ベトナムでは、総書記トー・ラムが署名した「エネルギー安全保障確保に関する党中央委員会第70号決議」が発表され、電力産業の構造転換と市場化が本格化しつつある。決議は2030年までにエネルギー安全保障を堅固に確立し、電力供給量183〜236GW、再生可能エネルギー比率25〜30%を目標に掲げている。これにより、競争的で透明性の高い市場形成、直接購入契約(PPA)の拡充、電力小売市場の開放などが進められる見通しである。
一方、現状の課題は深刻である。電源開発の遅延、輸入依存の高まり、送電網整備の遅れ、電力価格制度の不透明さが続き、EVNを中心とする国営企業の独占構造が効率性を阻害してきた。特にFIT制度終了後の移行政策が不明確なため、多くの再エネ案件が停滞しており、2030年までに必要とされる1500億USDの投資資金を確保するのは困難との見方が強い。
専門家は価格メカニズムを最大の障害と指摘する。電力価格は依然として市場原理に基づかず、コストを十分に反映していない。加えて、地域間や消費者間の「クロスサブシディ」が長年温存され、EVNの財務悪化と民間投資の萎縮を招いている。価格が複数の政策目的(物価安定・社会保障・投資促進)を同時に担わされている現状も、市場の歪みを生み出している。
決議70は、法制度の簡素化、送電投資の民間開放、価格制度の透明化を通じて、国内外の投資を呼び込むことを狙う。とりわけ、蓄電・LNG・再エネインフラの整備においては、民間とFDIの役割が不可欠である。電力業界は今、供給安定と脱炭素を同時に実現する岐路にあり、市場改革の成否が投資呼び込みの鍵を握る。
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