はじめに:2026年がベトナムJCM参入の注目時期となる理由
日本企業にとって、JCMはベトナムで低炭素技術を展開するための実務的な制度である。初期投資負担をJCM補助金によって抑えながら、測定可能な排出削減を実現できる点に大きな特徴がある。
ベトナムは今後、JCMを活用しやすい条件を備えつつある。経済成長は高水準を維持しており、工業分野における電力・エネルギー需要も拡大している。一方で、ベトナム政府は2050年までのネットゼロ達成を表明している。
制度面でも、ベトナムは2025年1月24日付の首相決定232/QĐ-TTgにより、カーボン市場の設立・発展に関する提案を承認した。さらに、温室効果ガス削減およびオゾン層保護に関する政令06/2022/NĐ-CPを改正する政令119/2025/NĐ-CPも公布している。こうした動きは、炭素クレジット取引の基盤整備と、ベトナムにおける排出削減プロジェクトの拡大に向けた重要な土台となる。

このような環境の中で、日本企業はJCMをどのように活用すべきか。本稿では、JCMの支援制度、ベトナムでの実施事例、JCM補助金を活用するための準備、そしてONE-VALUEが提供できる支援について整理する。
JCMとは何か-CO2削減と低炭素技術投資を支援する仕組み
JCMは、日本政府が推進する温室効果ガス削減に向けた二国間協力の仕組みである。低炭素技術、製品、サービス、インフラの普及を支援し、その結果として生じる排出削減量の一部を、日本および相手国の気候目標達成に活用する制度である。
ベトナムでは2013年からJCMが導入されており、2021〜2030年の期間も継続されている。これは、日本とベトナムの低炭素分野における協力が、すでに長期的な制度基盤を持っていることを示している。
JCMに参加するには、主に三つの点を証明する必要がある。
- 導入する技術または解決策が明確な排出削減効果を持つこと
- 削減量を適切な方法論に基づいて測定できること
- 日本側事業者、ベトナム側パートナー、設計・調達・建設を担う事業者、許認可、資金計画、クレジット配分などを含む実行可能な事業スキームを構築すること
そのため、JCM補助金の申請方法を検討する際、単なる補助金申請手続きとして捉えるべきではない。これは、技術、法務、財務の各面で高い精度が求められる投資プロジェクトの準備である。再生可能エネルギー、省エネルギー、高効率設備など、自社の案件がどの分野に該当するのかを早期に見極めることが重要である。
JCMの対象分野に関する日本語リストや、自社がどの投資分野に該当するかについて相談したい企業は、ONE-VALUEに問い合わせることができる。
ベトナム再生可能エネルギー案件とJCM実施事例
ベトナムにおけるJCM案件を見ると、機会は太陽光発電や再生可能エネルギーだけに限られない。省エネルギー、高効率設備、グリーン物流、工場運営の改善など、測定可能な排出削減を生み出せる幅広い領域に可能性がある。ベトナム再生可能エネルギー案件を検討する日本企業は、発電事業だけでなく、排出削減量を算定できるプロジェクト全体を視野に入れる必要がある。
ベトナム・日本JCM合同委員会の第9回会合では、2013〜2020年に登録された9件のJCM案件について、炭素クレジットの発行が合意された。
ベトナム・日本JCMシステム上でクレジット発行データが確認されている代表的な案件は以下の通りである。
| ベトナムにおけるJCM案件 | 通知・発行されたクレジット数 | 実施地域・分野 |
| デジタルタコグラフを活用したエコドライブ | 2016年7月1日〜2017年9月30日に716クレジット、2015年8月1日〜2016年6月30日に58クレジット | ベトナム、輸送・物流分野 |
| ベトナム国立病院における効率改善・環境改善によるグリーンホスピタル推進 | 878クレジット | ベトナム国内の国立病院 |
| ベトナム低炭素ホテルプロジェクト | 261クレジット | ベトナム、ホテル・商業施設分野 |
| ベトナム南部配電システムにおける高効率アモルファス変圧器の導入 | 2016年4月1日〜2020年12月31日に3,045クレジット、2016年1月1日〜3月31日に75クレジット | ベトナム南部 |
| ホテルへの高効率空調設備導入 | 189クレジット | ベトナム、ホテル分野 |
これらの事例から、三つの特徴が読み取れる。
- ベトナムのJCM案件は、技術内容が明確で、排出削減量を計算できることが前提となる。太陽光発電、高効率変圧器、省エネ空調、高効率生産設備、輸送管理などがこれに該当する。
- JCMは必ずしも大規模エネルギー案件である必要はない。多くの案件は、工場、商業施設、ホテル、病院、配電網などで実施されている。この点は、多様な日本企業に参入余地があることを示している。
- 日本企業の関与は、技術、設備、運営、資金、実施支援など幅広い形で想定される。省エネルギー技術を持つ企業、設計・調達・建設を担う企業、設備メーカー、ベトナム国内に工場を持つ企業、商業インフラを運営する企業にとって、JCMは投資支援の有力な選択肢となりうる。
2026年の機会は大きく四つに分類できる。
- 太陽光、バイオマス、廃棄物発電、蓄電などの再生可能エネルギー案件
- 空調、コンプレッサー、照明、モーター、生産ライン、エネルギー管理システムなど
- 商業施設、ホテル、病院、物流センター、工業団地における案件
- グリーン輸送、燃料管理、エコドライブ、物流運営の最適化

JCM補助金獲得の可能性を高める5ステップ
日本の環境省による補助金を受けるには、単に書類を提出するだけでは不十分である。プロジェクト全体の透明性と効果を、体系的に証明する必要がある。以下の5ステップは、構想段階から運営・収益化までを一貫してつなげるための実務的な流れである。
ステップ1:投資スキ–ムの設計–協力体制の基盤を構築する
技術を検討する前に、まずプロジェクトの実施体制を明確にする必要がある。JCMでは、少なくとも日本法人とベトナム法人を含むコンソーシアムによって事業を実施することが求められる。
日本企業は通常、コンソーシアム代表として、技術面および日本政府向け申請書類の主責任を担う。加えて、誰が資金を拠出し、誰が運営し、設備の所有権を誰が持つのかを明確にする必要がある。この段階の透明性は、将来的な炭素クレジット配分をめぐる紛争リスクを抑えるうえで重要である。
適切なスキーム設計は、後述する法務・税務確認を円滑に進めるための土台にもなる。
ステップ2:JCM CO2換算–環境効果を数値で証明する
協力体制を設計した後は、排出削減効果を数値で証明する段階に入る。企業は、ベトナムで合同委員会により承認されている15の方法論の中から、案件に適したものを選択して計算する必要がある。
重要なのは、プロジェクトが実施されなかった場合の基準排出量と、プロジェクト実施後に見込まれる排出量を比較することである。その差分が、取得可能な炭素クレジットの基礎となる。
この計算には、設備仕様や運転条件に関する深い理解が必要である。数値が現実的でなければ、審査段階で否認される可能性がある。CO2削減量の算定結果は、補助金申請書類の中核であり、日本政府による支援額にも大きく関係する。
ステップ3:設計・調達・建設事業者と技術の選定–設計を現実のプロジェクトに落とし込む
2026年に向けて、技術基準はより厳格化していくと考えられる。そのため、現地の設計・調達・建設事業者の選定は、単に価格の安さだけで判断すべきではない。
必要となるのは、高効率設備を正しく設置する技術力だけではない。JCMに必要なデータ計測システムへの理解も求められる。また、日本の技術をベトナムに導入する際には、湿度、温度、電力網の状態など、現地の運用環境に合わせた調整も欠かせない。
設計・調達・建設事業者は、後の測定・報告・検証に必要なセンサーや計測システムを直接設置する主体でもある。したがって、この選定はプロジェクトの成否を左右する重要な工程である。
ステップ4:法務・税務リスクの管理–プロジェクトを守る防波堤
2026年時点で、炭素関連プロジェクトは政令119/2025/NĐ-CPをはじめとする新たな規制に厳格に対応する必要がある。これは、プロジェクト全体の「健康診断」ともいえる工程である。
太陽光案件であれば屋根賃貸契約、建設許可、環境関連許認可、さらにはベトナム国外への炭素クレジット移転に関する権利確認が必要となる。また、グリーンプロジェクトに対する法人所得税優遇の有無を分析し、キャッシュフローを最適化することも重要である。
法務上の論点が不明確なまま進めば、補助金返還や正式な炭素クレジット化の障害につながる可能性がある。
ステップ5:測定・報告・検証システムの構築–プロジェクトの価値を継続的に証明する
測定・報告・検証は、排出量の監視、報告、検証を指す。これは最終工程であると同時に、プロジェクトのライフサイクル全体にわたって続く重要なプロセスである。
2026年以降は、デジタル計測技術を活用したリアルタイムの排出データ報告がより重視されるとみられる。これにより、人為的ミスを抑え、透明性の高いデータ管理が可能になる。
独立した第三者審査機関は、定期的にデータを検証し、発行可能な炭素クレジット数を確認する。優れた測定・報告・検証システムは、クレジット収入を安定化させるだけでなく、企業が株主やグローバルパートナーに提出するサステナビリティ報告においても重要な証拠となる。
ONE-VALUE-ベトナムJCM案件を実現する戦略パートナー
2026年のカーボン市場では、新たな規制と厳格な基準への対応力が問われる。机上のプロジェクトで終わるか、実際に補助金を獲得できる案件になるかを分けるのは、現地での実行力である。ONE-VALUEは単なるコンサルタントではなく、JCMに関わる各工程をつなぐ実務パートナーとして機能する。
投資スキーム構築と戦略パートナー探索
日本企業がベトナムで直面する最大の課題の一つは、「適切な相手」と「適切な役割」を見つけることである。ONE-VALUEは、現地ネットワークを活用し、コンソーシアム構築を支援する。
具体的には、排出削減ニーズを持つ工場オーナーやインフラ運営会社など、ベトナム側パートナーの探索・評価を行う。また、企業が自力で数多くの設計・調達・建設事業者を比較する負担を減らすため、独立した調査に基づき、実績や技術対応力を評価する。
これにより、単に建設能力があるだけでなく、日本技術の導入や炭素クレジット取得に必要な技術基準を理解するパートナーを選定しやすくなる。
JCM書類の数値化・技術化
JCM補助金を獲得するには、数値が説得力を持つ必要がある。ONE-VALUEは、企業の技術チームと連携し、運転データを精査し、最適な方法論を適用することで、登録可能な排出削減量の最大化を支援する。
また、プロジェクト設計段階から測定・報告・検証を見据えた監視プロセスの構築を支援する。これにより、事業開始後に排出データを自動的かつ透明に記録し、第三者審査機関による検証に備えることができる。
新時代における法務・税務対応
2026年以降、政令119/2025/NĐ-CPを中心とするカーボン市場関連規制は、十分な理解がなければ参入障壁となりうる。ONE-VALUEは、企業がこの複雑な制度環境を乗り越えるための支援を行う。
建設、環境、系統接続などの許認可に関する法務精査を実施し、プロジェクトが途中で停止するリスクを抑える。また、ベトナム天然資源環境省の最新方針に沿い、日本とベトナムの間で炭素クレジットをどのように配分・移転するかについても助言する。これにより、国際的な炭素取引に伴う税務・手数料上のリスクを低減できる。
構想から資金回収までの一気通貫支援
ONE-VALUEの支援は、構想段階から運営段階まで一貫している。予備的な事業可能性調査の段階では、企業が大規模投資を行う前に、その案件が補助金対象となりうるかを迅速に評価する。
申請段階では、日本語・ベトナム語の情報整理、書類作成、入力データの確認を支援し、日本政府とベトナム当局の双方に対して一貫性と説得力のある資料作成を行う。
運営段階では、現地パートナーとの関係管理を継続し、プロジェクトが約束通りに稼働し、安定的に炭素クレジットを創出できるよう支援する。
まとめ
2026年のベトナムJCMは、排出削減分野で実効性ある成長機会を求める日本企業にとって注目すべき制度である。すでに複数の案件が登録され、炭素クレジットも発行されている。さらに、ベトナム国内のカーボン市場に関する法制度も整備が進んでおり、ベトナムCO2削減、省エネルギー、再生可能エネルギー、高効率設備に関する案件にとって、より追い風となる環境が形成されつつある。
一方で、JCMの機会を確実に捉えるには、十分な準備が不可欠である。対象案件の選定、技術の選択、CO2削減量の算定、ベトナム側パートナー探索、法務・税務・許認可の確認、JCM補助金を受けるためのスキーム設計を慎重に進める必要がある。データが明確で、実行体制が合理的であり、信頼できる現地パートナーを持つプロジェクトほど、審査上の可能性は高まりやすい。
ベトナムでJCM参入を検討する企業は、まず具体的な機会の棚卸しから始めるべきである。どの案件が適しているのか、どの技術を適用できるのか、CO2削減量をどのように算定できるのか、ベトナム側パートナーに十分な実行能力があるのか、申請書類がJCMの要件を満たせるのかを見極める必要がある。
ベトナムJCM 2026、JCM補助金、ベトナム再生可能エネルギー案件、ベトナム脱炭素ビジネスに関心を持つ企業は、ONE-VALUEに相談することで、市場調査、スキーム設計、パートナー探索、設計・調達・建設事業者の選定、法務確認、JCM申請に向けた情報整理まで、実務に即した支援を受けることができる。
ONE-VALUE株式会社(ONE-VALUE Inc.)について
ONE-VALUEは、1,000社以上の日本企業のベトナム進出を支援してきた総合コンサルティングファームです。
- 市場調査・戦略立案: 深い市場理解に基づくロードマップ策定。
- M&Aアドバイザリー: ターゲット選定からPMIまでの一貫支援。
- 販売・マーケティング代行: 代理店開拓から実務運用まで。
- 撤退支援(事業整理・清算支援): 事業整理、法人解散、清算手続などのサポート。
- エキスパート・プラットフォーム: 32分野5,000名以上の専門家への直接アクセス。詳細については、こちらよりご確認いただけます。
ベトナム市場への参入や事業拡大・撤退に関するご相談は、こちら(お問い合わせフォーム)から受け付けております。
また、最新の経済レポートについてはVietbiz(ベトナム経済情報メディア)をご参照くださいませ。
出所:

Viet Nam – Japan: Promoting cooperation in implementing the Joint Credit Mechanism
