 設計、投資、検収、運用の各段階に横断的に関与する(順に取引が進む一段階ではない) | ||||||
こうした立ち位置から、同社はエンジニアリング会社や設備メーカーと連携し、触媒を組み込んだソリューションとして市場展開するビジネスモデルを想定している。エンドユーザーは通常、触媒メーカーではなく設計・施工会社と直接やり取りするため、どの触媒が採用されるかはインテグレーターの提案に大きく左右される。触媒の技術的・経済的な優位性はパートナーを通じて顧客に伝える必要があり、設備の設計や運用が適切でなければ、高品質な触媒であっても性能を十分に発揮できない。
一方、ベトナムのシステムインテグレーターも、信頼性の高い中核技術を求めている。ヒアリングでは1社が、日本の触媒技術を活用して顧客に最適なソリューションを提供したいとの意向を示した。触媒技術と多業種での導入実績を持つものの、施工能力と現地の販路、市場データを欠く日本の触媒メーカー。設計・施工能力と顧客網、現地市場への理解を持つものの、差別化につながる中核技術を求めるベトナムのインテグレーター。両者の間には明確な補完関係が存在する。
ベトナムの販売パートナーの視点
ヒアリングに参加したベトナム企業2社(匿名)はいずれもシステムインテグレーターであり、日本企業が現地で展開パートナーを探す際に出会う2つの典型的なタイプを示している。
| A社 | B社 | |
| 概要 | 国内テクノロジーグループに所属 | 北部・中部・南部の3地域に拠点を持つ |
| 主な事業分野 | 排ガス処理、環境保護設備、塗装工程向け設備 | 集じん設備、排ガス処理、溶接ヒューム処理 |
| 強み | グループの技術力を生かした総合ソリューション、塗装工程に関する深い専門性 | 設計から組み立てまでの一貫対応、日系・台湾系をはじめとする外資系企業への導入実績 |
| 顧客層 | 多数の国内企業 | 外資系企業 |
共通点
- 実際の施工能力: 両社とも設備の設計・施工を担っており、これは触媒メーカーが自ら行わない領域である。
- 市場に対する前向きな評価: 両社とも環境規制の強化を背景に排ガス処理需要が拡大していると認識し、同分野を重点領域に位置付けている。
- 中核技術へのニーズ: 両社とも、自社ソリューションの信頼性と差別化を高める要素として日本の触媒に関心を示している。
相違点
- A社は「深さ」に強みを持つ。総合ソリューションの提案力と、VOCの主要な発生源の一つである塗装工程への専門性である。
- B社は「広さ」に強みを持つ。全国をカバーする拠点網と、外資系企業向けの実績である。
日本企業のパートナー探しへの示唆
- あらゆるケースに適したパートナーは存在しない。パートナー選定は、対象業種、対象地域、狙う顧客層といった日本企業自身の戦略から出発すべきである。
- 特定業種を優先する場合(例:塗装ライン)は業種に深い専門性を持つパートナーが、外資系顧客や全国展開を優先する場合は広い拠点網と外資系企業向けの実績を持つパートナーが適している。
- 補完的な強みを持つ複数のパートナーを組み合わせることで、業種別・地域別にカバー範囲を広げ、単一パートナーへの依存リスクを低減できる。
- 明確な基準に基づく評価が必要である。技術力、業種の専門性、顧客基盤、対応地域、パートナー自身の戦略における排ガス処理分野の優先度などが主な基準となる。比較の土台として市場データが欠かせない。
日本の脱臭技術をベトナムで展開する際の課題
日本の触媒メーカーとベトナムのシステムインテグレーターの間には明確な補完関係がある一方で、ヒアリングでは、日本の技術をベトナム市場に展開するうえでの現実的な課題も浮き彫りになった。焦点は、高い技術力を持ちながら価格面で不利な立場にある日本製触媒が、現地の顧客にどのように選ばれるかにある。本章では、低価格製品との競争、初期性能が同等の場合の価値証明の難しさ、ベトナム市場のデータ不足、市場アクセスにおけるパートナーへの依存という4つの課題を順に整理する。
低価格製品との激しい競争
ベトナムのシステムインテグレーター側が日本の触媒メーカーに最初に投げかけた質問は、中国メーカーをはじめとする低価格製品との激しい競争の中で、どのような市場戦略を描くのかというものであった。これは、エンドユーザーと直接向き合う現場にとって最も切実な関心事である。
ベトナム側はまた、日本製触媒は中国製より高価格になる可能性があると指摘した。ここから、ベトナムの顧客にとって価格差を上回る具体的なメリットは何か、という問いに答える必要が生じる。
この課題は2つの側面から整理できる。
- エンドユーザーの側面: 見積もりを比較する際、顧客は初期投資額に目を向けがちである。十分な説明がなければ、価格の高い製品は最初の評価段階で除外されやすい。
- インテグレーターの側面: インテグレーターは、受注の可能性(価格競争力)と、自社が納入する設備の品質・長期的な信用とのバランスを取る必要がある。価格の高い中核部品を採用するには、顧客を説得する論拠が求められる。
初期性能が同等の場合、価値の証明が難しい
ヒアリングで注目すべきは、日本の触媒メーカーによる率直な説明である。中国製触媒と比較した場合、初期性能には大きな差が出ない場合もあるという。
つまり、設備の検収時や稼働開始直後の段階では、顧客が両製品の違いを明確に感じられない可能性がある。差が表れるのは運転期間を経てからである。これは、耐久性やライフサイクルコストに価値がある製品に典型的な課題であり、真の価値は一定期間の使用を経て初めて証明される。
ベトナム市場のデータ不足
ベトナムでの市場戦略について問われた日本の触媒メーカーは、ベトナム市場の調査はまだ実施していないと回答した。
高い技術力を持ちながらベトナム市場での経験が少ない日本企業には、珍しくない状況である。市場データの不足は以下のリスクにつながる。
- 業種別・地域別の需要規模を把握できない
- 実際の価格水準や競争構造が分からない
- 優先すべき顧客層や、適切な価値訴求を定めにくい
- システムインテグレーターの評価、比較、選定が難しい
- 根拠ある事業計画や売上予測を立てにくい
市場アクセスにおけるパートナーへの依存
第2章で分析した通り、触媒メーカーは設備の設計・施工を自ら行わないため、エンドユーザーへのアクセスをパートナーに依存せざるを得ない。これにより、協業の管理面で以下の課題が生じる。
- 優先度: パートナーは、低価格の供給者を含む複数の触媒メーカーと同時に取引している可能性がある。
- 価値を伝える力: パートナーの営業・技術担当者が製品の優位性を説明できるよう、教育が必要となる。
- 設計・施工の質: 触媒の実際の性能と寿命は、設備の設計、据え付け、運用の仕方に左右される。
日本製環境触媒の競争優位:触媒寿命とライフサイクルコスト
最大の違いは触媒寿命
中国製と比較した強みについて、日本の触媒メーカーは、最大の違いは触媒寿命であると強調した。寿命が長いことで、ユーザー企業は主に4つのメリットを得られる。
- 交換周期の長期化: 同じ運転期間内での触媒交換回数が減る
- メンテナンス頻度の削減: 定期保守の作業量とコストが減る
- 工場停止リスクの低減: 排ガス処理設備の交換・修理に伴うライン停止を抑えられる
- 長期的な総コストの削減: 上記の要素が積み重なり、ライフサイクルコストが下がる
ライフサイクルコストの考え方
コンサルティングの視点から、日本の触媒メーカーの主張はライフサイクルコストの枠組みで整理できる。排ガス処理設備の実質的なコストは、初期の購入価格だけでなく、以下の項目で構成される。
- 初期投資: 触媒、設備、施工・据え付けの費用
- 触媒交換費用: 寿命と交換周期に直接左右される
- 保守費用: 人件費、資材費、技術者の作業時間
- 生産停止による機会損失: 保守・交換のためにラインを止める際の損失
- 運転エネルギー費用: 設備の運転温度や条件に左右される
この構造の中で、低価格の触媒は初期投資では優位に立てるが、寿命が短ければ、時間の経過とともに残りの項目が膨らむ。反対に、価格は高くても寿命の長い触媒は、十分な運転期間を経た後に総コストを低く抑えられる可能性がある。
特に生産停止によるコストは、見積もり比較の際に過小評価されがちだが、自動車塗装ライン、化学工場、食品工場など連続操業を行う工場にとっては大きな意味を持つ。こうした工場では、排ガス処理設備の安定性が生産の継続性と直結している。
省エネルギーとCO₂排出削減
触媒寿命に加え、日本の触媒メーカーはもう一つの重要な技術的特徴を強調した。触媒技術により、従来の方式より低い温度で排ガス処理が可能になる点である。これにより、排ガスの加熱に要するエネルギーの削減、それに伴うCO₂排出の削減、環境負荷全体の低減という3つの効果が得られる。
ベトナムに進出する外資系企業、特にサプライチェーン全体での排出削減目標を掲げる本社を持つ企業にとって、これは環境規制への適合に加えて付加価値となり得る。
多業種での導入実績
ヒアリングに参加した触媒メーカーは、環境分野で約50年の実績を持ち、自動車塗装、化学、印刷、食品の各業種で導入実績がある。ベトナムのシステムインテグレーターにとって、これは顧客にソリューションを提案する際の信頼性を高める要素となる。日本の技術基準になじみのある日系企業に対しては、とりわけ有効である。
日本製触媒の価値ポジション
| 項目 | ヒアリングで得られた見解 |
| 初期性能 | 中国製と大きな差が出ない場合もある |
| 触媒寿命 | 最大の違いであり、中核的な強み |
| 交換周期・保守 | 交換周期が長く、保守頻度を削減できる |
| 工場停止リスク | より低い |
| 長期コスト | 上記の要素により低くなる可能性がある |
| 処理温度 | 従来方式より低く、省エネルギーとCO₂削減につながる |
| 初期価格 | 中国製より高くなる可能性がある |
日本製触媒の強みは長期的な指標に集中し、弱みは短期的な指標(初期価格)に集中している。したがって、市場参入戦略では、顧客の評価軸を購入価格からライフサイクルコストへと転換させる必要がある。
ベトナム進出を検討する日本企業への示唆
ヒアリングの結果は、ベトナムの排ガス処理市場に商機が確かに存在すること、しかしその商機は技術を持つだけでは手にできないことを示している。ONE-VALUEは、日本企業が5つの観点から準備を進めるべきだと考える。
2032年までの投資機会を捉える
QCVN 19:2024/BTNMTの適用スケジュールは、時期の異なる2つの需要を生み出す。新設工場からの需要は、製造業への外国直接投資の流入と並行して、すでに発生している。一方、既存工場には、施行から2032年1月1日の期限まで約6年半の猶予期間が与えられており、その間に排ガス処理設備の見直し、改修、更新を行う必要がある。より早い適用スケジュールを定める省では、この期間はさらに短くなる。
需要は2026~2031年にかけて分散して発生する可能性が高い。早期に参入した企業は、既存施設からの需要が本格化する前に、導入事例とパートナー関係を築くことができる。逆に、期限間際まで待った企業は、インテグレーターが他の供給者との関係を固めた後の、すでに形が定まった市場で競争することになる。
第一歩は現場の声を聞くこと
ヒアリングに参加した触媒メーカーがベトナム市場の調査をまだ行っていないという事実は、高い技術力を持ちながらこの市場に不慣れな多くの日本企業に共通する状況を映している。一方で、今回のヒアリングでは、わずか2社との対話からも、低価格製品との競争の実態、性質の異なる顧客層の存在、インテグレーターが日本の技術に寄せる期待など、机上の調査だけでは得にくい情報が明らかになった。市場参入の第一歩は、こうした現場の声を聞くことから始まる。
具体的には、現地のシステムインテグレーターやエンジニアリング会社、そしてエンドユーザーである工場へのヒアリングを通じて、基本的な問いへの答えを探る必要がある。排ガス処理需要はどの業種、どの地域に集中しているのか。2032年の期限までにどの工場が設備更新を迫られ、どの省で期限が前倒しされる可能性があるのか。実際の価格水準や既存の供給者の状況はどうか。工場内で誰が意思決定を行い、どのような基準でソリューションを評価するのか。ヒアリングで得た定性的な知見を統計や公開情報と照らし合わせることで、仮説の精度を高め、本格的な市場調査の焦点を絞り込むことができる。
現場の声に裏付けられていなければ、セグメント、パートナー、価格設定に関するあらゆる判断が仮定に基づくことになる。ベトナム側が指摘したように価格競争が激しい市場では、初期段階でのずれが、足場を築けないまま多くの経営資源を費やす結果につながりかねない。
パートナーは機会ではなく戦略に基づいて選ぶ
触媒メーカーは設備を自ら施工しないため、インテグレーターが顧客へのアクセスをほぼ決定する。第3章で分析した通り、ヒアリングに参加した2社は、業種への深い専門性を持つタイプと、地理的な広がりと外資系顧客基盤を持つタイプという、異なる2つの典型を示している。
ONE-VALUEは、日本企業がまず対象業種、対象地域、狙う顧客層を定め、そのうえでパートナーを評価することを推奨する。評価基準としては、設計能力と触媒を組み込む技術力、対象業種での実績、既存の顧客基盤、対応地域、そしてパートナーの事業計画における排ガス処理分野の優先度が挙げられる。多くの場合、単一のパートナーに依存するよりも、補完的な強みを持つ2社以上を組み合わせる方が効果的である。
価格競争ではなくライフサイクル価値を売る
低価格製品との正面からの価格競争は、日本製触媒に適した戦い方ではない。メーカー自身が初期性能に大きな差がない場合もあると認めている以上、優位性は顧客が自ら検証できる数値で示す必要がある。交換周期、保守費用、ライン停止の回数、そして設備のライフサイクル全体での省エネ効果である。
そのためには、工場ごとの運転条件に応じたライフサイクルコストのシミュレーションツールと、パートナーの担当者が提案時に活用できる導入事例資料を用意することが求められる。CO₂排出削減の効果も訴求に含めるべきであり、本社から脱炭素目標を課されている外資系企業へのアプローチではとりわけ有効である。
安定性を重視するセグメントを優先し、適切な協業モデルを設計する
すべての顧客が長期的な価値に追加の対価を払うわけではない。最初に狙うべきセグメントは、生産停止のコストが大きい連続操業の工場、自動車塗装・化学・印刷・食品など触媒の導入実績がある業種、そして日本の技術基準になじみのある日系企業をはじめとする外資系企業である。こうした層で最初の導入事例を築くことが、他のセグメントへ展開する際の重要な裏付けとなる。
協業の形態は、関与の度合いに応じて選択できる。インテグレーターへの部品供給モデルは投資が少ない反面、市場への影響力は限られる。両社が共同でソリューションを開発し顧客にアプローチする戦略提携・代理店モデルは、投資と統制のバランスが取れるが、明確な教育・技術支援の仕組みが必要となる。現地インテグレーターへの出資モデルは最も高い統制力をもたらす一方で、綿密なデューデリジェンスと大きな経営資源を要する。
結論
ベトナムの脱臭・排ガス処理装置市場は、需要拡大の局面に入りつつある。主な推進力は2つある。2025年7月に施行され、既存施設には2032年の期限が設けられた産業排ガス基準QCVN 19:2024/BTNMTと、過去5年で最高水準となった製造業への外国直接投資である。現地のシステムインテグレーターは同分野を重点領域と位置付け、日本の信頼性の高い中核技術を積極的に求めている。
一方で、ヒアリングの結果は、市場参入が容易ではないことも示している。日本企業は、激しい価格競争、初期性能が同等の場合における価値証明の難しさ、パートナーへの依存、そして市場データの不足という課題に直面する。
触媒寿命、保守負担と工場停止リスクの低減、省エネルギーといった日本の技術の強みは、適切な顧客に、適切なパートナーを通じて、明確な経済的論拠をもって伝えられて初めて発揮される。成功の鍵は、正確な市場データ、適切なパートナー、そしてライフサイクルコストに基づく価値訴求の3点にある。
ONE-VALUEは、ベトナム市場における日本企業の事業を専門に支援する戦略コンサルティング会社である。以下のサービスを通じて、貴社の取り組みに伴走する。
- 市場調査・事業戦略策定支援: 現地企業・工場へのヒアリングを起点とした、業種別の需要規模、環境規制、競争構造、価格水準、ベトナムの工場の購買行動に関する調査
- ベトナム進出支援: 参入戦略の策定、ビジネスモデルと対象セグメントの選定
- 販売代理・パートナー探索: 現地のシステムインテグレーターやエンジニアリング会社の探索・評価・マッチング、販売・マーケティングの実行支援
- M&Aアドバイザリー: 現地パートナーへの出資を検討する際の候補探索、デューデリジェンス、交渉支援
ベトナムの環境設備、排ガス処理、脱臭装置市場への参入をご検討の際は、ぜひONE-VALUEまでお問い合わせいただきたい。
「調査の前に、まず現場の声を聞く。」
それが、より早く、より確実な意思決定への第一歩である。
