私は、ベトナム投資の判断基準に「時間」が加わったと考えています。技術や品質、価格、企業としての信用は、これまで通り重要です。ただ、必要な時期に結論を出せるかどうかも、いまや相手選びを左右します。
日本企業は丁寧な検討を強みにしてきましたし、その姿勢自体を否定するつもりはありません。問題は、その進め方が成長市場の時間感覚と合わなくなっていることです。私は、この点を日本企業にもっと率直に伝えなければならないと感じています。
いま、ベトナム投資の最初の判断で足が止まっている企業もあるでしょう。
政策、市場、競合企業の動きは短期間で変わります。何を優先して確認すべきか迷っているなら、ONE-VALUEが現地の最新情報を基に論点を整理します。
無料相談・お問い合わせはこちら: ONE-VALUEに相談する
講演後に修正した認識
先日、ベトナム財政省ハノイ副局長へのインタビューに先立ち、日本企業と取引するベトナム企業に講演しました。そこで私が伝えたのは、日本企業との仕事には時間がかかるという現実です。M&Aなら1年、発注でも3か月を要する場合がある。だから焦らず、相手の手続きを理解しながら丁寧に関係を築いてほしい。私はそう説明しました。
ところが講演後、副局長から思いがけない言葉を受けました。「その説明は5年から10年前なら正しい。しかし、いまのベトナムには当てはまらない」。日本企業に合わせられたのは以前までで、現在の成長速度では長い意思決定を待てない。そういう趣旨でした。私は、その場で自分の認識を見直さざるを得ませんでした。
正直に言えば、私はベトナム企業に日本の商習慣を説明することばかり考えていたのだと思います。しかし、それだけでは日越間の摩擦は解消しません。相手国が変わった以上、日本側も判断の仕組みを見直す必要がある。今回の対話を通じて、ベトナム側に待つことを求める前に、日本側にも変化を求めるべきだったと気づきました。

成長国では時間が競争条件になる
ベトナムはいま、二桁成長を目指しています。副局長の説明では、成長目標を達成できない地方では責任者の交代も起こり得る。行政も企業も、それほど切迫した環境で結果を求められているのです。日本側にとっては通常の稟議期間でも、ベトナム側から見れば投資計画や事業計画を止める時間になりかねません。
ベトナムが海外投資を必要としていることは確かです。だから日本企業を待ってくれるはずだと考えるなら、私は危険だと思います。ベトナムはすでに投資国を選べる市場になりました。成長に対応できる速度が、新しい選別条件になっている。副局長は、その条件を現在満たしているのは中国企業だけだと指摘しました。日本企業にとって、かなり重い言葉ではないでしょうか。
日本企業の信頼と決断速度のねじれ
私は、日本企業への信頼が失われたとは思っていません。製品の品質、契約を守る姿勢、長期的な取引への評価は、いまも高い。ただし、信用があれば案件を獲得できるとは限りません。判断が遅れれば、相手企業はより早く条件を示した企業を選びます。過去の信用と、現在の競争力は分けて考えるべきでしょう。
副局長から、もう一つ象徴的な話を聞きました。ベトナムのトップクラスの大学の卒業式で、かつて日本企業が座っていた最前列の主要席に、いまは中国企業が座っているというのです。私はこの変化を、単なる席順の話だとは受け止めませんでした。人材や投資機会との接点は、過去の評価だけでは維持できない。現在の市場で選ばれる条件を、毎回満たさなければならないのです。
ベトナム企業との交渉が進まないとき、価格や条件だけを見直しても解決しないことがあります。
回答期限や意思決定の進め方に原因があります。日越双方の商習慣を知るONE-VALUEなら、相手が何を待ち、どこで交渉が止まっているのかを読み解けます。
無料相談・お問い合わせはこちら:ONE-VALUEに相談する
円安と投資時期
さらに、日本企業には円安という難題があります。私は、10年後には円の購買力が現在より下がっている可能性が高いとみています。もちろん、為替を正確に予測することはできません。ただ、ベトナム企業の価値や賃金、土地、設備の価格が成長に伴って変わることは、投資判断に織り込んでおくべきです。
だからといって、私は投資を急げと言っているわけではありません。お伝えしたいのは、先送りにも費用があるということです。現在の為替だけを見て判断を止めれば、円の購買力と案件そのものを同時に失うかもしれない。待つ場合のリスクまで比べてこそ、経営判断と呼べるのではないでしょうか。

企業ごとに異なる解決策
ここまで読んで、「では、日本企業は何をすればよいのか」と思われた方もいるでしょう。もっともな疑問です。ただ、私は一般論をそのまま当てはめるべきではないと考えています。M&Aでは対象会社の状況、売り手の意向、許認可、統合後の運営まで見なければなりません。取引や提携なら、発注条件や品質確認、現地側の資金事情が時間軸を左右します。
つまり、必要な速さは案件ごとに違います。具体策を決めるには、日本本社の決裁構造とベトナム側が置かれている状況を、同時に見なければならない。どちらか一方だけを見ても答えは出ません。ここから先は、個別の案件を見て初めて判断できる領域です。
では、自社の場合は何を変えるべきなのか。
そこを詳しく知りたい方は、ぜひ私たちにご相談ください。
ONE-VALUEはベトナムの最新動向と日越双方の経営実務を踏まえ、投資候補の探索、事業性評価、交渉、デューデリジェンス、PMIまで支援します。両国の速度差で案件が停滞しているなら、状況に合った進め方を一緒に考えます。
無料相談・お問い合わせはこちら:ONE-VALUEに相談する
日越間の判断をつなぐ役割
私たちONE-VALUEは、日本企業がなぜ確認に時間をかけるのかを理解しています。その一方で、ベトナム企業がなぜ早い返答を求めるのかも分かります。私は、どちらか一方に「相手に合わせてください」と求めるだけでは前に進まないと思っています。双方の前提や期限、リスクを整理し、現実に実行できる判断の進め方をつくる。それが私たちの役割です。
日越間の速度差を文化の違いとして放置すれば、取引の損失につながります。一方で、この違いをきちんと整理できれば、日本企業の慎重さを保ちながら、ベトナム側が必要とする時期に結論を示すことは可能です。M&Aや投資で何を優先し、どこまで時間を短縮するのか。その答えは、案件を見なければ出せません。
ONE-VALUEにご相談ください
ONE-VALUEでは、ベトナム進出、M&A、現地パートナー探索、事業戦略の策定から実行支援まで、日越ビジネスを幅広くサポートしています。意思決定のスピードを上げながら、必要な調査とリスク管理を両立する進め方をご提案します。
- ベトナム進出・事業戦略コンサルティング
- M&Aアドバイザリー・投資先候補の探索
- 現地パートナー探索・商談支援
- 市場調査・事業性評価
- 視察・商談ツアー
無料相談・お問い合わせはこちら:お問い合わせフォームを開く
フィ ホア(ONE-VALUE株式会社 代表取締役)
2008年、日本政府(MEXT)の国費留学生として来日。大阪大学大学院経済学研究科経営学系を修了後、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社に入社。ベトナム事業拡大のリーダーとして、多くの日本企業のベトナム進出を支援する。約10年にわたる経営コンサルティング実務経験を有し、主な専門領域は再生可能エネルギー、木材製造、医療、IT、農業、教育など。2018年、ベトナムに特化した経営コンサルティング会社ONE-VALUE株式会社を設立。日本とベトナムの経済・ビジネス関係の活性化、日本在住の外国人人材の生活向上という2つのビジョンを掲げている。
