はじめに
皆さま、こんにちは。ONE-VALUE 株式会社代表のホアです。
「ベトナムに進出したい」というご相談をいただく際、最初の壁として多くの企業が直面するのが「現地法人の設立」です。制度上の手続きは公表されているものの、実際に動き出すと「思っていたより複雑だった」「時間がかかって事業開始が遅れた」というケースが後を絶ちません。ベトナムに進出した企業の約67.5%が「行政手続きに時間を要する」ことを懸念しているというデータもあります。
今回は、ベトナムでの会社設立プロセスの全体像と、現場でよく見られるトラブルの実態、そして失敗を避けるための3つの条件をお伝えします。
会社設立の全体流れ—3段階のライセンス
ベトナムへの参入形態には、現地法人(子会社)設立のほか、駐在員事務所、M&A、代理店契約などがあります。中でも本格的なビジネス展開を目指す場合、多くの日系企業が選ぶのが現地法人の設立です。
会社形態の選択から始まります。日本の株式会社に相当する形態を設立する場合、ベトナムの株式会社は発起人が最低3名必要なため、日本の親会社1社が単独出資するケースでは、1人または2人以上の出資者で設立できる有限会社を選ぶのが一般的です。
次に、外資企業がベトナムで会社を設立するためには、まず投資登録証明書(IRC)を取得し、その後に企業登録証明書(ERC)を取得するという2段階の手続きが必要です。IRCの有効期限は最長50年ですが、日本の登記簿謄本に相当するERCには期限がありません。法人設立後は、銀行口座開設・税務や社会保険の登録・労働契約や就業規則の整備が続きます。さらに、小売・建設・教育といった特定の事業を営む場合は、別途サブライセンス(営業ライセンス)の取得も求められます。
現場で頻発する4つのトラブル
制度の概要だけ見ると「手続きさえ踏めばできる」と思われがちですが、実務の現場はそう単純ではありません。弊社がご支援してきた多くの案件を通じて見えてきた、実際によく起きる問題をご紹介します。
まず、現在ベトナム全土で進行中の行政区画の再編(63省・市から34省・市への統合)が、ライセンス審査の遅延を引き起こしています。担当者の不在や権限の空白が生じており、通常なら数週間で下りる許可が数ヶ月待ちになるケースも現れています。
次に、税制・法制度の頻繁な変更です。法人税・個人所得税・VAT等の規制が唐突に改正されることが多く、リアルタイムでキャッチアップできていないと、不適切な経費処理やコンプライアンス違反による罰金リスクに直面します。「知らなかった」では済まされないのが現実です。
3つ目が、オフィス選定における「鶏と卵」問題です。IRCを申請するためには事前に物件を確保する必要がありますが、申請から認可まで数ヶ月かかるため、その間の空家賃が発生します。さらに、IRC登録が法的に不可能な物件を知らずに選んでしまうリスクもあります。物件選びは登記上の要件を確認した上で進める必要があります。
4つ目は、外国人労働許可証(ワークパミット)の取得厳格化です。基本的には「大卒以上」かつ「学位と職務内容の整合性」が厳しく審査されるため、高卒の熟練技術者など、日本では問題のない人材がベトナムで赴任できないというケースが生じています。人員計画の段階から要件を確認しておくことが重要です。
失敗を避けるため条件
こうした現実を踏まえ、ベトナム進出を成功させるために弊社が重要だと考えるのは、以下の3点です。
第一に、目的に合った会社形態と事業内容の精緻な定義です。「とりあえず設立する」ではなく、どの市場で何をどのように売るのかを明確にした上で、必要なライセンスや資本金の水準を逆算して設計することが求められます。事後に事業内容を変更・追加するのは、新規設立より手間と時間がかかることが多いのです。
第二に、法改正への対応と十分なリードタイムの確保です。ベトナムの法令は頻繁に改正されます。日本のカレンダーで事業開始日を決めてから逆算するのではなく、現地の行政スケジュールと変化の余白を見越した計画が必要です。現場感覚のある専門家のサポートなしに、この「読み」を自社だけで行うのは極めて難しいと言わざるを得ません。
第三に、税務署や役所との交渉力を持つ専門家への戦略委託です。法律の条文を読めることと、現地の運用実態に沿って動けることは全く別の話です。窓口担当者の裁量や非公式な慣行、交渉の余地がどこにあるかを知っているかどうかが、許可取得のスピードや結果に直結します。信頼できる現地パートナーを早期に確保することが、進出成功の最大の鍵だと弊社は考えています。
ONE-VALUEにご相談ください
弊社ONE-VALUEでは、会社設立の初期検討から、ライセンス取得・税務・労務・現地パートナー探索まで、ベトナム進出の各フェーズを一貫してサポートします。「何から始めればいいかわからない」という段階からでも、ぜひご相談ください。
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フィ ホア(ONE-VALUE 株式会社 代表取締役)
2008年、日本政府(MEXT)の国費留学生として来日。大阪大学大学院 経済学研究科経営学系を修了後、デロイトトーマツコンサルティング合同会社に入社。ベトナム事業拡大のリーダーに就任し、多くの日本企業のベトナム進出を成功に導く。約10年にわたる経営コンサルティング実務経験を有し、主な専門領域は再生可能エネルギー、木材製造、医療、IT、農業、教育等。2018年、ベトナムに特化した経営コンサルティング会社ONE-VALUE 会社を設立。日本とベトナムの経済・ビジネス関係の活性化、日本在住の外国人人材の生活向上という2つのビジョンを掲げています。
