グローバルサウス補助金を活用し、ベトナムでFS(事業実施可能性調査)や実証を行うことはできるのか。
本稿は、ベトナムへの進出や新規事業を検討している日本企業の経営者・担当者に向けて、2026年の公募状況、補助額・補助率、ベトナムを実施国に含む採択事例、FSで確認すべき項目、申請前の注意点を整理するものである。
結論から言えば、自社の技術やサービスによってベトナムの具体的な社会・産業課題を解決でき、FSや実証の先に事業化を描ける企業にとって、この制度は有力な選択肢になり得る。
ただし、考える順番は「補助金があるからベトナムで何かをする」ではない。
ベトナムで解決すべき課題と事業機会を特定し、その事業化リスクを下げる手段として補助制度を活用する。
この視点が重要である。
- この記事で分かること
- 結論:グローバルサウス補助金がベトナム事業に向く企業
- グローバルサウス補助金とは?FS・小規模実証・大型実証の違い
- 2026年9月29日時点の公募状況
- 2026年一次公募で確認できるベトナム関連の採択7件
- 採択案件から見える3つの特徴【ONE-VALUE独自分析】
- ベトナムでFSを行う際に確認すべき6項目
- 申請前に知っておきたい4つの注意点
- 代表Hoaが語る、補助金から事業を作るのではなく、事業のために補助金を使うことの重要性
- ONE-VALUのグローバルサウス関連・FS・実証支援実績
- 自社案件を確認する7項目のセルフチェック
- 次回公募を見据えて今から準備すべきこと
- まとめ|グローバルサウス補助金をベトナム事業化の手段として使う
この記事で分かること
- 自社のベトナム事業がグローバルサウス補助金の対象になり得るか
- 2026年にベトナムを実施国として、どのような案件が採択されているか
- FS・実証・事業化に向けて、申請前から何を準備すべきか
結論:グローバルサウス補助金がベトナム事業に向く企業
グローバルサウス補助金の活用を検討しやすいのは、例えば次のような企業である。
自社の技術・サービスをベトナムで展開したいが、市場性や規制、採算性をまず検証したい企業。現地企業や政府機関などと小規模な実証を行い、その結果を見て本格投資を判断したい企業。そして、GX、DX、経済安全保障などのテーマで、日本の技術とベトナムの課題を結び付けられる企業だ。
一方、「補助率が高いから」「ベトナム市場が成長しているから」という理由だけでは不十分である。
求められるのは、誰のどの課題を、自社の技術やサービスによって解決し、その後どのように継続的な事業にするのかという具体的な事業仮説である。
グローバルサウス補助金とは?FS・小規模実証・大型実証の違い
経済産業省の「グローバルサウス未来志向型共創等事業」は、グローバルサウス諸国が抱えるDXやGXなどの課題解決と、日本企業の新市場開拓、日本国内産業の活性化、サプライチェーン強靱化などを同時に進めることを目的としている。
出典:令和7年度補正 グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金(小規模実証・FS事業)公式サイト
ベトナム案件を検討する企業が押さえておきたいのは、主に次の3つである。
| 区分 | 主な目的 | 補助額 | 補助率 | 期間 |
| FS事業 | 市場・規制・採算性等を調査し、事業化可能性を検証 | 上限1億円 | 原則1/2以内、中小企業2/3以内 | 原則12か月以内 |
| 小規模実証 | 現地で技術・サービスの有効性や経済性を検証 | 上限5億円 | 原則1/2以内、中小企業2/3以内 | 原則18か月以内 |
| 大型実証(ASEAN加盟国) | 商用化を見据えた大規模実証 | 5億円超~40億円以下 | 中小企業以外1/2、中小企業2/3 | 3年以内 |
FS・小規模実証では、海外現地法人に対しては「大企業等」と同じ1/2以内の補助率が適用される。
大型実証(ASEAN加盟国)は別の公募枠であり、令和7年度補正では補助額5億円超~40億円以下、実施期間は補助交付契約締結日から3年以内とされている。
したがって、まず自社案件が「まだ市場性を確認する段階なのか」「現地実証ができる段階なのか」「すでに大型実証へ進める段階なのか」を整理する必要がある。

図1 グローバルサウス補助金2026:FS・小規模実証・大型実証の比較
出所:経済産業省・各事業事務局資料をもとにONE-VALUE作成
2026年9月29日時点の公募状況
令和7年度補正の小規模実証・FS事業では、一次公募が2026年4月17日から5月11日まで行われた。
経済産業省によれば、238件の応募に対し65件が採択されている。
出典:経済産業省「令和7年度補正グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金(小規模実証・FS事業)採択結果」
一次公募の応募・採択件数を図で整理すると、次の通りである。

図2 令和7年度補正 小規模実証・FS事業 一次公募の応募・採択件数
出所:経済産業省の採択結果をもとにONE-VALUE作成
さらに、2026年9月28日には二次公募の募集要領暫定版が公開された。9月29日時点の公式サイトでは、10月2日から二次公募を開始する予定と案内されている。二次公募開始時には正式な修正版資料が掲載されるため、申請企業は10月2日以降の要領を改めて確認する必要がある。
ASEAN向け大型実証については、第2回公募を2026年12月14日12時から2027年1月22日12時まで実施する予定である。
つまり、2026年秋から2027年初頭にかけて、次の案件形成に向けた準備期間に入っている。
公募が始まってから初めて事業内容を考えるのではなく、現地ニーズ、パートナー、実証先、採算性などを先行して整理しておくべきだ。
2026年一次公募で確認できるベトナム関連の採択7件
令和7年度補正の小規模実証・FS事業の一次公募では65件が採択された。
経済産業省の公表一覧をONE-VALUEが実施国ベースで整理したところ、ベトナムを実施国に含む案件は7件確認できる。複数国を対象とした案件も含む。
| 企業・団体 | 事業の主なテーマ |
| コニカミノルタ株式会社 | X線動態解析とAIを活用した呼吸器疾患のデジタル診療 |
| 豊国工業株式会社・豊国ベトナム有限会社 | スマートフォンを活用した水門管理 |
| 株式会社山本金属製作所 | データ活用による製造・リバースエンジニアリング |
| 株式会社Jizoku | バイオ炭・堆肥、JCMカーボンクレジット |
| KDDI株式会社 | AIドローンによる防災・インフラ点検 |
| 株式会社エイトノット | 船舶向け自律航行AI |
| 特定非営利活動法人日本ネットワークセキュリティ協会 | 日本発サイバーセキュリティ技術の事業化可能性調査 |

注:分野分類はONE-VALUEによる独自整理であり、経済産業省の公式分類ではありません。
出所:経済産業省の採択結果をもとにONE-VALUE作成。上表のテーマ名は読みやすさのため要約。採択結果
大型実証でも、関西電力株式会社による「ペロブスカイト太陽光および蓄熱システムの一体運用による脱炭素・負荷平準化技術に関する実証事業」が、ベトナムを実施国として採択されている。
医療、防災、水インフラ、製造、脱炭素、サイバーセキュリティ、AIなど、対象分野は幅広い。
ここから分かるのは、「ベトナムだから採択される」のではなく、現地課題と日本企業の技術を具体的に結び付けた案件が形成されているということだ。
採択案件から見える3つの特徴【ONE-VALUE独自分析】
ここからは正式な審査基準の説明ではなく、2026年の公表採択案件をONE-VALUEが事業開発の観点から整理した分析である。
現地で解決する課題が具体的である
採択案件を見ると、医療、防災、水門管理、インフラ点検、製造高度化といった対象が明確だ。
「日本に優れた技術がある」ことだけではなく、その技術を使うことでベトナムの誰の何が改善されるのかが具体化されている。
FSや実証の「次」が想定されている
FSはレポート作成そのものが目的ではない。
公式サイトでも、市場規模、需要、経済性、競合、現地パートナー、ファイナンス、事業化までのスケジュール、出資・買収候補の探索などが具体的な調査内容として示されている。
調査後に実証へ進むのか。販売を始めるのか。現地企業と提携するのか。
その先まで設計してこそ、FSの意味がある。
日本側への波及を説明できる
制度には「我が国のイノベーション創出につながる共創型」「日本の高度技術海外展開型」「サプライチェーン強靱化型」という3類型が設定されている。
したがって、ベトナム側の課題解決だけでなく、技術・知見の日本への還流、日本企業の海外市場獲得、供給網の多角化など、日本側にどのような効果が戻るのかを整理する必要がある。
ベトナムでFSを行う際に確認すべき6項目
ONE-VALUEでは、FSを単なる市場規模調査とは位置付けていない。
市場性、競争環境、制度、収益構造、オペレーション、リスクまでを一体で確認し、「この事業を進めるべきか。進めるなら、どの方法・規模で進めるか」を判断できる状態にすることがFSの役割である。
市場・顧客ニーズ
市場規模だけでは十分ではない。
誰が顧客になるのか。どの課題に困っているのか。いくらなら購入するのか。導入判断をするのは誰か。
実際の事業判断には、こうした情報が必要になる。
法規制・許認可
外資規制、製品認証、事業ライセンス、環境関連規制、データ関連規制などが事業モデルに影響しないかを確認する。
制度上可能でも、実務上の時間や追加コストが大きければ、採算性は変わる。
競争環境
ベトナム企業だけでなく、中国・韓国・欧米企業なども競争相手になり得る。
価格だけでなく、販売網、保守体制、導入実績、現地対応力まで含めて競合を見る必要がある。
現地パートナー・実証先
販売代理店、JV候補、製造委託先、病院、工場、大学、自治体など、案件によって必要な相手は異なる。
重要なのは「紹介できる企業があるか」ではなく、実証から商用化まで一緒に進められる相手かという点だ。
経済性
初期投資、運営コスト、販売価格、売上、回収期間などを整理する。
技術的に実証できても、顧客が支払える価格で提供できなければ継続事業にはならない。
実証後の事業化
実証後に、直接販売、代理店販売、ライセンス、JV、現地法人、M&Aなど、どの方法で市場を拡大するのか。
ここまで考えて初めて、FSの結果を経営判断に使える。
ONE-VALUEは、デスクトップ調査だけでなく、ベトナム企業や業界関係者等へのヒアリングを組み合わせた市場調査・FSを行っている。
| 自社案件がグローバルサウス補助金の対象になり得るか、ベトナムでどのようなFSが必要かを整理したい企業様は、構想段階からONE-VALUEへご相談いただけます。 無料相談はこちら |
申請前に知っておきたい4つの注意点
補助率は100%ではない
FS・小規模実証は原則1/2以内、中小企業は2/3以内である。
補助金だけで事業を実施する制度ではなく、企業側にも相応の負担がある。
採択されても、すぐ事業を開始できるわけではない
小規模実証・FS事業では、事業を開始できるのは交付決定通知日以降とされている。
交付決定前に発注・契約を進めないよう、スケジュール管理が必要だ。
他の国庫補助金との重複利用に注意する
小規模実証・FS事業では、他の国庫補助金との併用はできないと明記されている。
JCMなど他制度も検討している場合には、それぞれの対象経費・事業スコープを確認する必要がある。
事業終了後もフォローアップがある
FS・小規模実証では、事業終了後5年間のフォローアップ調査への協力が求められている。
したがって、一度報告書を提出して終わる短期プロジェクトとして考えるべきではない。
代表Hoaが語る、補助金から事業を作るのではなく、事業のために補助金を使うことの重要性
私がこの制度について最も重要だと考えているのは、補助金を起点に事業を作らないことです。
「最大1億円のFSができる」「最大5億円の実証ができる」と聞けば、制度から事業を考えたくなるかもしれません。
しかし、順番は逆です。
まず、ベトナムに解決すべき課題がある。
次に、自社の技術やサービスによって解決できる可能性がある。
そこで市場性、規制、顧客、パートナー、採算性を調べる。
必要なら現地で実証し、その先に販売、投資、提携、JV、M&Aなどの事業化を描く。
その過程にある不確実性とコストを下げるために補助金を使う。
この考え方を整理すると、「課題発見→FS→実証→事業化」という流れになる。

この考え方であれば、仮に補助金の公募時期が変わっても、事業そのものは残ります。
一方、補助金ありきで作った案件は、採択されなければそこで止まってしまう。
グローバルサウス補助金は、ベトナム事業を作る目的そのものではなく、事業化を前に進めるための手段として考えるべきだと思います。
ONE-VALUのグローバルサウス関連・FS・実証支援実績
ONE-VALUEの公式サイトでは、政府・公的機関向けの主な支援実績の一つとして、「令和5年度 グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」を掲載している。
ここで注意したいのは、ONE-VALUE自身が補助金の採択・受給主体であったと説明しているわけではない点だ。本稿でも、あくまで「支援実績」として扱う。
また、農林水産省の公式ページでは、ベトナムへのスマート農業実証・事業展開支援事業について、ONE-VALUE株式会社が運営事業者として掲載されている。
ONE-VALUEの公開実績には、このほかベトナムでの林業ICT実証、グリーン・カーボンニュートラル関連調査、スマートシティ関連調査なども含まれている。
また、現在のFS支援サービスでは、経済産業省のグローバルサウス事業やNEDO事業に関係するFS調査への対応を明記している。
ONE-VALUEが担えるのは、申請書作成だけではない。
市場調査、現地ヒアリング、競合調査、パートナー探索、事業スキーム検討などを通じて、補助制度の先にあるベトナムでの事業化を具体化することにある。
自社案件を確認する7項目のセルフチェック
グローバルサウス補助金の活用可能性を考える際は、まず次の7項目を整理してみてほしい。
- ベトナムで解決したい具体的な社会・産業課題がある
- 自社が提供する技術・サービスが明確である
- GX、DX、経済安全保障等との関連を説明できる
- 現地顧客・実証先・パートナー候補を想定できる
- 日本側への経済・産業上の効果を説明できる
- FSや実証後の商用化モデルを描ける
- 補助制度終了後も継続できるビジネスになり得る
これは公式の採択判定表ではない。
ただし、これらに具体的な回答ができなければ、公募書類を書く前に事業仮説をもう一段深く整理する必要がある。
次回公募を見据えて今から準備すべきこと
まず整理すべきなのは、「ベトナムのどの課題を、自社の何によって解決するのか」である。
その後、現地の顧客候補、実証先、パートナー候補へヒアリングし、本当にニーズが存在するかを検証する。
市場、競合、規制、価格、収益性、事業実施体制を整理したうえで、自社案件がFS、小規模実証、大型実証のどの段階にあるのかを判断する。
申請方法やGビズID等の準備も早めに進めたい。
ASEAN向け大型実証では、第2回公募を2026年12月14日から2027年1月22日まで実施する予定だ。
小規模実証・FSについては、9月29日時点で10月2日の二次公募開始が予告されている。
申請書を書くことは、事業形成の最後の工程である。
公募開始前から仮説検証を進めておくことが、申請のためだけでなく、その後の事業化にもつながる。
まとめ|グローバルサウス補助金をベトナム事業化の手段として使う
グローバルサウス補助金は、ベトナムで新しい事業に取り組む日本企業にとって有力な制度の一つである。
令和7年度補正では、FSは上限1億円、小規模実証は上限5億円。ASEAN向け大型実証では5億円超~40億円以下が設定されている。
しかし、補助金の金額だけを見て事業を作るべきではない。
市場、顧客、規制、競争環境、パートナー、採算性を確認し、「補助制度が終了した後も続くビジネス」を設計できるかが最も重要である。
ONE-VALUEでは、グローバルサウス関連事業の支援実績に加え、ベトナムでのFS、市場調査、企業・業界関係者へのヒアリング、現地パートナー探索、事業戦略策定等を支援している。
「自社の技術・サービスが対象になり得るのか」
「ベトナムでFSを行う場合、何を調査すべきか」
「現地の実証先やパートナーをどう探すべきか」
といった構想段階からでも相談可能である。
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