1. はじめに
ベトナム電力グループ(EVN)は2025年5月10日から電力の平均小売価格を1kWhあたり2,204.07ドン(約12.3円、付加価値税除く)に4.8%引き上げた。この改定は2023年以降4回目の値上げに当たり、急速な工業化に伴う電力需要増大や燃料コストの高騰を背景とする。日本企業・投資家向けに今回の動向を分析し、政策背景から今後の展望まで整理する。
2. 政策背景と電力価格改定の理由
電力需要の増加 ベトナムでは経済成長とともに電力需要が急増しており、2025年~2030年には商用電力の需要成長率が前年比約12-16%%と見込まれている。電力供給の安定確保が喫緊の課題となっている。
発電構成の変化 水力発電が全体の約25%にとどまり、残る75%はコストの高い火力発電や再生可能エネルギーで賄われている。気象条件による水力発電量の変動もあり、全体的なコスト上昇を招いている。
燃料費・為替コストの高騰 石炭、LNG、重油などの輸入燃料価格が高騰しており、ドル高による為替コストの上昇も発電コストを押し上げている。EVNは近年、大規模な赤字を計上しており、コスト構造の見直しが求められている。
制度改正と料金改定の実施 政府の電力法改正や関係政令・通達の整備により、EVNは2025年5月に平均価格を2,204.07ドン/kWhへ引き上げた。政府は顧客グループ別の料金区分も定め、体系的な価格制度の導入を進めている。
今回の値上げにより、EVNの財政難の要因となっていた発電コストが販売料金を上回る逆ざや状態の解消が期待される。
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