はじめに
皆さま、こんにちは。ONE-VALUE株式会社の代表のホアです。
ベトナムで長年ビジネスに携わってきた者として、ここ数年で現場の空気が明らかに変わったと感じています。税務調査が厳しくなった、パートナー企業の経理が急にきちんとしてきた、知り合いの経営者が摘発された——そういった話が日常的に聞こえてくるようになりました。
これは偶然ではありません。ベトナムは今、経済構造そのものを「インフォーマル(非公式)」から「フォーマル(公式・透明)」へと転換する、歴史的な移行期の只中にあります。この変化は日系企業にとってリスクにもなり、また大きなビジネスチャンスにもなります。今回はその実態と、取るべき戦略をお伝えします。
ベトナム経済の「隠れた現実」
ベトナムでは長らく、事業登録や納税を行わない零細ビジネス、二重帳簿の慣行、衛生・労働基準を満たさない運営、非正規ルートの輸入品といったインフォーマルな経済活動が「黙認」されてきました。その規模は決して小さくなく、GDPの最大約25%を占め、2023年時点では約2,100万人——非農業労働力全体の55%——が非公式就業者と推計されています。
これほど大きな「グレーゾーン」が長年にわたって存在してきた背景には、行政能力の限界や経済発展優先の姿勢があったと言えます。しかし2024年以降、その「黙認モデル」は明確に終わりを迎えつつあります。
当局が動き出した摘発事例が示す「本気度」
公安省出身のトー・ラム書記長の主導のもと、電子請求書制度の義務化、偽造品・模倣品への大規模摘発、ライブコマース・SNS販売の監視強化、KOL・インフルエンサーへの課税強化と処罰という4つの主要措置が矢継ぎ早に打ち出されています。
注目すべきは、当局が「規模や知名度」を一切考慮しない姿勢を見せていることです。ミシュランガイド掲載の高級レストラン「Tung Dining」は売上の大半をオーナー個人口座に入金し、数億円規模の脱税で摘発されました。著名投資家の「Shark Bình」、人気インフルエンサーの「Quang Linh Vlog」や「Ms. Thùy Tiên」、外資系大手の「CP Vietnam」も例外ではありません。また、アフリカ豚熱に感染した豚肉を保管していた食品加工大手「Hạ Long Canfoco(Ha Long Canned Foods)」の問題では、同社を取引先としていた「Highlands Coffee」が豚肉を仕入れていなかったにもかかわらず深刻なイメージダウンを被るという、連鎖的な風評被害も発生しました。
もはや「うまくやってきた」という経験則は通用しません。法制度の変化についていけない企業は、税務・社会保険の遅延処分や突発的な監査による事業停止というリスクに直面します。そして最も恐ろしいのは、自社が適法であっても、違法なパートナー企業を選んでしまうだけで深刻なレピュテーション危機に巻き込まれることです。
日系企業にとって「これ以上ない追い風」となる理由
一見するとリスクの話に聞こえますが、この変化は日系企業にとって構造的な優位性を生み出すものです。これまでベトナム市場では、脱税・粗悪品・非正規品を武器にした「コスト削減による価格競争」が横行していました。法令遵守を大前提とする日系企業は、その土俵で戦うことを余儀なくされてきた側面があります。
しかしインフォーマル経済の縮小によって、「不正によって作られた安さ」が市場から排除されます。競争の軸が「価格」から「信頼・安全・品質」へと移行することで、これらを強みとする日本企業にとって極めて有利な競争環境が生まれるのです。さらに、二重帳簿の慣行が減少することで企業の財務状況が透明化され、M&Aの健全化も進みます。2025年には「M&Aアドバイザリー」が政府に正式な事業分野として認められており、質の高いM&Aの機会は今後5〜10年で着実に増加すると見ています。
パートナー選定の失敗が「致命傷」になる時代
この新しいフェーズで日系企業が最初に取り組むべきことは、パートナーの事前調査(デューデリジェンス)の徹底です。ベトナムでは依然として、表面上は問題なく見えても、内部に深刻なコンプライアンス問題を抱えている企業が少なくありません。Highlands Coffeeの事例が示すように、自社の管理が万全であっても、サプライチェーン上のパートナー一社の問題が自社ブランドを傷つける時代になっています。
弊社ONE-VALUEでは、ベトナム企業100万社のデータベースをもとに、最短3営業日で納品可能な企業信用調査サービスを提供しています。新規パートナーの選定時はもちろん、既存取引先の定期的な再確認にもご活用いただけます。「信頼できる相手と組む」という当たり前のことを、確実に実行するためのインフラとして、ぜひご活用ください。
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コンプライアンスが競争優位になる時代のベトナムビジネスを、弊社ONE-VALUEが現地ネットワークと専門知識でサポートします。パートナー調査からM&Aアドバイザリーまで、幅広いサービスをご用意しています。
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フィ ホア(ONE-VALUE 株式会社 代表取締役)
2008年、日本政府(MEXT)の国費留学生として来日。大阪大学大学院 経済学研究科経営学系を修了後、デロイトトーマツコンサルティング合同会社に入社。ベトナム事業拡大のリーダーに就任し、多くの日本企業のベトナム進出を成功に導く。約10年にわたる経営コンサルティング実務経験を有し、主な専門領域は再生可能エネルギー、木材製造、医療、IT、農業、教育等。2018年、ベトナムに特化した経営コンサルティング会社ONE-VALUE 会社を設立。日本とベトナムの経済・ビジネス関係の活性化、日本在住の外国人人材の生活向上という2つのビジョンを掲げています。
