ベトナムのブライダル市場の動向

はじめに 

ベトナムは、経済成長と若者の人口比率の高さから、ブライダル市場は魅力的な市場である。
1人当たり年間平均所得は2011年の1,950USDから2026年には6,140USD、2030年には7,500USDに増加し、中間層も41.0%に達する見込みである。婚姻数はここ数年、年間70万組で安定しており、ホーチミンでは毎年4万組以上が結婚している。若者はキャリアを重視しつつも結婚を重要視しており、高級な結婚式場を求める傾向が強くなっている。本レポートでは、これらの背景を踏まえ、専門的な結婚式サービスへの需要が高まり、日本企業にとっても参入のチャンスでもあることを解説する。 

ベトナムのブライダル市場の有望性 

近年、ベトナムのブライダルビジネスが注目されるようになってきた。本レポートでは、背景や市場の動向、その有望性について解説する。 

平均所得の増加、若者の人口比率の高さ、婚姻数の多さ 

ベトナムは、著しい経済発展に伴う平均所得の増加、若者の人口比率の高さという要因から、ブライダルビジネスにとって有望な市場であるといえる。 

以下は、ベトナムの1人当たりの年間平均所得と中間層の割合を示した図である。2011年は、1,950USDだった年間平均所得が2026年(予想)には6,140USD、2030年(予想)には7,500USDと4倍弱増えている。これに伴い、中間層の割合も同期間(予想)、7.8％から41.0%に増えている。　 

下記の図は、ベトナム人の初婚平均年齢の推移、及びベトナムの人口構成である。ベトナム人の初婚平均年齢は、男女とも年々高くなる傾向にあり、2022年時点で男性29.0歳、女性24.7歳である。

これは全国平均であり、都市部に限るともう少し高い年齢になることが推測される。韓国経済メディア毎日経済によれば、2024年現時点でのホーチミンの初婚平均年齢は30.4歳という。 　 

下の図は、ベトナムの人口構成ピラミッドである。30歳前半が最も人口が多い。ベトナムの初婚平均年齢辺りの層の人口が多く、特にこの層は、都市部の初婚平均年齢と重なっていることが分かる。 

次の図は、ベトナム全体、及びホーチミン市の婚姻数の推移である。婚姻数自体は新型コロナウイルス感染症(Covid-19)拡大の影響を受けた2020年と2021年を除いて、横ばい状態であるが、毎年70万組が結婚している、日本の50万組と比較すると20万組多い。ホーチミン市では毎年4万強が婚姻している。 

　 

ベトナムでは経済成長が続いており、最近の若者たちは自分のキャリアを築くことに重きを置いている。結婚前に自己啓発やキャリア形成を優先する傾向があるが、それでも結婚自体は依然として重要視されている。ベトナム人の幸せの価値観として、結婚して子供を授かり、家族で暮らすことを日本人以上に重要視している。 

拡大する市場規模 

ベトナムでは、平均年間所得の上昇、初婚平均年齢層と婚姻数の多さから、市場規模が拡大している。以下の図は、ベトナムにおけるブライダル市場規模の推移を示している。CAGRは７%を記録しており、安定して成長していることが伺える。 

導入期～成長期に係るベトナムのブライダル市場 

ベトナムのブライダル市場は導入期～成長期の過程にあり、今後ブライダル関連のビジネスが大きく伸長することが期待される。 

　 

以下は、ベトナムのカップルが希望する結婚式場の形態である。個人宅は後述する自宅の前の路上にテントを設置しての結婚式も含んでいる。以前は、費用のあまりかからないこの形態の結婚式が行われることが多かった。テントの中に並べられたテーブル上に、新郎新婦の親戚らが作った料理やレストランに外注した料理が並べられ、ドレス、メイク、ヘアスタイルを整えるのも自分たちでしていた。しかし、最近はこの形態以外での結婚式を望むカップルが増えており、高級レストラン/ホールや屋外(庭園や公園など)、ホテルを希望するカップルが多くなっている。 

農村部では、まだ個人宅で行う結婚式が多いが、特に都市部では高級レストランやホテルで結婚式を行う新郎新婦が増えてきている。これらの結婚式では、料理は外注し、ドレスやメイク、ヘアスタイルなどは美容師を呼んですることが多い。これまでベトナムではこれらの形態の結婚式の市場が発展しておらず、ベトナムのブライダル業界は手探りで、増えつつあるこれらの形態の需要に応えようとしている。 

高まるブライダルサービスの需要 

個人宅以外での形態での結婚式を望み、それを実現できるだけの所得を得ているベトナム人が増えることで、ベトナムのブライダル専門サービス会社も成長してきた。ベトナムでは、特に新型コロナウイルス感染症(Covid-19)拡大の流行後、カップル、特に花嫁が結婚そのものよりも結婚式の経験を重視するようになり、プロの結婚式サービスを利用する傾向が高まっている。また、都市部では所得の増加に伴い、結婚式のサービスをトータルで提供するプロデュース会社の人気が高まっている。 

プロデュース会社では、結婚式会場の設置に加え、貸衣装や写真撮影サービスの他、ウェディングプランニングや花嫁の美容サービスといった関連サービスとの連携を強化している。ワンストップサービスとしての利便性を提供し、顧客満足度の向上を図っている。また、個々の顧客のニーズに合わせたカスタマイズサービスを提供することで、差別化を図っている。特定のテーマやコンセプトに合わせた衣装や撮影プランを提案し、専門的な撮影機材の導入やプロのフォトグラファーの採用により、サービスの品質向上を図っている。 

プロデュース会社には多くの結婚式を手掛けたプランナーが在籍しており、的確なアドバイスが受けられるという利点の他に、オリジナルな結婚式を希望するカップルや、現代社会で忙しく結婚準備に多くの時間を割けないベトナム人カップルにとって、全てを一括で依頼できる利点がある。 

さいごに

ベトナムでは、平均年間所得の上昇、初婚平均の年齢層と婚姻数の多さから、ブライダル市場の規模が拡大していることを述べた。一方で、市場としては成熟しておらず、成長期に差し掛かっているベトナムのブライダル業界は、若者たちの需要にどのように応えることができるかを模索している。以上の理由から、日本で蓄積した経験を基に、日本企業が参入するには、今が適した時期であるといえる。