はじめに
皆さま、こんにちは。ONE-VALUE 株式会社代表のホアです。
先日、ベトナムの循環経済をテーマとするセミナーで講演する機会をいただきました。会場には製造業をはじめ、環境・リサイクル分野に関心をお持ちの日系企業の方が数多くお越しくださり、質疑応答も時間が足りなくなるほどでした。それだけこのテーマへの関心が高まっているということだと思います。
2026年は、ベトナムの循環経済にとって間違いなく歴史的な転換点です。これまで「任意の呼びかけ」にとどまっていた環境対応が、今年から「義務」に変わりました。EPR(拡大生産者責任)の制度が本格始動し、ベトナムで製造活動を行う企業——もちろん日系企業も含めて——は、対応を避けて通れなくなっています。
任意から義務へ——2026年、ベトナム循環経済の大転換
まず、いま何が起きているのかを整理します。ベトナムはリサイクルやリユースの分野で日本と比べれば確かに遅れています。しかし「循環経済」というキーワードをめぐる議論と制度整備は、まさに今、急速に進んでいます。
これまでベトナム政府は、「ごみを減らしましょう」「リサイクルしましょう」と、あくまで任意で企業に呼びかける段階にありました。それが2026年、状況は一変しました。今年からは任意ではなく義務です。さらに来年2027年からは、EPRの義務を達成できない企業が拠出金を支払わなければならない運用が本格的に動き出すと私は見ています。
直近の大きな動きが、EPRに関する新たな法規定「政令110/2026/NĐ-CP」(2026年5月25日施行)です。この規定では、特に製造業の責任として、6つの分野・業界において必ずEPRの責任を果たさなければならないと定められました。リサイクル義務の対象となるのは、商品包装、蓄電池・電池、潤滑油、タイヤ・チューブ、電気・電子機器、道路交通車両の6グループです。ベトナムで生産・輸入を行うこれらの業界の企業は、後述する方式に沿って、リサイクルの実施または拠出金の支払いが求められることになります。
義務の広がりはこの6グループにとどまりません。農業・林業・水産業では、農業廃棄物や食品残渣の削減・リサイクル、肥料・農薬の使用削減が大きな流れになっています。製造・加工業では排水・排気への対応に加え、製造に使うエネルギーの省エネ・グリーン化が義務として課される方向です。建設分野でも、現在策定が進むESGフレームワーク草案の中で、ネットゼロに近づくための環境配慮型建材の使用が義務付けられる流れが出てきています。
さらにベトナム政府は、EPRだけでなく企業向けのESGフレームワークの公表も予定しており、企業のグリーン発展・持続可能な発展を制度として後押ししていく構えです。背景には、ベトナムが2050年ネットゼロという国際目標にコミットしているという大きな文脈があります。加えて、ベトナムは海洋プラスチックごみの流出量で世界上位に位置すると国際機関から長年指摘されてきた国でもあり(※1)、廃棄物問題はもはや先送りできない社会課題になっているのです。
「行動してから考える」国の法律——不確実性の中にこそ、日本企業のチャンスがある
ここで、私が講演でも特に強調した点をお伝えします。それは、日本とベトナムでは法律というものの「作られ方」と「運用のされ方」が根本的に違うということです。この違いを理解しないまま進出すると、必ずどこかでつまずきます。
日本で新しい法律や規制ができるまでのプロセスを、改めて振り返ってみましょう。政府は十分に国民の意見を聞き、専門家や業界団体の意見を取り入れ、国会での審議を経て法律を成立させます。通常、数年単位の時間を要します。そして一度成立した法律は、簡単には変わりません。たとえば日本の容器包装リサイクル法は1995年の成立から完全施行まで数年をかけて段階的に施行され、企業には十分な準備期間が与えられました。これが日本の常識です。
ベトナムは正反対です。政府がトップダウンで、「電気自動車を普及させる」「EPRを導入する」と、突如として決定するのです。国がある日「今日から実施する」と言えば、本当にその日から始まります。今年5月にEPR責任の規定が突然公布され、企業は対応に奔走せざるを得なくなった——これがまさにベトナムの特徴です。
当然、問題が起きます。企業が政府の決定に追いつけず、現場が混乱するのです。すると、対応に窮した国民や企業から「決定はされたものの、実行できない」という声が上がります。多くの意見が寄せられると、政府は法律や議定を修正します。日本では、一度成立した法律がこれほど頻繁に修正されることは考えにくいでしょう。しかしベトナムでは、これが日常的に起こります。
私はこれを、ビジネスの言葉でこう説明しています。「考えてから行動する」のが日本、「行動してから考える」のがベトナムです。まず法律を出してみて、うまくいかなければ変えてみる。徐々に改善していく。企業経営の世界では「日々改善」「実行してから修正する」というのは優れた考え方ですが、政府がそれを行うと、企業側は絶えず対応に追われることになります。発展途上国ならではの統治スタイルと言えるでしょう。
ここまでお読みになると、「リスクの高い市場だ」と感じられるかもしれません。しかし私は、この特徴こそがビジネスチャンスの源泉だと考えています。変化が速いということは、その変化に適応できる企業は急激に成長できるということです。全員が同じスタートラインから一斉に走り出さざるを得ない市場では、準備と情報を持つ者が圧倒的に有利になります。日本のように「何年も前から予告されていて、全員が準備済み」という市場とは、競争の質が違うのです。
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EPR制度の実務——3つの選択肢と、「不透明な部分」にこそ眠る商機
では、EPRの義務を課された企業は具体的に何をすればよいのでしょうか。今年5月に導入された制度では、企業は「自社でリサイクルを実施する」「能力のある業者に委託する」「拠出金を支払う」という3つの方式から対応を選ぶことができます。
拠出金を選ぶ場合の支払額は、生産量・輸入量、リサイクル率、そして政府が設定する単価によって決まります。自社の生産計画がそのままコストに直結する構造であり、実際に弊社へも「自社の製品は対象になるのか」「どの程度の納入が必要になるのか」といったご相談が急増しています。EPR対応は環境部門だけの話ではなく、生産計画とPL(損益計算書)に関わる経営課題なのです。
手続き面では、EPRの国家システムへの登録が義務付けられ、毎年4月1日を起点に、当年度の登録と前年度の未達分の納付を行うサイクルが想定されています。制度は今年の中頃にできたばかりであり、実際の運用はこれから注視が必要です。
そして重要なのは、「能力のある業者に委託する」という選択肢です。どのような会社が「能力のある業者」に当たるのか、どの基準を満たせばリサイクルを代行できるのか——実はこれが、まだ法的に決まっていないのです。
この不透明さは、裏を返せば大きなビジネスの芽です。今後、法整備が進めば、政府が認定する業者が出てくるはずです。認定を受けた会社は、EPR委託という特需を受けられる立場になります。同時に、「どうすれば認定を取れるのか」を支援する認定取得コンサルティングという仕事も生まれるでしょう。日本企業がリサイクル事業者としてこの市場に参入するのであれば、「どのように認定を取るか」が今後のビジネスの鍵になると私は見ています。ルールが固まる前だからこそ、先に動いた企業がルール形成側に回れるのです。
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商機① リサイクル技術・設備——ただし「そのまま売る」は必ず壁に当たる
ここからは、日系企業にとってのビジネスチャンスを具体的にお話しします。まず最大の商機は、リサイクル分野での技術・設備の提供です。
私は20年近く前にベトナムから日本に来ましたが、最初に驚いたのが日本の街の清潔さと、徹底されたごみの分別でした。分別やリサイクルという考え方が、日本人と日本企業の中では「当たり前」として根付いています。この文化と、それを支える技術——リサイクル設備、リユースの仕組み、プラスチック・金属・電子機器といった各種のリサイクル技術——は、間違いなくベトナムより進んでいます。ベトナム企業はこれから、分別・リサイクルをしなければお金を払わなければならない立場になります。日本企業の技術移転を受けて自社の力で対応しよう、という需要は確実に生まれます。これは本当に大きな進出チャンスです。
ただし、ここで絶対に知っておいていただきたい現実があります。日本の設備やラインを「そのままベトナムに売る」というやり方は、ほぼ確実に失敗するということです。
理由は明快で、価格です。売りたい日本企業に対し、ベトナム企業には高額な設備をあえて購入する動機が乏しい——この構図は想像以上に強固です。実際、弊社が間近で見てきた事例として、日本の大手プラントメーカーが何年もかけてごみ処理設備やボイラーをベトナム企業に売り込み続けたものの、ほとんど買ってもらえなかったというケースがあります。技術力は世界トップクラスでも、正面からの直販では扉が開かないのです。
では、どうすればよいのか。売り方を変えるのです。私がお勧めしているのは、「ただ売る」のではなく「一部売って、一部は自分でも出資する」という合弁モデルです。
具体例でご説明します。仮に10億円のごみ・廃棄物処理システムをベトナム企業に売りたいとします。ベトナム企業は10億円を払いたくありません。そこで、日本企業とベトナム企業で合弁会社を作るのです。出資比率はたとえばベトナム側70%・日本側30%。現地の運営はコストの低いベトナム側が担う。そしてこの合弁会社が、日本企業の10億円の設備を購入する。この形であれば、ようやく導入の合意に至るのです。弊社はこうした事例をいくつも見てきました。
このモデルの本質は、日本企業が「設備の売り手」と「事業の出資者」という二つの顔を持つことです。エンジニアリングを売るだけでなく、自らも出資者として事業に関わり、自社の技術を関連会社に供給していく。設備が売れて、事業収益も得られて、現地に足場もできる。リサイクル技術や設備の分野では、このやり方が最も現実的だと考えています。そして実は、この「売らずに入る」という発想は、世界の先行企業がすでにベトナムで実践しており、いくつかの「型」に進化しています。次にそれをご紹介します。
設備を「売らない」4つの参入モデル
「売り込みではなく、事業として入り込む」。この発想を体系化すると、ベトナムの循環経済分野で外資の先行企業が実践している参入モデルは、大きく4つに整理できます(※3)。
第一が、BOO(Build-Own-Operate)モデルです。技術提供者が顧客の工場敷地内に処理・リサイクル設備を自ら建設・保有・運営し、顧客は初期投資(CAPEX)を負担せず、処理した廃棄物量・水量・稼働量や合意した成果指標に応じた運営費(OPEX)としてサービス料を支払う仕組みです。省エネ分野のESCOと同じ発想で、「設備を買ってもらう」のではなく「投資を肩代わりし、成果に課金する」モデルと言えます。ベトナムでは、環境サービス大手のヴェオリア(Veolia)やスエズ(SUEZ)が、工業団地の給水・排水処理・産業ユーティリティ分野でBOO・BOT・O&M型の案件を多数展開しており、顧客が設備を丸ごと買うのではなく、処理量や成果に応じて料金を払う形が定着しつつあります。「高い設備は買いたくない」というベトナム市場の構造に、最も相性の良いモデルの一つです。
第二が、引取保証と価値連鎖への共同投資です。消費財や包装材の大手が、リサイクル企業に対して設備の共同投資、資金支援、技術支援、技術移転を行い、その見返りにリサイクル企業を自社の再生原料サプライチェーンの戦略パートナーに組み込むモデルです。代表例がテトラパック(Tetra Pak)です。同社はベトナムの包装・製紙企業ドンティエン(Dong Tien)の紙容器リサイクルラインに約120万ユーロを投資し、その後投資総額を約350万ユーロまで拡大。年間リサイクル能力を約9,000トンから17,000トンへと引き上げました。狙いは製品を独占的に買い取ることではなく、国内のリサイクル能力そのものを底上げし、自社の紙容器エコシステムに必要な再生原料を確保することです。設備・素材メーカーにとっては、「川下の大手と組んでリサイクル企業に共同投資する」という入り方の大きなヒントになります。
第三が、技術主導型の合弁です。外国側は設備を売るのではなく、コア技術、運営ノウハウ、エンジニアリング設計、専門人材、国際的な顧客ネットワークを合弁に持ち込みます。ベトナム側は用地、許認可、市場への理解、原料(廃棄物)の確保、現地での運営力を持ち込みます。案件の設計次第で、技術は出資持分として評価されることもあれば、合弁へのライセンス供与という形を取ることもあります。
そして2026年、この形の象徴的な日系事例が生まれました。大阪の廃棄物リサイクル大手・株式会社浜田と、ベトナムのIREXエナジー(IREX Energy、太陽光大手SolarBKグループ)が、ベトナム初となる太陽光パネルリサイクル工場を開発する合弁の設立で合意したのです。IREXが事業開発力・インフラ・ベトナム市場での運営力を、浜田が日本で培った太陽光パネルリサイクル技術と技術支援を持ち寄る座組で、工場は年間約4万枚のパネル処理能力を想定しています。50年以上の廃棄物リサイクルの実績を持つ浜田が、設備販売ではなく「技術を持って合弁に入る」道を選んだことは、日本の環境企業によるベトナム参入の一つのモデルケースになるはずです。
第四が、PRO Vietnamなどエコシステム組織を通じた展開です。小規模なリサイクル企業に一社ずつアプローチするのではなく、PRO Vietnam(ベトナム包装リサイクル機構)や非営利団体、技術支援プログラム、循環経済イニシアチブといった「業界の結節点」を通じてプロジェクトを展開するモデルです。こうした組織は、回収チェーンの接続、人材育成・能力構築、パイロット事業の共同出資、回収・分別モデルの実装などを担っています。実例として2022年には、テトラパック、PRO Vietnam、サーキュラーアクション(Circular Action)の3者がホーチミン市で使用済み紙容器の買取パイロット事業を開始し、約3,000トンの回収・リサイクルを目標に掲げました。テトラパックは並行してドンティエンへの共同投資も拡大しており、「エコシステムの調整役を通じて回収網を作り、個社への共同投資で処理能力を作る」という二段構えを実践しているのです。
この4つのモデルに共通するのは、「設備を売って終わり」にせず、事業・価値連鎖・生態系の中に自らを組み込んでいることです。ベトナム企業がCAPEXを嫌うという市場構造を逆手に取り、投資・技術・ネットワークを持ち込む側に回る——これこそが、これからベトナム循環経済で勝つ日本企業の入り方だと私は考えています。
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商機② ベトナム企業へのM&A・出資——「今のベトナムは1970年代の日本」
二つ目の商機は、ベトナムの環境・リサイクル関連企業へのM&A・出資です。ここで私がいつも使う比喩があります。「今のベトナムは、1970年代の日本」です。
日本も高度成長の時代、深刻な環境汚染を経験しました。経済が急発展すると、環境汚染が進む。そして汚染が限界に達すると、環境に投資する企業、環境問題を解決できる企業が一気に注目され、価値が上がっていく——日本の歴史はまさにそうでした。ベトナムは今、その入口に立っています。環境処理、環境保護、EPR対応ができる会社は、これから確実に値上がりします。なぜなら、それができる会社がまだ少ないからです。
だからこそ、日本で環境・リサイクル分野の実績を持つ企業には、二つの道があります。一つはベトナムの類似企業と協業して市場を開拓する道。そしてもう一つが、彼らに出資してしまう、あるいは買収してしまう道です。出資先に技術提供や経営提案を行えば、彼らはベトナム国内で自然に成長していきます。その成長を、株主として取り込むのです。
タイミングについても率直に申し上げます。円安は今後さらに進む可能性があります。講演でも申し上げた私見ですが、10年後、20年後には、購買力の感覚においてベトナムドンが円を上回る場面すらあり得ると考えています。為替の絶対値の話ではなく、お金の「感覚」の話です。つまり、日本円でベトナム企業を買うなら、早いほど有利だということです。
この点で、忘れられない実例があります。弊社のクライアントに、自動車向けの金属加工・金型製造の会社があります。5年前、この会社は「ベトナムのローカル企業に製品を売りたいが、顧客が1社しか取れない」という悩みを抱え、販路獲得のためにベトナムの商社——金属や金型を売ってくれる現地企業——の買収を検討しました。私たちが候補企業リストを作成し、話は進んでいました。ところが最終局面で、この日本企業は買収を見送りました。理由は「ベトナム企業の評価額が高すぎる」でした。
そして今年。同じ日本企業から再びご相談がありました。「やはり5年前に買うべきだった。あの会社に、もう一度打診できないか」と。打診の結果、先方から提示されたのは、5年前を大きく上回る価格でした。「5年前に買っておけばよかった」——この言葉を、私は何度も聞いてきました。
本日この記事でお伝えしていることは、皆様にとって新しい発想かもしれません。しかし5年後、10年後に振り返ったとき、「あのとき動いておいてよかった」と思えるかどうかは、今の判断にかかっています。環境・リサイクル分野では、これから同じ物語が繰り返されるはずです。
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商機③ 環境配慮素材と有機廃棄物処理——「ごみ」が資源に変わる瞬間
三つ目の商機は、環境配慮型の代替素材と、有機廃棄物の処理です。
意外に思われるかもしれませんが、ベトナムでは衣類のごみが非常に多いのです。ベトナム人はファッションへの関心が高く、日本人以上に装いに気を配る人も少なくありません。その分、衣類の廃棄量も多くなります。この衣類ごみから何ができるか——たとえば木材パルプと混ぜて紙にできないか、壁材に近い建材にできないか——といった研究が数多く行われており、国もこうした取り組みを歓迎しています。捨てられる予定のものを、環境に優しい代替素材に変える。この領域は、日本とベトナムの区別なく、素材の技術を持つ企業にとってのチャンスです。
実際、弊社のクライアントには素材メーカーや化学企業——特に大阪の企業が多いのですが——がベトナムで水処理を手がけたり、本来ごみになるものに日本の化学技術を加えて新しい素材や製品に変え、それを販売するというビジネスに取り組んでいる例があります。
有機廃棄物の処理も、非常に有望な分野です。ベトナムは農業国であり水産業の国です。特に南部はエビや魚の輸出拠点で、食品加工工場からは大量の残渣・廃棄物が出ます。この処理はすでに社会課題となっており、ベトナム政府も企業も解決策を求めています。残飯・食品残渣の堆肥化や資源化の解決策を持つ日本企業が提案すれば、受け入れられる素地は十分にあります。
さらに、この分野には政府の優遇制度という追い風があります。ベトナムのFIT(固定価格買取制度)は、太陽光と風力については投資が十分進んだと判断され2021年に終了しましたが、ごみ発電とバイオマス発電については、いまもFITが残っているのです。普及がまだ進んでおらず、投資パフォーマンスが十分でないからこそ、国が支援を続けている領域です。
具体的には、リサイクル企業がベトナムでごみを処理する際、1トンあたりの回収費を国が支払います。さらに回収したごみを燃やして発電する場合、その電力は1kWhあたり約10米セント相当での買取が保証されます。こうした制度がありながら、活用している企業はまだ少ないのが現状です。つまり、ごみ発電・バイオマス発電・ごみ処理の分野は、政府の優遇と先行者メリットの両方を取れる、数少ない市場だということです。
商機④ 中古品の「国内」流通プラットフォーム——輸入NGだからこそ生まれる空白
四つ目は、少し切り口の違う商機です。中古品の流通プラットフォーム——ただし「輸入」ではなく「ベトナム国内」での流通です。
まず前提として、日本の中古品をベトナムに輸出するのは、かなり制限されています。中古自動車や中古機械を簡単に輸入することはできません。ベトナム政府の基本的な考え方は「中古品はお断り」です。例外として認められるのは、「ベトナムで製造できないものであり、かつ必要である」と証明できた場合のみです。
しかもこの基準が、実に抽象的です。「これは可、あれは不可」と具体的に列挙されていればよいのですが、規定は抽象的に書かれています。つまり、申請書類でいかに必要性を論理的に立証できるかの勝負になります。「この機械は中古であるため不可」と断られることもあれば、「この機械にはこういう機能があり、ベトナムでは製造されておらず、必要です」という証明が通れば輸入できることもある。同じ機械でも、書き方次第で結果が変わり得るのです。なお衣類については、ベトナムの縫製産業が十分な生産能力を持つため、中古衣類の輸入は全面的に認められていません。証明の余地すらありません。
では商機はどこにあるのか。私が注目しているのは、ベトナム国内での中古品流通プラットフォームです。先ほど申し上げた通り、ベトナムでは服がたくさん捨てられています。国内での古着の流通・販売は、廃棄を減らすという意味で環境にも良い。そして中古品の国内流通プラットフォームは、業界ごとに見ればまだ十分に成熟していない空白地帯です。日本のリユース産業が培ってきた買取査定、真贋判定、在庫管理、物流のノウハウは、この空白を埋める強力な武器になります。衣類に限らず、家電、家具、工具、業務用機器——各業界に同じ発想が応用できるはずです。
結論
最後に、これまでの話をすべて貫く、最も大切な原則をお伝えします。それは「売り方」です。
ベトナムは、売り込みに対して非常にシビアな市場です。正面から「買ってください」と迫る営業は、まず受け入れられません。プラントメーカーの事例でも、金属メーカーの事例でも、根っこにある教訓は同じです。最終的には売るのだとしても、表向きは売り込みであってはいけない。「一緒にパートナーとしてこれをやっていこう」「ベトナムのこの課題を、一緒に解決していこう」というアプローチこそが、受け入れられる入り方なのです。
そしてもう一つ。循環経済のビジネスは、B2C商品のようにすぐ売れるものではありません。長期目線が前提です。だからこそ重要なのは、制度や情報の理解——それは当たり前の前提にすぎません——ではなく、その先です。鍵を握る重要な人物に会うこと。その人を説得すること。そして味方になってもらうこと。ベトナムのパートナーやバイヤーと「友達」になり、応援してもらえる関係を作ること。制度と情報だけでは、何も動きません。動かすのは、人です。
弊社ONE-VALUEが提供しているのは、まさにこの部分の伴走です。制度の理解や情報提供は当然のこととして行いますが、本当の価値は、クライアント企業と一緒に営業し、一緒に説明し、鍵となる人物との面談を設定し、説得のプロセスを共に進めることにあります。法的に足りない部分があれば、社内の弁護士とともにライセンス申請も行います。中には、そもそもライセンス制度自体がまだ存在しない分野で、「こういう事業をやりたい」という申請を当局に通し、活動の許可を勝ち取った事例もあります。ルールがないなら、ルールを作る側に働きかける——ベトナムでは、それが可能なのです。
日本のものづくり、そして日本のリサイクル・リユースの文化と技術は、世界最高水準にあると私は確信しています。この強みを、ぜひベトナムで活かしてください。ただし、このビジネスは長期戦です。何を、誰と、どのように進めるか。この三つを間違えなければ、2026年に始まったベトナム循環経済の大転換は、日系企業にとって十年に一度の機会になるはずです。
ONE-VALUEにご相談ください
弊社ONE-VALUEは、ベトナムに特化した経営コンサルティング会社として、循環経済・環境分野における市場調査、規制対応、パートナー探索、合弁組成、M&Aアドバイザリーまでを一貫してご支援してまいりました。私自身、年間約1,000社の日本企業からのご相談に対応しており、この分野のご相談も急増しています。「まだ構想段階」という企業様こそ、早期にご相談いただくことで打てる手が広がります。
▶ ベトナム市場調査・業界調査(環境・リサイクル分野)
▶ ベトナム事業フィジビリティスタディ(FS)
▶ ライセンス・許認可取得の支援・手続き代行
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まずはお気軽にお問い合わせください。
▶ 無料相談・お問い合わせはこちら(https://onevalue.jp/contact/)
フィ ホア(ONE-VALUE 株式会社 代表取締役)

2008年、日本政府(MEXT)の国費留学生として来日。
大阪大学大学院 経済学研究科経営学系を修了後、デロイトトーマツコンサルティング合同会社に入社。ベトナム事業拡大のリーダーに就任し、多くの日本企業のベトナム進出を成功に導く。約10年にわたる経営コンサルティング実務経験を有し、主な専門領域は再生可能エネルギー、木材製造、医療、IT、農業、教育等。
2018年、ベトナムに特化した経営コンサルティング会社ONE-VALUE 会社を設立。日本とベトナムの経済・ビジネス関係の活性化、日本在住の外国人人材の生活向上という2つのビジョンを掲げています。
