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ベトナムにおける介護を徹底解説:価値観・現況・市場構造・将来予測 

ベトナムにおける介護を徹底解説:価値観・現況・市場構造・将来予測

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ベトナムにおける介護を徹底解説:価値観・現況・市場構造・将来予測

レポート基本情報

– ページ数(企業紹介ページを除く)25 ページ
– 発行年月日:2025年5月
– 発行:ONE-VALUE株式会社
– ファイル形式:PDF形式
– 価格:ページのフォームからお問い合わせください
– 購入方法:
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ベトナムの高齢化社会の現状と将来展望 

ベトナムは急速な高齢化が進行している国である。2019年時点で65歳以上の人口は総人口の約11.9%(約1141万人)に達し、2030年代半ばには20%近くに達すると予測されている。2024年には65歳以上が9.3%、60歳以上は1420万人に達し、2019年から280万人増加した。2030年には60歳以上人口が1800万人に達する見込みである。国連の基準に基づくと、ベトナムは2011年に「高齢化社会」(65歳以上人口7%以上)に入り、2036年には「高齢社会」(14%)、2049年には「超高齢社会」(21%)へと急速に移行するとされる。この26年程度での移行は、先進国の数十年から1世紀に比べて非常に短期間であり、「豊かになる前に老いる(Get old before getting rich)」という典型的な課題を抱えている。 

高齢者扶養率(65歳以上人口を15~64歳人口で割った比率)は2019年に0.11であったが、2039年には0.22に倍増すると予測されている。つまり、約5人の労働者が1人の高齢者を支える負担となり、社会保障や医療に大きな圧力がかかる。2024年時点で労働年齢人口(15~64歳)は67.4%であるが、出生率の低下により労働力人口は減少傾向にあり、2050年代には人口減少が始まる可能性も指摘されている。 

世帯構造では、伝統的に高齢者の61.3%が成人した子どもと同居している。特に女性高齢者や80歳以上の高齢者で同居率が高い。一方で夫婦のみの世帯が19.4%、ひとり暮らしが8.6%存在し、完全な独居は3.7%程度である。都市化や若年層の移動により、都市部では核家族化が進み、高齢者のみ世帯や独居高齢者が増加している。農村部でも若年層の都市移住によって高齢夫婦のみや独居世帯が増え、2019年には高齢者の13.7%が独居となり、10年前より増加している。農村部の高齢者は全体の約67%を占めるが、都市部への人口シフトにより将来的には都市部の高齢者が農村の2倍になるとの予測もある。 

高齢者の価値観と生活実態 

本章は高齢者の価値観と生活実態について解説する。

介護・リハビリサービスの定義 

ベトナムにおける「介護サービス」とは、高齢者の日常生活動作の介助や健康管理、精神的ケアを含む幅広い支援を指す。具体的には食事、排泄、入浴の介助や服薬管理、移動の手助け、見守りや話し相手などがある。一方「リハビリサービス」は、身体機能の回復訓練や理学療法、作業療法など医療と介護の中間的なサービスである。日本のような公的介護保険制度がないため、これらのサービスは家族による私的ケアやボランティア活動が中心で、独立したサービス産業としては発展途上である。 

家族介護と外部介護 

ベトナム社会では儒教的な家族観により「老親の世話は子の義務」とされ、家族が最も重要な介護の担い手である。多くの高齢者は子どもや親族から日常的な介護を受けており、同居していなくても近所に子どもが住み世話をする例が多い。親を敬い世話することは道徳的責務とされ、家族介護は美徳とされている。高齢者本人も子どもと同居し世話になることを当然視する傾向が強い。しかし近年、核家族化や海外出稼ぎの影響で子どもが側にいない高齢者も増加しており、身内がいなければ親戚や地域コミュニティ、有償の外部ヘルパーに頼るケースもあるが、公的・民間の介護サービスはまだ限定的である。施設介護に対する心理的抵抗も根強く、親を施設に入れることは「不孝」と考える人も多い。 

都市部と農村部の差異 

都市部では世帯人数が少なく、夫婦のみや独居高齢者が多い。都市の高齢者は公的年金や退職金を受給している割合が高く、経済的に自立している人も多い。都市部では家事代行やデイサービスなど外部サービスの利用が徐々に増えているが、主に富裕層に限られる。農村部では伝統的な拡大家族が多く、複数の子どもと同居または近居しているが、若年層の都市移住により高齢夫婦のみや独居高齢者が増えている。農村部の介護サービスはほとんど存在せず、地域住民や親族の非公式な助け合いに依存している。農村高齢者の経済的自立率は低く、貧困率は都市部の約2倍に達している。 

介護に対する世代別価値観 

本章は介護に対する世代別価値観について解説する。

60代以上(現高齢者世代) 

この世代は大家族の中で老親を看取る伝統的価値観を持ち、子どもに世話をしてもらうことを当然視している。多くは子と同居し、できる限り子の世話になりたいと考える。施設介護に対しては慎重で、「老人ホームは身寄りのない人や貧しい人が入る場所」と考える人が多い。最期まで自宅や子ども宅で過ごすことを望む傾向が強い。 

40~50代(中年世代) 

親の介護と子育てを同時に担う「サンドイッチ世代」である。親の介護は義務と考える一方、共働き世帯が増え時間的余裕がなく葛藤も多い。経済的に余裕があればヘルパー雇用や有料老人ホーム利用も検討するなど、外部サービス利用に前向きな面もある。自身の老後に備え、経済的準備や子どもへの依存度の見直しを始めている。 

20~30代(若年世代) 

グローバル化や核家族化の中で育ち、親との同居経験が少ない。結婚後は夫婦のみの世帯を構えることが多く、親の介護をフルタイムで行うことは難しいと考える。老後は子どもに頼らず経済的自立を目指し、介護ロボットやオンライン介護サービスなど新しい介護形態を受け入れる傾向がある。家族介護の精神は残しつつも、経済的援助や外部サービス利用による支援にシフトしつつある。 

高齢者の介護サービスの分類と現状

本章は高齢者の介護サービスの分類と現状について解説する。

身体的介護ニーズ 

高齢者の約15%が日常生活動作の介助を必要とし、26%が歩行困難、20%が認知力低下を感じている。80歳以上では慢性疾患を複数抱えるケースが多く、健康管理や服薬支援、リハビリが必要である。高齢者は運動やリハビリの機会を強く求めているが、サービスは不足している。 

精神的ケアニーズ 

孤独感や社会的孤立が深刻で、68%が意味ある人間関係を望んでいる。高齢者クラブや地域活動が盛んだが、精神的ケアやカウンセリングの需要も高い。自己有用感を持つ機会として、働く・ボランティアの場も求められている。 

在宅介護と施設介護の意識 

多くの高齢者は「自宅や子ども宅で最期まで過ごしたい」と考え、施設介護には抵抗感が強い。2019年調査で施設介護を知る人は7%程度で、施設入所者は高齢者全体の0.1%に過ぎない。都市部の高学歴層には施設利用を前向きに考える人も増えている。 

ベトナム特有の課題 

公的年金の適用範囲が限定的で、農村部や非正規労働者出身の高齢者は経済的に不安定である。医療・介護サービスの地域格差も大きく、地方の高齢者は医療機関や介護施設へのアクセスが困難である。精神的問題や世代間ギャップによるストレスも高齢者のQOLを低下させている。 

高齢者の介護ニーズと課題 

本章は高齢者の介護ニーズと課題について解説する。

サービス需要の増加 

高齢者人口の増加と家族構造の変化により、介護サービス需要は急拡大している。政府も高齢化を課題であると同時にビジネス機会と捉え、介護サービスの拡充を目指している。 

供給体制の脆弱さ 

現在の介護サービスは断片的で地域や提供主体によってばらつきが大きいが、多くは基本的なケアのみ提供にとどまっている。公的施設は主に貧困高齢者向けで、全高齢者の施設入所率は0.1%程度にとどまる。人手不足やリハビリ設備不足など課題も多い。 

政府の取り組みと国際協力 

保健省は「2030年までの高齢者保健ケア行動計画」を策定し、各省に高齢者ケア施設設置を目標とする。国際機関(世界銀行、JICA、UNFPA、ADB)や日本、韓国、シンガポール企業の支援・投資も活発で、日本式介護施設の開発や人材育成が進んでいる。 

訪問介護サービスの普及課題 

在宅介護志向が強いものの、専門の訪問介護事業者は少なく、公的制度も未整備である。サービスの存在を知らない高齢者も多く、家族介護が中心となっている。心理的抵抗や費用負担も普及の障壁となっている。資格制度や制度的支援が整わず、訪問看護も限定的である。 

結論 

ベトナムは急速な高齢化に直面し、伝統的な家族介護中心の社会から多様化・市場化する介護サービスへの転換期にある。高齢者の身体的・精神的ニーズは多様であり、特に農村部の経済的困難や医療・介護サービスの地域格差が深刻な課題である。介護市場は拡大が期待されるが、現状の供給は需要に追いついておらず、専門人材不足や制度未整備が障壁となっている。政府の政策強化や国際協力、外国資本の参入が進む中で、在宅介護やデイケアなど新たなサービス形態の普及が鍵となる。世代間の価値観変化も進み、今後は家族と社会が協調して高齢者を支える持続可能な介護モデルの構築が急務である。 

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