ベトナム2026年9月から中古品輸入規制を再編
2026年9月5日、政令292/2026/NĐ-CPが施行され、ベトナムの外国貿易管理制度は新たな枠組みに移行した。同政令は2026年7月22日に政府が公布したもので、外国貿易管理法の一部条項と実施措置を具体化し、従来の政令69/2018/NĐ-CPに代わる規定である。
同日、ベトナム商工省は通達48/2026/TT-BCTを公布・施行した。同通達では、商工省の所管範囲における中古消費財および中古車両の輸入禁止品目をHSコード別に具体化している。
今回の変更を、日本企業は単に一部商品が輸入禁止リストへ追加された問題として捉えるべきではない。実務上重要なのは、商品の状態、HSコード、品目ごとの専門規制を確認し、自社の輸出・供給モデルが新制度に適合しているかを改めて検証することである。
特に中古品や使用済み製品から取り外した部品等を扱う企業では注意が必要となる。再生品や長期在庫品についても、名称だけで中古品と判断せず、商品の実態と関連規定に基づき個別に確認する必要がある。
ベトナム商工省系の解説でも、企業は政令292、通達48だけでなく、各品目に適用される専門規定も併せて確認する必要があるとされている。
ベトナムで輸入禁止となる中古品とは
政令292/2026/NĐ-CPでは、輸入禁止品目の一つとして複数の中古消費財が規定されている。 主な対象には、以下が含まれる。
- 繊維製品、履物、衣類
- 電子機器、冷蔵・冷凍機器、家庭用電化製品
- 室内装飾品
- 陶磁器、ガラス、金属、プラスチック、ゴム等で作られた家庭用品
- 中古の自転車、オートバイ、原動機付自転車
- その他、政令で指定された中古品
また、中古医療機器や中古デジタル技術製品なども禁止輸入品目として規定されている。
商工省通達48では、商工省所管の中古消費財および中古車両について、附属書IでHSコード別の詳細リストを定めている。
企業にとって重要なのは、商品の一般名称だけで判断しないことである。同じような商品名であってもHSコードが異なれば、異なる規制が適用される可能性がある。
反対に、企業側が「交換部品」「再生品」と認識していても、商品の実態やHSコードによっては中古品規制との関係を確認する必要がある。
そのため、日本からベトナムへ中古品を輸出してきた企業では、過去の通関実績だけを根拠に取引を継続するのではなく、現行規制に基づく再確認が欠かせない。
中古品輸入規制が日本企業に与える3つの影響
- 通関・物流リスク
第一の影響は、通関・物流面のリスクである。商品の状態やHSコードを誤って判断した場合、通関段階で問題が生じる可能性がある。その結果、貨物の留置、保管費用、再輸出、書類修正、ベトナム国内の顧客への納品遅延などにつながり得る。
サプライチェーンが長い企業では、一つの貨物の停滞が販売計画、在庫管理、販売代理店との関係にまで波及する可能性がある。
- 既存ビジネスモデルへのの影響
第二は、従来の中古品輸出モデルへの影響である。ベトナム事業の売上が輸入禁止対象となる中古品に依存している場合、従来の事業モデルを継続できる範囲は限定される。
企業は単に法令遵守の可否を見るだけでなく、商品構成、販売価格、収益構造まで含めて事業の持続可能性を見直す必要がある。
- サプライチェーンの再設計
第三は、供給方法そのものの見直しである。中古品輸出が難しくなる場合、日本から新品を輸出するのか、ベトナム向け商品を開発するのか、現地生産・委託生産へ移行するのかという選択が必要となる。
つまり、今回の規制対応は輸出入実務だけの問題ではなく、ベトナム事業全体のサプライチェーン設計にも関わる。
新品市場とベトナム現地生産に生まれる機会
- 新品への代替需要
中古品の供給が制限されれば、その一部が新品需要へ移行する可能性がある。耐久性、安全性、性能、アフターサービスを重視する顧客層では、日本製品が選択肢となる余地がある。
ただし、中古品需要のすべてが日本製新品へ移行するわけではない。価格差が大きければ、より低価格な新品へ需要が移る可能性もある。
したがって、「中古品の輸入禁止=日本製品の需要増」と単純に捉えるべきではない。
- ベトナム市場向け商品の開発
日本企業にとって重要なのは、日本国内向けの商品をそのまま輸出することではなく、ベトナム市場の需要に合わせることである。
機能、仕様、価格帯、販売方法などを市場に合わせて調整できれば、中古品に代わる選択肢として市場を開拓できる可能性がある。
- 現地生産・現地調達
日本からの輸入コストや販売価格が競争力を低下させる場合、ベトナムでの組立、生産、委託生産も選択肢となる。現地生産によって、コスト構造の見直し、供給期間の短縮、市場ニーズへの迅速な対応が可能になる場合がある。
また、生産投資、技術移転、ベトナム企業との協業を通じ、現地サプライチェーンにより深く参画することも考えられる。日本企業にとって、これは単なる商品変更ではない。ベトナム市場への参入モデルそのものを見直す課題である。
日本企業が検討すべき市場参入モデル
輸入規制が変化する中、日本企業が検討すべきなのは「輸出を続けるか、やめるか」という二択ではない。
まず、各商品カテゴリーについて、市場規模、顧客の受容価格、競合商品、品質要件、流通網、差別化要素を確認する必要がある。 そのうえで、以下のような市場参入モデルを比較することになる。
- 新品を日本から直接輸出する
- ベトナムの輸入業者・販売代理店を活用する
- 営業代行による市場開拓を行う
- ベトナム企業との生産協力を行う
- 現地生産へ投資する
各モデルでは、初期費用、事業管理の度合い、事業リスクが異なる。特に販売網が重要な消費財では、適切な販売代理店を確保できるかどうかが市場参入速度を左右する。一方、現地生産を選ぶ場合は、生産パートナー、サプライヤー、OEM先の選定が重要となる。
このため、輸入規制の変更は、日本企業が製品、価格、販売チャネル、生産モデルを含め、ベトナム事業戦略全体を見直す契機となり得る。
公開情報だけでは判断できない市場情報
法令を確認すれば、輸入禁止品目、HSコード、施行時期などは把握できる。しかし、実際の事業判断には、それだけでは足りない。例えば:
- 消費者需要は実際にどの方向へ移るのか
- 販売代理店はどの商品を求めているのか
- どの価格帯に市場余地があるのか
- ベトナム企業に代替生産能力があるのか
- 現地生産する場合、どのパートナーが適しているのか
- 競合企業はどのような対応を取っているのか
といった情報は、法令や公開統計だけでは把握しにくい。こうした局面では、実際に業界で活動する販売代理店、メーカー、輸入企業、専門家等へのヒアリングが、市場仮説を検証する手段となる。
公開情報と現場情報を組み合わせることで、商品投入、販路開拓、現地生産などの判断精度を高めることができる。
ONE-VALUEの支援
ONE-VALUEは、日本企業向けにベトナム市場調査、市場参入戦略、販売代理店・生産パートナー探索などの支援を提供している。
さらに、ONE-VALUEでは、企業が必要とする業界情報について、現地の専門家や実務経験者へのヒアリングを活用できる。例えば、以下のようなニーズに対応できる。
- 市場仮説を専門家に確認したい
- 販売代理店やメーカーの実態を把握したい
- 公開情報では得られない業界情報を収集したい
- 業界経験者との面談を実施したい
- 特定テーマについてONE-VALUEへヒアリング調査を委託したい
中古品から新品への切り替え、ベトナムでの販路開拓、現地生産を検討する企業にとって、適切な関係者から直接情報を得ることは、市場調査の時間を短縮し、意思決定に必要な情報を補完する手段となる。
ベトナムの消費財、電子・家電、流通、製造分野について、より詳細な情報収集や関係者への直接ヒアリングをご希望の場合、ONE-VALUE Eを通じて、現地専門家へのインタビューや調査委託が可能である。
まとめ
2026年9月5日に政令292/2026/NĐ-CPと商工省通達48/2026/TT-BCTが施行され、ベトナムにおける中古消費財の輸入管理は新たな枠組みに移行した。
日本企業にとって重要なのは、中古品の輸入可否だけではない。
既存の中古品輸出モデルが難しくなる場合には、新品輸出、ベトナム市場向け商品の開発、販売代理店の開拓、OEM・現地生産などを含めて事業モデルを再検討する必要がある。
一方、中古品規制が自動的に日本製新品の商機につながるわけではない。需要、価格、競争環境、流通構造、生産能力を確認したうえで、市場参入方法を判断することが重要である。
そのためには、法令・統計といった公開情報に加え、販売代理店、メーカー、輸入企業など、実際の市場関係者から得られる情報も有効となる。
ONE-VALUEは、市場調査、市場参入戦略、パートナー探索などに加え、ONE-VALUEを通じた専門家ヒアリングにも対応している。
ベトナムの中古品輸入規制を受け、自社商品の販売戦略や現地生産の可能性を検討している企業は、市場調査と現地関係者へのヒアリングを組み合わせながら、自社に適した参入モデルを見極める必要がある。
ONE-VALUEのチーム
参考リンク:
Cổng thông tin điện tử Bộ Công Thương
