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ベトナム製造業の「現地調達38.1%」をどう読むか――サプライヤー探索はリスト作成ではなく交渉設計である

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「ベトナムでこの部品を作れる会社を探してほしい」。ONE-VALUEには、日本企業からこうした相談が継続的に入る。図面があり、材質が決まり、年間使用量も分かっている。日本では既存サプライヤーから安定して調達しているが、ベトナム工場の拡張やサプライチェーン見直しを機に、現地調達へ切り替えたい。

企業データベースで同じ業種を検索し、10社、20社を並べれば終わるようにも見える。実務では、候補企業の名前が見つかった時点はまだ入口だ。会社案内に「精密加工」「日系対応」「ISO取得」と書かれていても、自社図面を量産条件で作れるか、必要な設備投資をする意思があるか、目標価格に近づける余地があるかは別の話になる。

JETROの2025年度調査では、在ベトナム日系製造業の現地調達率は38.1%と前年から1.5ポイント上昇した。ベトナム地場企業からの調達は18.3%で過去最高となり、今後1〜2年で現地調達を拡大すると答えた企業も49.4%に上る。数字は前進を示す一方、調達全体の6割超がなお国外に依存し、地場企業からの直接調達は2割に届いていない。

この差を埋めるには、サプライヤーを「探す」だけでは足りない。品質、設備、工程能力、材料、MOQ、価格、納期、認証、意思決定者、追加投資の意思まで確認し、条件が合わなければ取引可能な形に組み替える。調達は検索ではなく、事業開発に近い。

この記事で分かること

  • ベトナムの日系製造業の現地調達率38.1%を、どのように読むべきか
  • 候補企業リストから「量産できる1社」へ絞り込むための確認項目
  • 品質、MOQ、価格、設備投資などのギャップを交渉で埋める考え方

38.1%は「進んだ数字」でもあり、「余地が残る数字」でもある

JETROの2025年度「海外進出日系企業実態調査」によると、ベトナムの日系製造業の現地調達率は38.1%だった。ASEAN全体は42.9%で、ベトナムはなお下回る。現地調達の内訳を見ると、ベトナムでは地場企業が48.1%、現地進出日系企業が38.5%、その他外資系企業が13.4%を占める。

調達全体に占めるベトナム地場企業からの調達は18.3%まで上昇し、調査開始以来の最高水準となった。2016〜2024年は15%前後で伸び悩んでいたため、この変化は小さくない。JETROのベトナム分析でも、今後1〜2年の現地調達を「拡大」とした企業は49.4%だった。

一方、JETROが挙げる現地調達の課題では、「現地で原材料を供給できるメーカーがない」「現地調達先の品質や技術力が不十分」が上位に残る。VCCIが同調査を紹介した記事では、地場サプライヤーの品質・技術力不足を課題とする割合は54.4%とされた。現地化への意欲と、調達先の実力との間にはまだ距離がある。

したがって38.1%は、「ベトナムで十分に調達できるようになった」という数字でも、「まだ調達先がない」という数字でもない。取引可能な企業が増えている一方、日本企業側が要求仕様と商業条件を調整しながら育てる余地が大きい市場と読む方が実態に近い。

図1 ベトナムの日系製造業、現地調達率は38.1%
指標ベトナム比較・補足
現地調達率38.1%ASEAN全体 42.9%
地場企業からの調達18.3%過去最高
現地調達「拡大」意向49.4%今後1〜2年

製造業の高度化で、サプライヤーの能力も競争も上がる

供給側の環境は速く変わっている。ベトナム国家統計局によると、2026年1〜9月の製造業IIPは前年同期比12.9%増、9月単月では17.1%増だった。8月の14.6%増からさらに伸び、製造業は高い増勢を保っている。

7月のMTA Vietnam 2026には1万3,324人が来場し、JETROのジャパン・パビリオンには産業用機械・部品、測定機器、金属切削などの日本企業26社が出展した。JETROは、ベトナム地場企業が生産性や受注競争力を高めるため、高品質な日本製品への切り替えを検討する動きや、装置メーカーとの協業商談があったと報告している。

同時期には、日系企業とベトナム企業のマッチングを通じて現地調達を広げる「ホーチミン部品調達展示商談会」も開催された。ベトナム側の供給能力を引き上げ、外資系企業のサプライチェーンに組み込む動きは、政策・民間の双方で続いている。

製造業の質も変わる。Reutersは2026年5月、Samsung Electronicsが約15億ドルを投じ、ベトナム北部に同社初の半導体テスト工場を計画していると報じた。電子・コンピューター・部品の輸出は2026年1〜5月で約562億ドル、同品目の輸入も前年同期比57.1%増の882億ドルに達した。より高度な工程が増えれば、測定、精密加工、治具、材料、保守など周辺産業にも要求水準の引き上げが波及する。

日本企業にとっては選択肢が増える反面、良いサプライヤーを巡る競争も強くなる。中国、韓国、台湾系企業も同じ工場、人材、設備能力を求めている。候補企業を見つけた後の交渉速度が、調達可否を左右する場面は増える。

リスト作成で止まると、なぜ商談につながらないのか

サプライヤー探索で最初に集まる情報は、会社名、所在地、従業員数、売上、主な製品、認証、設備一覧などである。絞り込みには必要だが、量産判断には足りない。

たとえば「CNC加工対応」と書かれていても、設備メーカー、軸数、年式、台数、稼働率、対応材質、最大ワークサイズ、測定環境まで確認しなければ、自社図面への適合は判断できない。「日系取引あり」も同じである。量産部品を継続供給しているのか、単発の治具を納めたのかでは意味が違う。

さらに見落とされやすいのが、誰が答えているかだ。営業担当が「できない」と回答しても、オーナーが大口案件と判断すれば追加設備を入れることがある。逆に営業担当が即答で「できる」と言っても、工場長に確認すると工程能力が足りないこともある。設備の有無と同じくらい、意思決定者と投資判断の仕組みを把握する必要がある。

会社案内やWebサイトは仮説を作る材料である。最終判断は、担当者への一次ヒアリング、工場訪問、見積、サンプル、試作で更新していく。

要求仕様を「絶対条件」「改善可能」「交渉可能」に分ける

日本企業が陥りやすいのは、日本で長年付き合ってきた既存サプライヤーと同じ状態を、初回面談から求めることだ。品質保証体制、測定機器、材料トレーサビリティ、納期管理、改善活動、文書様式まで全てを満たす企業だけを残すと、候補が急速に減る。

安全部品、医療、航空、重要保安部品など、妥協できない品質・法規要件は当然ある。ただし、全項目が同じ重さではない。現在持っていない測定機器を案件成立後に購入できるなら、それは技術能力の欠如ではなく投資条件の問題かもしれない。品質文書が日本式ではなくても、工程能力が安定しているなら、文書化を立ち上げる余地がある。

MOQが合わなければ年間数量や複数品番を束ねる。指定材料の調達が難しければ、日本側からの材料支給を検討する。専用治具の負担が重ければ、試作合格後の発注保証と組み合わせる。ギャップを「不合格理由」として並べるのではなく、何を変えれば取引できるかに置き換える。

私は、ベトナムのサプライヤー探索では、この整理が特に大切だと考えている。最初から100点の企業が見つからない場合でも、80点の企業に何を変えてもらえばよいかを判断できれば、選択肢は増える。ただし、品質文化、経営者の信頼性、財務不安など、構造的に埋まらない差は早く見切るべきだ。

図3 「80点の候補」を取引可能にするギャップ分類

Search、Verification、Negotiationの3段階で考える

サプライヤー探索は三段階に分けると整理しやすい。第一はSearch。市場にどの会社が存在するかを広く把握し、加工法、設備、地域、顧客業界などでロングリストからショートリストへ絞る。

第二はVerification。本当に作れるのかを一次情報で確認する。設備を何台持つか、どの材料を扱うか、主要顧客はどの業界か、不良発生時に原因分析ができるか、工程データを残しているか。工場訪問では、会社案内と現場が一致しているかを見る。

第三はNegotiation。現在の条件で合わなければ、何を変えれば取引できるかを設計する。価格、MOQ、納期、支払、金型、治具、設備投資、需要見通し、品質保証、検査方法まで変数にする。

この順番で進めると、「候補企業を何社見つけたか」というKPIから離れられる。欲しいのは10社のExcelではなく、試作から量産へ進められる1社である。

図2 サプライヤー探索は Search → Verification → Negotiation

「日本側は発注リスク、ベトナム側は投資リスク」を分けて考える

交渉が止まりやすい典型例がある。日本企業は「品質が読めないので、まず少量で試したい」。ベトナム企業は「少量では採算が合わず、専用治具や設備も買えない」。日本側は実績がない企業へ数量を約束できず、ベトナム側は発注保証がない案件へ投資できない。

対立しているように見えるが、取っているリスクが違う。日本側は調達先リスクを抑えたい。ベトナム側は先行投資リスクを抑えたい。ならば、リスクを時間軸で分ければよい。

既存設備で試作品を作る。合格後に小ロットを発注する。一定の品質・数量が確認できた段階で専用治具を入れる。量産承認後に追加設備を導入する。日本側は一定期間の需要見通しを共有し、ベトナム側は量産開始後の価格低減条件を提示する。

こうした段階設計は、単価を押し下げる交渉とは違う。双方が引き受ける不確実性を分け、次の投資判断ができる条件を作る作業である。

図4 先行投資リスクを段階化するdeal design
ベトナムで候補工場は見つかっているものの、
品質・MOQ・価格・設備投資の条件が合わず案件が止まっている場合、
ONE-VALUEが候補先への一次ヒアリング、工場確認、見積・条件交渉、試作フェーズまで支援します。
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価格交渉は「20%下げてほしい」から始めない

価格も同じ構造で考えられる。日本企業が「現在のサプライヤーより20%安くしてほしい」と伝え、ベトナム企業が「これ以下は無理」と返せば、それ以上の議論は進みにくい。

材料費、加工時間、歩留まり、金型・治具の償却個数、検査工数、梱包、物流、支払サイトを分ける。年間数量を保証すれば単価は下がるか。複数品番をまとめれば段取りが減るか。支払を短縮すれば資金コストを下げられるか。梱包仕様を簡素化できるか。

単価の差を「値下げ要求」にせず、「どの条件を変えれば総コストが下がるか」という議論に変える。ここまで進むと、日本側の仕様とベトナム側の製造条件を翻訳する役割が必要になる。

ONE-VALUEがこの領域で重視するのは、言語の通訳だけではない。日本企業の内部基準を、ベトナム企業が判断できる設備、数量、価格、期限に落とす。ベトナム企業の曖昧な「できます」を、工程能力、投資額、納期、責任者へ置き換える。交渉を前に進めるための翻訳である。

現地調達率をKPIにし過ぎない

ここで反対側の論点も押さえておきたい。現地調達率が高いほど良い、とは限らない。品質、供給安定性、知的財産、規制、総コストを考えると、日本や第三国から買い続ける方が合理的な部品もある。

調達の目的は現地化そのものではなく、競争力を上げることである。物流費、リードタイム、在庫、為替、地政学リスクを下げられる部品から優先する。逆に、代替困難な材料や重要品質部品は、複線化だけ先に進める選択もある。

現地化の候補を決めるときは、部品ごとの年間購入額、物流費、在庫日数、不良コスト、調達先集中度、切替に必要な認証・金型・設備を並べる。現地化率50%という数字を先に置くより、「どの10億円を移せば利益と供給安定性が最も改善するか」と考える方が経営判断として使いやすい。

調達は検索ではなく、事業開発である

ここからは私個人の見方になる。ベトナムのサプライヤー探索で最ももったいないのは、候補企業を見つけた後に「今は条件を満たしていない」と判断し、そこで終えることだと思っている。

ベトナムの製造業は変化が速い。昨日は設備を持っていなかった会社が、大口顧客を取れば半年後に機械を導入することがある。日系との取引経験がなかった企業が、一社との取引をきっかけに品質管理を大きく変えることもある。静止画で企業を見ると、その伸びしろを見落とす。

もちろん、全ての候補を育成すべきではない。技術的に不可能な会社、品質文化が合わない会社、財務面で危険な会社、約束が繰り返し守られない会社に時間を使う必要はない。だからこそ、早い段階で「改善可能なギャップ」と「構造的に埋まらないギャップ」を分ける。

日本側の調達担当者だけでは、ベトナム企業のオーナーまで届かないことがある。ベトナム側の営業担当者だけでは、日本本社がなぜその公差や検査記録を求めるのか理解できないことがある。その間に立ち、条件を具体化していく。候補を探す、会う、工場を見る、数字を確認する、できない理由を聞く、条件を変える、試す、合意する。この一連の仕事まで含めてサプライヤー探索だと考えている。

ONE-VALUEが支援できる範囲

ONE-VALUEでは、ベトナムのサプライヤー・OEM先探索について、ロングリスト/ショートリスト作成、現地企業への一次ヒアリング、工場視察、見積取得、MOQ・単価・納期・支払条件の交渉、サンプル評価、量産後の品質・納期フォローまでを支援範囲としている。

今回のような製造業案件では、要求仕様を整理したうえで、設備・工程・材料・品質・顧客・意思決定者を確認し、必要に応じてオーナーや経営陣との商談までつなぐ。OEM/ODM、加工委託、調達先の複線化、サプライチェーン再構築など、目的によって探索の設計は変わる。

現地調達率38.1%という平均値そのものより、自社の調達額のうち、どの品目をベトナムへ移すと競争力が上がるか。その品目を任せられる企業はどこか。現在は任せられないなら、何を変えれば任せられるか。この三つに答えることが、実務としてのサプライチェーン戦略になる。

ベトナムでの現地調達、サプライヤー・OEM先探索、加工委託、調達先の複線化の検討は、
ONE-VALUEへご相談ください。候補探索だけでなく、
工場訪問、技術・商流確認、商談設定、価格・MOQ・品質・設備投資条件の交渉まで一体で支援します。
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まとめ|「良いサプライヤーを見つける」から「良い取引を作る」へ

ベトナムの日系製造業の現地調達率は38.1%まで上がり、地場企業からの調達も18.3%と過去最高になった。製造業IIPの高い伸び、半導体を含む高度化、部品調達商談会の活発化を見ても、供給基盤は厚くなっている。

一方、品質・技術力、原材料、設備能力などの課題は残る。だから、企業名を検索して比較するだけでは足りない。Searchで候補を広げ、Verificationで能力を確かめ、Negotiationで取引条件を作る。

日本企業の競争力を左右するのは、「良いサプライヤーを見つける能力」から、「良いサプライヤーとの取引を作る能力」へ移っている。ベトナムでの現地調達を次の段階へ進めるなら、候補リストではなく、量産までの道筋を成果物にする必要がある。

参考資料・出典

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